体を移動させることなく被写体に近づけるズーム機能。何十年も前に登場したこの機能は、iPhoneのカメラで、いまも活躍中です。

けれども、お気づきかもしれませんが、ズームで撮った写真は、普通に撮った写真ほど鮮明ではありません。まったく使えないレベルの画質である場合さえあります。

実は、これには理由があるのです。

実際には、iPhoneのカメラがズームしていない

まずは、「iPhoneがズームできない」ことが理由の場合です。iPhoneのカメラレンズが動けず、設計されている焦点距離に固定されてしまっているケースです。マルチカメラが組み込まれたiPhoneなら、焦点距離が長いレンズに切り替えることで、被写体にズームすることができます。

たとえばiPhone 13 Proのカメラには、13mmの超広角レンズと、26mmの広角レンズ(デフォルトレンズ)、77mmの望遠レンズが組み込まれています。

「カメラ」アプリは、広角レンズを「1x」ズームのオプションとして処理します。

超広角レンズに切り替えると「0.5x」に、望遠レンズだと「3x」ズームになります。これらの数値はiPhoneのモデルによって異なります。

たとえば、デュアルカメラが組み込まれた初期モデルのズームなら1xから2xへ、iPhone 12 Proなら2.5xへといった具合です。

また、必ずしもすべてのモデルに望遠レンズが採用されているわけではありません。自分のモデルが下のリストに入っていなければ、望遠レンズは採用されていないということです。

  • iPhone 7/7 Plus(2xズーム)
  • iPhone 8/8 Plus(2xズーム)
  • iPhone X(2xズーム)
  • iPhone XS/XS Max(2xズーム)
  • iPhone 11 Pro/11 Pro Max(2xズーム)
  • iPhone 12 Pro/12 Pro Max(2.5xズーム)
  • iPhone 13 Pro/13 Pro Max(3xズーム)

光学ズームVSデジタルズーム

ご存知かもしれませんが、ズームの倍率はもちろん、0.5xや1x、3xだけではありません。倍率の調節は簡単です。

0.6xや1.7xで、あるいは場合によっては最大の12xまで上げて撮影することもできます。

こうしたズームレベルには、デジタルズームが使用されています。このデジタルズームは基本的に、画像をトリミングしてその倍率に到達します。

実例をあげると、0.6xズームは超広角レンズの画像を「少しだけ」、1.7xは広角レンズの画像を「普通に」、12xは望遠または広角レンズのいずれかの画像を「思い切り」トリミングしているのです。

たしかにデジタルズームは便利ですが、最高の画質を生み出すのには適していません。写真を人工的に切り抜いて大きくするわけですから、ディテールが失われてしまうのです。手動で画像をトリミングして、元のサイズに拡大するのと同じです。

iPhoneが計算してくれるおかげで、その画質は、手動によるトリミングよりもマシにはなりますが、それでも、レンズからトリミングしていない写真の画質とは比べものになりません。

ちなみに、望遠レンズが組み込まれていないモデルは、1x超のデジタルズームしかできません。

望遠レンズの嘘

というわけで、被写体に実際にズームインしたいときには、3xズームの望遠カメラに切り替えれば、それで問題解決……と言いたいところですが、そうでもありません。

iPhoneのカメラには、ユーザーに大々的には知らされていない、ちょっとしたトリックが隠されています。実はiPhoneは、その光景が望遠レンズの使用に適していると判断したときにしか、望遠レンズを使わないのです。

たとえば、照明の明るさが十分ではない場合は、あなたがいくら望遠レンズを使おうとしても、広角レンズが使用されます。

被写体に実際にズームできるレンズが使用されるのではなく、あなたの知らないところで、あの忌まわしいデジタルズームが使用されるのです。

なので、望遠レンズを使って撮影していると思っていても(念のために言っておきますが、望遠レンズが付いているのは、値の張る「プロ」モデルだけです)、実際には、広角レンズでデジタルズームしたときと同じ写真になります。

撮影時に、これを確認できる簡単な方法があります。

まずは、望遠レンズの上に指をもってきます(位置は、モデルによって異なります。iPhone 13 Proなら、3つのレンズの中でいちばん上にあるのがそうです)。

次に、「カメラ」アプリで、ズームのオプションから望遠レンズを選びます。望遠レンズが使用されている場合は、指がレンズをブロックしているのがわかります。

使用されていない場合は、カメラは、指にさえぎられることなく被写体にズームインします。

どんなときも必ず望遠レンズで撮影するには?

幸い、iPhoneに望遠レンズでの撮影を「無理強い」する方法がいくつかあります。

ひとつは、写真モードではなく、ポートレートモードで撮影するという方法です。私はこの方法を、Redditユーザー、MyManDさんのスレッドを読んで知りました。

「ポートレート」モードで拡大写真(Proモデルのデフォルト)を撮影しようとすると、iPhoneは、デジタルズームに頼らず、望遠レンズを使用するのです。

特定の写真にポートレートモードを使いたくないときは、あとから簡単にポートレート効果をオフにできます。

まず、その写真を「写真」アプリから見つけて「編集」をタップします。次に、画面上部の黄色い「ポートレート」タグをタップすると、その効果をオフにできます。

多少の出費はかまわないという人には、これ以外の方法もあります。

Halide」といったサードパーティ製カメラアプリを使えば、撮影に使うレンズを選べるので、自分のチョイスが無視されるのでは、と心配することはありません。

こうしたカメラアプリには、iPhoneのほとんどの機種でのRAWサポート、シャッタースピードやISO感度の微調整など、ほかにもたくさんの機能が詰め込まれています。

なので、iPhoneの「カメラ」アプリでは物足りないと思っている人は、ぜひ購入を検討してみてください。

おもしろいことに、動画撮影時にiPhoneに望遠レンズの使用を強制する方法もあります。4K/60fpsで撮影すればいいのです。どういうわけか、ほかのフレームレートを選んだときと違って、4K/60fpsで録画すると、iPhoneは必ず望遠レンズを使用します。

ほかのフレームレートでの撮影時に望遠レンズを使いたい場合には、「FiLMiC Pro」などのサードパーティ動画撮影アプリを入手しましょう。

また、お金はかかりますが、iPhone用のレンズアダプターを使うという手もあります。その効果は抜群です。

Momentなどの企業が開発するモバイルデバイス用の望遠レンズは、互換性のあるケースとレンズアダプターでiPhoneに取り付けることができます。

安い買い物ではありませんが、これを使えば、Proモデルであろうとなかろうと、どんなiPhoneにも光学ズームを実装できますよ。

Source: Moment, FiLMiC Pro, Halide, Reddit