イーロン・マスクにとって、月曜日はいつもと変わらないオフィスでの一日でした。ちょっとした違いを除いては 。

複数の会社を経営するイーロン・マスク

もちろん、Twitterを440億ドルの現金で買収する契約を成立させた、ということもありました。

しかしその前に、世界一の大富豪であるマスクは、オースティンにあるテスラの「ギガファクトリー」でインドネシアの投資担当大臣と会談し、バッテリーのサプライチェーンについて議論しました。

そしてその夜10時、マスクはエンジニアたちと会議を行いました。

マスクの伝記を執筆中の有名作家ウォルター・アイザックソン によると、そこでマスクは1時間以上、テキサス州ボカチカにあるスペースXの「スターベース」におけるロケットエンジンの「バルブ漏れ対策」に取り組んだようです。

「誰もTwitterには触れませんでした」と、アイザックソンは他でもないTwitter上で述べました。

マスクはマルチタスクができるのです。

アイザックソンの意見に同感です。マスクが同じ日に複数のプロジェクトに取り組むだけでなく、複数の会社の陣頭指揮を取ることもできるというのは、魅力的なことです。

しかし、マスクがしているのはマルチタスクではありません。まったくの別ものです。その違いを理解することが、自分自身の生産性を高めるカギになるのです。

マスクには、何年も前から続けているあるシンプルな習慣があります。これを「集中の法則」と呼びたいと思います。

「集中の法則」がどのように効果を発揮するのか、それをどのように自分の仕事に応用できるのか、具体的に見ていきましょう。

マルチタスクの代償

本当のマルチタスクは、二つの仕事を同時に行うということであり、かなり難しいものです。

比較的簡単なタスクであれば、たくさん練習すれば可能です(たとえば、プロのバスケットボール選手が、片手でボールをドリブルしながら同時にもう片方の手でテニスボールを投げたりキャッチしたりする練習をするとしましょう)。

これに対して、マルチタスクだと思われているものはほとんどの場合、実は「タスクスイッチ 」であり、あるタスクから別のタスクにすばやく切り替えているのです。しかし、タスクスイッチには大きな代償が伴います。

「タスクを切り替える能力には、広範囲にわたる高度な認知処理が必要であると考えられている」と神経科学の百科事典には記載されています。

この処理を行った結果として、切り替えによる大きな代償が伴う。つまり、タスクを切り替える場合には、タスクを繰り返す場合よりもパフォーマンスが遅くなり、ミスが起こりやすくなる。

言い換えれば、タスクスイッチが多くなるということはミスが多くなるということであり、質の劣化した意思決定が増えるということに等しいのです。

イーロン・マスクは純粋な集中

しかし、マスクが自身の様々な会社で仕事をしている時には、マルチタスクをしているのでもなければ、タスクスイッチをしているのでもありません。むしろ、一度に一つのことに集中しているのです。

マスクは過去に、例えばある日はスペースXで、別の日はテスラで仕事をするというふうに、大抵は一週間を会社間で分割するようにしていると話したことがあります。

しかし、現在のニーズやプロジェクトに応じてスケジュールを変更するとも述べており、時間が経つにつれて(現在は数十億ドル規模の企業をもう一社買収したところです)一日に複数の企業で仕事をするようになったとしても不思議ではありません。

とはいえ、ロケットエンジンの開発に取り組んだあの深夜の会議について話す中で、アイザックソンが語った重要な言葉 に立ち返ってみましょう。

誰もTwitterには触れませんでした。

これは、一日に複数の会社で様々な問題に取り組むこともあるものの、マスクは一度に一つのことに集中しているということを示しています。これは重要なことです。

そうすることで、マルチタスクやタスクスイッチをしてしまう代わりに、自身の重要な知力を一つのことに集中できるからです。

たとえば、スペースXのエンジニアとの会議中に、Twitterに関する電話を何度も受けていたと想像してみましょう。

マスク自身の仕事の質や集中力が低下してしまうだけでなく、その場にいる人たち全員もイライラさせてしまうでしょう。

それに対して、会議やプロジェクトの作業、大きなタスクを分けておくことで、マスクは自分の時間と知力を最大限に活用し、批判的思考力や問題解決力に役立てているのです。

これは、なぜマスクがいつもしているような仕事をすることができるのか、つまり複雑なテーマを扱う複数の企業に対して価値ある貢献をすることができるのか、その理由の一つでしかありません。

イーロン・マスクの信じられない能力

たとえば、Garrett Reismanの意見をみてみましょう。元宇宙飛行士で、スペースXで何年もマスクと仕事をしていたエンジニアであるReismanは、複雑な問題解決に力を貸すマスクの能力に驚かされました。

「というのも、私はこれまでとてつもなく頭のいい人たちにたくさん会ってきました」とReismanはインタビューで語りました。

しかし、そうした人たちは普通、一つのことに関してとてつもなく頭がいいのです。(マスクは)トップエンジニアたちと、ソフトウェアやその最も難解な側面に関して話ができます。それから製造エンジニアのほうを向いて、わけのわからない合金の、門外漢には理解不可能な溶接プロセスについて議論します。

Reismanは続けました。

マスクはひたすら行ったり来たりするのです。ロケットや自動車など、取り組んでいる分野に係わるあらゆる技術にわたってそれができる能力、これには本当に感銘を受けます。

では、皆さんはそこから何を学ぶことができるでしょうか?

はっきり言って、私はマスクの勤労意欲を尊敬しますが、マスクほどたくさんの時間働くことは推奨しませんし、深夜にミーティングをすることさえおすすめしません。しかし、マスクの仕事の進め方からは貴重な教訓を得ることができます。

皆さんも、事業経営や顧客間のバランスの維持、仕事・家庭・自分の時間の切り分けなど、複数の責任の釣り合いを取ろうとしていることでしょう。

重要なのは、こうしたものを切り分けておき「集中の法則」に従うことです。一度に一つのことに集中するのです。

つまり、以下のことは別々に行います。

  • メールを送信する
  • ブレインストーミングをする
  • 会議をする
  • 何かを生み出す
  • 問題を解決する
  • 批判的に考える
  • 家族と過ごす
  • 自分の時間を持つ

気が散る外部の要因をすべて遮断しましょう。今に集中しましょう。自分の注意力と知力のすべてを目の前の人やタスクに集中するのです。

そうすることで、自分が居られる場や終わらせられることが増えるだけでなく、できることの質も高まります。

それが、最高の生産性なのです。

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