36年の時を経て『トップガン』の続編『トップガン マーヴェリック』が公開されました。

主役のトム・クルーズは現在59歳。今でも現役で誰よりも過酷なアクションをこなすことも驚きですが、競争が激しいハリウッドにおいて常に第一線を走り続けているのもまた驚きです。

しかし、トムはどうやってその地位を守り続けているのでしょう?

今日は、トム・クルーズのキャリアや映画作品から、彼の仕事のスタンスや信念を探っていきたいと思います。

「私が何であるかではない。誰であるかだ」

私が何であるかではない。誰であるかだ」は、『トップガン マーヴェリック』に出てくるセリフのひとつですが、トム・クルーズは仕事や人生、情熱においても同じだったと語っています。

俳優という職業は、競争が激しく、人気が落ちれば出番がなくなっていきます。他人の人生を演じるので、自分というものを見失うこともあるでしょう。

だからこそ、トム・クルーズは、地位や役職が自分を定義するのではなく、自分自身を突き詰めることに意味があると思っていたのかもしれません。

予想を超えた成果を出す

仕事でも勉強でもなんでも、予想していたことを超えた成果を出した人の評価は必然的に高くなります。

1994年に『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でトム・クルーズは冷徹で色気のあるヴァンパイアを演じましたが、原作者であるアン・ルイスは、トムのキャスティングに大反対。「失望した」「トム・クルーズでうまく行くはずがない」と公の場で語っています。アイドル路線だった彼のそれまでのキャリアを考えれば当然とも言える反応でした。

しかし完成した映画を見て、ルイスは自分が間違っていたとVarietyの評論コラムにて謝罪しています。トムは想像のはるか上をいく「ヴァンパイア レスタト」を演じて、反対意見をねじ伏せ、俳優としての新境地を開拓しました。

また、映画関係者だけでなく映画ファンの予想も超えてきます。トムは出演作のアクションを自ら演じていることで有名です。

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』では水中で6分半もの間息を止めて撮影に挑み、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』では、世界で1番高いと言われているドバイのブルジュ・ハリファ・ビルの側面を、命綱をつけて登ったり走ったりジャンプしたりといったアクションをしています。

どちらもショットが切り替わるので、編集で「それっぽく」見せることも可能でした。しかし、「ファンは本物かどうかわかる」と信じているトムは敢えて体を張るのです。

現実と区別がつかないほど精巧なCGIが使える今でもなお、自らのスタントにこだわる彼は、常に映画ファンの予想と想像を超えた成果を出し続けています。彼が数多といるハリウッドスターの中で飛び抜けた名声を得ているのは、「想像通り」に甘んじなかった結果と言えます。

チームプレイであることを理解する

トム・クルーズのこだわりを支えるのは、共に映画を作っている人たちです。現在公開中の『トップガン マーヴェリック』では、キャストが実際にF/A-18スーパーホーネットという戦闘機に乗って演技をしていますが、いくら大スターだからとはいえ、「時速965kmの戦闘機に実際に乗りたい」といってすぐに叶えられるほど映画作りは甘くありません。

そこで、トム・クルーズは、映画に携わる全員を納得させるため、まずは自分のスキルを磨き(ここに30年かかっている)、プロジェクトが始まれば自分の知識と経験を惜しみなく人に伝え、誰に対してもフランクに接してチームメイトの士気を高めました。

『トップガン マーヴェリック』に限らず、トム・クルーズ作品にかかわった人たちは一様に彼の人柄の良さと信念の強さを口にしています。

先見の明を持つ

トム・クルーズが俳優としてのキャリアをスタートさせた80年代は、アクションは俳優やスタントが体を張って演じるものでした。

しかし、90年代に入りCGIが台頭し始めると、すぐに別の手を打ちます。それが、プロデューサーになってディレクターと台頭のポジションに立つことでした。トムは『ミッション:インポッシブル』(1996年)を自分でプロデュースしたのです。

もともとトム・クルーズは俳優として演じるだけでなく、映画作りそのものに強い情熱をもっていて、86年公開の『トップガン』では脚本の段階から介入していたほど。

『トップガン』で人気を不動のものにしたものの、あくまで人気ハリウッドスターのひとりでしかなかったため、テクノロジーの進化に伴い徐々に必要とされなくなる可能性を先読みし、危機感を持ったのではないでしょうか。

プロデューサーになった彼は、自分を俳優として目立たせたり格好良く見せたりするのではなく、人に喜ばれる映像作りにこだわりました。そして、CGI全盛期の今、体を張ったスタントが楽しめる数少ない映画を提供してくれる人として不動の地位を築いています

目標を作って達成する

トム・クルーズは、出演する作品ごとにスキルを増やしてきました。

『ハスラー2』(1986年)では毎日数時間も特訓してビリヤードのトリックを、『カクテル』(1988年)ではバーテンダーの特殊なパフォーマンスの動きを、『ミッション:インポッシブル2』(2000年)ではロッククライミング、『ミッション:インポッシブル3』では全速力しながら爆風で吹き飛ばされて車に打ちつけられるなどの激しいスタントに挑戦しています。

その後も、飛び立つ飛行機に捕まったり、飛行機やヘリコプターを操縦したり、ヘイロージャンプという高高度の航空機からジャンプして抵抗度でパラシュートを開く降下方法をしたり、命知らずなスタントをこなしています。

無謀に思えるスタントをこなしているのは、トムが幼い頃に「ディスレキシア(読字障害)」に悩まされていたから。そのコンプレックスを克服するために、目標を作って達成することを繰り返したそうです。

作品に直接関係しないスキルでも、「いつか作品にいかせるだろう」と考えて、ダンスレッスンや歌のレッスンも受けています。その結果、ダンスレッスンの成果がカメオ出演した『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008年)でいかされ、ゴールデングローブ賞 助演男優賞にノミネートされています。


1981年に銀幕デビューしたトム・クルーズは、時代の流れを受け入れながらも常に第一線で活躍してきました。トップであり続けるための努力の数々は、彼の作品を古い順から見ていくとわかります。

キャリアのターニングポイントは1996年の『ミッション:インポッシブル』。肉体派の俳優たちが時代の変化に押されて活躍の場を減らされていく中で、トムだけが輝き続けている理由がわかるはずです。

Source: トップガン マーヴェリック,YouTube(1,2,3,4,5