多様な人材採用が進み、組織規模が拡大している株式会社グロービスのコーポレート・ソリューション部門。組織の多様性が増すなか、さまざまな角度から組織づくりに取り組んでいます。

ここにひと際想いを寄せるのは、部門長の西恵一郎さん(以下、敬称略)。今回は、西と、入社2年目の寺越いかるさん(以下、敬称略)の対談を通し、彼らの思い描く組織像を紹介します。

一体感ある組織を目指して──仲間を知ることが出発点

──企業理念を大切にするグロービスでは、全社を通して、年度方針や社員共通の価値観「グロービス・ウェイ」について意見交換する場を、積極的に設けています。そして、文化醸成の取り組みは、各部門でもなされています。

西:私たちコーポレート・ソリューション部門が提供しているのは、人材育成や組織開発といった無形サービス。目に見えないものを扱っているからこそ、メンバーそれぞれが持つ「知(ナレッジ)を共有すること」がとても大事なんです。

ただ、ナレッジ共有は手間がかかり、面倒でもありますよね。共有する側にとっては"give"であり、しなくても、自分自身は特に困らないですから。だからこそ、知の循環は、意図的に仕組みに落とす必要があると思っています。

そのベースとなるのが、"know who"です。ナレッジ共有は「誰かのため」にするものなので、その「誰か」のことをまず知り、誰かに貢献したいという気持ちを持つ必要があるんです

相手を知り、「この人が一緒の組織で働いているんだ」と感じることで、組織に対するエンゲージメントや一体感が生まれ、初めて行動につながります。

──仲間を知り、組織として一体感を持つ──そのために西が注力している施策の1つが、「部門リトリート」。年に2度、日常業務から離れた場で、戦略議論とメンバーの相互理解を深めるチームビルディングを行なっています。

西: 私は毎回企画から関わっているのですが、大切にしているのは、「参加できないと残念に思うような会」にすることですね(笑)。

戦略会議以外のパートは、各自都合に合わせ参加してもらっていますが、メンバー同士で、「あれは来たほうが良かったよ」「来れなくて残念だったね」という会話が自然と出てくるような場になるよう、けっこう真剣に、エネルギーを注いでいます(笑)。

──2019年に入社した寺越は、入社早々、リトリートの幹事に立候補。残念ながらコロナの時期と重なりリアル開催には至りませんでしたが、組織全体を知る機会になったと語ります。

寺越:普段はチーム単位で動いているので、ほかのチームと交流する機会はそれほど多くありません。幹事団として多様なメンバーと活動することで、仲間の新しい魅力に触れることが出来ました。 また、チームから範囲を広げ、「組織全員が楽しめるのはどんな場か」 「組織がより良くなるには何をすべきか」という、一段高い視点で考えるきっかけになりましたね。

ひとりひとりのリアルな声を起点に──全員が当事者の「組織づくり会議」

──リトリートを通し、組織の一体感を醸成する傍ら、2020年からは組織文化再構築に向けた新たな取り組み、「組織づくり会議」をスタートさせました。

西:私たちの部門は120名程の規模に成長していますが、意思決定メンバーは"40代以上の男性"という特定のセグメントに偏っていました。そこで、性別や年齢、役職などさまざまな属性から10名を選出し、それぞれの立場で意見交換できるようにしたのが、「組織づくり会議」です。

寺越:僕は、入社半年ほどで、「20代(年齢)・男性(性別)・コンサルタント(職種)・アソシエイト(役職)」という属性を代表して会議に参加しました。同年代でもっと経験のある人もいたので、当初は、入社間もない自分が組織づくりのメンバーとして相応しいのか、正直戸惑いもありました。

西:同じ20代でも、新人と入社数年のメンバーでは、全然意見が違うんです。なので、フレッシュな寺越さんだからこその声が、必要だったんです。

組織づくり会議でまず伝えたのは、「組織づくりにおいては、全員が当事者であり、全員が平等である」ということ。勤続年数や役職に関係なく、当事者として自分が感じたことを発言してもらうことをお願いしました。

寺越:そうでしたね。最初に「全員平等の立場で話をする」「会議メンバーが、各属性の声をしっかりひろってくる」など、グランドルールをつくりました。そのうえで、組織の中で起こっていること、困っていることを集め、共有するところからはじめたんです。

西:働きやすさやハラスメントなど、ちょっと議題にしにくいテーマも議論しましたね。

たとえば、"子育て中のメンバーに配慮した組織"といえば、一見聞こえは良いですが、本当に働きやすいのだろうか? シングルの人や時間的余裕がない人に、その分負担がかかり、厳しい環境になっていないか? など。 話しにくいけれど、しっかりと話しておくべきことを、それぞれの属性の本音で議論しました。

寺越:"フォローし合える関係性や仕組みづくり"の議論もありましたね。

僕たちの組織は、普段からお互いに支え合う雰囲気が根付いているので、表面的に問題はないのですが、そこから一歩踏み込んだことで、実際フォローされる側には心理的負い目があったり、フォローする側は頻度が多いと負担に感じていたり……。という本音が出てきました。

属性によって感じ方や意見がまるで異なり、自分の思考範囲を超えた考えに直面できたことは、純粋に面白かったですね

西: より良い組織にしたいという想いは一致していても、職種や役職によって受け止め方が違うこともあるよね。

寺越:はい。ひとりひとりが本音で意見し、違いが見えてきたことをきっかけに、それぞれの当事者意識が高まったように感じています。

西:そうですね。この会議の議論内容は、フルログを公開していたので、結果として、組織で起こっていることや多様な属性のメンバーの考えを、組織全体で共有できましたし、組織理解につながりましたね。

プロセスこそ体験価値──"創る側"の視点から学ぶ

──組織づくり会議で挙がった議題を、どう解決していくか──寺越はその1つのアクションとして、メンバーが互いの取り組みや学びを共有する、定期勉強会の立案に参画します。

寺越: 冒頭の"know who"の話にもつながりますが、当社のコンサルタント組織は、チームや個人が持つ知識・情報は非常に多いものの、チーム外の活動に触れる機会は多くありませんでした。

そこで、組織全体での情報共有の活性化を目的に、各チーム輪番制の勉強会をはじめました。

西:組織が大きくなりチームが機能しはじめると、共有や関心はチームに閉じていきがちです。

さらにコロナ禍でチーム以外と話をする機会が少なくなっていたので、その状態が1年間続いたとき、チームの結束は強まる反面、組織に対するコミットは薄れるのではと危惧していたので、よい企画を立ててくれました。

より良い組織を目指し奮闘する西さんと寺越さん。若手の寺越さんにとって、この経験は大きな飛躍のきっかけとなりました。

寺越:組織に属していると、上司や組織に対して、「もっとこうしたらいいのに……」と不満を持つことってありますよね。

でも、実際に自分たちが自由に施策を打てる立場になると、とても難しい。与えられる側から企画する側に立ち位置が変わり、これだけのギャップがあるのかと気づけたことは、非常に大きな経験でした

西:そうだよね。実際にいくつかの施策を打ってもらいましたが、「まわりが思うように動いてくれない!」「組織に良かれと思ってやったのに……」という歯がゆい思いも、多かったと思うんです。

でも、そこで諦めたり、敵対するのでなく、いろいろな反応を受け止め、そのうえで「この状態をどうしたらより良く出来るか」という視点で考えてもらったので、さらに深い施策に落としてもらいましたし、このプロセス自体に価値があると思っています。

寺越:私は若手代表として参加したので、やはり同世代のメンバーからリアルなフィードバックが返ってきました。「あの施策いる?」「なんでこんなことやるの?」とか(笑)。

組織に対して大きな仕掛けをすると、「通常業務がある中でどうやって時間を捻出するんだ」と反発があったり、逆に負荷を軽くしすぎると別の反発が出てきたり……。

バランスや時期、人を見ながら最適な施策を考える。そしてそれを伝え、理解を得て組織を動かすことはとても難しいですね。

西:寺越さんが学んだ経験は、そのまま仕事にも活きるんですよ。

コンサルタントは顧客の組織に働きかけるので、実際の現場(顧客が置かれている立場)と、その課題解決に向けた施策を起こす側(弊社)、2つの立場をイメージできることは、顧客により親身に、誠実に対峙することにつながるんです

人をつなぐ場を創造し、出来ることからアクションしていく

──この2年間、リトリートや組織づくり会議に携わってきた寺越。部門長の西から見ても、その成長には目を見張るものがあると語ります。

西:寺越さんの視座や当事者意識は、すごく高まっていると感じます。仕事においても、目の前のことを表面的に捉えるのではなく、背後にある前提や今までの経緯を含めて語っている印象があります。

寺越:それは、組織づくり会議が多様な属性のメンバーで構成されていたことが、大きな要因かもしれません。

同じ事象に対して意見を出し合っても、属性によって反応がまったく異なる。「いま自分が見ている景色はすべてじゃない。ほんの一部なんだ」と、肌で感じた経験を通して、一歩引いて全体視点で物事を捉えられるようになりたいと思いましたね。

──こうして組織文化の醸成に取り組んできたお二方。今後の展望について、率直な意見を聞いてみました。

寺越:組織づくり会議を通じて、意識的に高い視点から物事を捉えることの大切さや、自ら率先して発信することの意義や伝える難しさを経験しました。

だからこそ、まずは自分が得た知識・経験をオープンにして、少しでもまわりのメンバーにプラスを与えられるようになりたいですね。

組織の当事者であることは、組織作り会議のメンバーを終えても変わりはありません。組織視点で、自分が出来ることをひとつひとつ、行動していきたいと思っています。

西:文化や風土を創るには、組織全員が当事者であることが必要不可欠です。やる側・やらされる側になってしまうと、絶対に上手くいきません。そのために、"組織視点で考えアクションする経験"が大事です。

そして、"この組織をより良くしたい"という想いは、一緒に働いている仲間、事業やお客様が好きといった感情から生まれてくると思うんです。だからこそ僕は、人と人、人と事業をつなげる場を、積極的に創っていきたいですね。


入社間もなく組織づくりに参加し、もがきながらも動き続ける寺越と、彼らメンバーの成長をあと押しする機会を創る西。

組織の多様性が増すなかで、"全員が当事者"の意識のもと、文化を再構築し働く環境を創る営みは、同社の更なる進化を加速させるはずです。

Source/Image: talentbook(1, 2