共働きの夫婦が増えています。実は共働き夫婦は片働き(どちらかが専業主婦(夫)となる)夫婦の2倍以上いる圧倒的多数派となっている時代です。
そうなると、それぞれが給与振込口座を持っていることになりますし、光熱費や日常の買い物など、家計のいろんな支出を分担しながら支払っています。
フェアな家計分担の話も共働き夫婦のマネープランの課題ですが、今回ちょっと考えてみたいのは「それぞれの口座の詳細、知らないままでもいい?」という話です。
目次
レベル3:家計簿アプリに夫婦の口座を登録して金額もシェアしてみる
突然の病気! 災害や事故…もしもの事態で起きる「お金の問題」
これは私の友人で実際にあった話です。
アラフィフ世代の男性が意識不明になって倒れて緊急入院することになりました。一命は取り留めて今は日常生活に戻っていますが、「意思疎通ができない数日」が生じました。その間は生死の心配はもちろんですが、お金の支払いの問題で家族が苦労したそうです。
緊急時ということで、夫の銀行口座から代理でお金を下ろそうとしても、暗証番号がわからなければ下ろせません。家族が代理でクレジットカードを使おうとしてもやはり暗証番号が必要です。ECサイトも、スマホやパソコンにログインできなければ決済できません。
このご夫婦の場合、共働きであったおかげで、当座のお金の問題はクリアできたそうです。その後、健康を回復することができたので大きな問題となりませんでしたが、「とりあえず暗証番号は教え合っておく」ことだけは確認したのだとか。
病気になった時、事故や災害に巻き込まれた時、あなたの家庭は大丈夫でしょうか? いくつかのステップで「お互いの口座情報をシェアする」ことを考えてみます。
レベル1:お互いの口座番号をシェアしておく
お互いの銀行口座、特に給与振込口座について口座の番号や暗証番号をお互いシェアしておくことが第1ステップです。
お互いが定期的に振込で資金移動をしていると、口座番号を知ることができます。銀行名と口座番号がわからないと振込ができないのだから当たり前ですね。
しかし、結婚前から共働きをしていたふたりが結婚をしていると、アラフォーになっても互いの銀行口座番号を知らない、ということはままあります。もしものときに備えて、以下の項目は共有しておくことをおすすめします。
- 銀行名
- 口座番号
- 暗証番号
家族の情報を共有するアプリなどを使っていたらそこにノートとしてメモをしておくのもいいでしょう。
暗証番号を夫婦間で開示するのはちょっと悩むかもしれませんが、キャッシュカードと暗証番号が揃わなければ勝手に出金することはできませんのであまり心配しなくても大丈夫です(メモで共有するときはパスワードロックを忘れずに)。
夫婦の稼ぎ、夫婦の生活費は協同で営まれるものである以上、もしものときのために口座情報をシェアしてみてはどうでしょうか。
レベル2:通帳などの所在をシェアしておく
高齢者の終活の一環として、エンディングノートがブームですが、そこでは銀行預金通帳や保険証書の番号と「所在」を示しておく記入欄があります。実はこれ、若い夫婦においても同様かもしれません。
どうしても本人が意思表示できないとき、銀行に出かけたり保険給付の手続きをするといっても、その通帳や証書が見つからないと手続きは苦労することになります。
「通帳はここに置いてあるから」と、場所をお互いが知っておくことも口座情報のシェアの一部です。「引き出しの2番目」とか「パソコンの脇のファイルボックス」というような形でいいので、夫婦の情報シェアはしておくべきでしょう。
「保険証券」の所在のシェアも忘れずに
このときシェアしておきたい情報としては、銀行口座だけではなく「保険証券」が加わります。最悪の場合、加入していたことに気がつかない恐れもあり、給付をもらい忘れてしまってはもったいないことですし、闘病中の経済的支えとして保険給付は大きな存在です。
保険については、生命保険、医療保険、損害保険、共済などありますが、「私は○○保険会社の保険に入っている」という知識だけでも共有しておきたいものです(証書が見つからない場合でも、コールセンターに照会することができる)。
お互いの会社の連絡先もシェアしておきたいところ。会社の健康保険の給付や社内制度については、連絡さえつながれば手続きを案内してもらえます。
レベル3:家計簿アプリに夫婦の口座を登録して金額もシェアしてみる
最後のステップは金額レベルでの情報共有です。具体的な金額についてもオープンにしておく方法としては、家計簿アプリの活用が考えられます。
家計簿アプリについては口座連携の機能(アカウントアグリゲーション機能)がある、「Zaim」「マネーフォワード ME」「マネーツリー」が3大候補となります。
共働き夫婦が同一の家計簿アプリのアカウントにそれぞれの銀行口座を登録しておけば、通帳をお互いにのぞき込まなくても、入出金の状況や残高状況が明確に共有されます。
とはいえ、プライベートのお金の流れまで把握されるのは居心地が悪い場合もあります。おこづかいについては給与振込口座から出金し、別口座で管理し、相互不可侵とするような運用上の工夫をしてみるといいでしょう。日常生活費の口座情報だけを共有するわけです。
資産形成用の口座、証券会社のアカウントも連携
もし、貯蓄用の口座や資産形成用の投資口座がある場合は、そうした銀行や証券会社のアカウントも連携しておくと、家族全体として資産形成がどうなっているかも把握できます。
住宅購入のための頭金準備を夫婦それぞれが積立している場合などは、全体が把握できることになり、家計簿アプリは資産管理ツールにステップアップします。
アプリによっては口座登録数の制限があるので、有料会員になる必要がありますので、登録口座選びについては工夫をしてみてください(たとえばマネーフォワード MEは無料アカウントでは10口座の登録が上限)。
課題も…通帳レス、カードレスの時代、情報共有は難しさを増す
このコラムをまとめていて、近年気になるトレンドが1つあることに気づきました。それは通帳レス、カードレスのトレンドがあることです。
最近の銀行口座は新規開設すると「通帳の更新代」を取られるなど利用者に負担が生じる銀行が増えています。そこで、新規開設時には通帳レス口座の開設をオススメされる場合が多いのです。この場合、アプリやウェブだけでチェックをするので紙の通帳がありません。
クレジットカードもカードレスでの発行ができるパターンが増えています。物理的なカードがなければ盗難リスクが減るし、オンライン決済やスマホに設定する決済(Apple Payなど)なら、カードそのものは必要ありません。
また、明細書をウェブやアプリでチェックする、ペーパーレスも増えています。この場合、アプリ以外では確認することができません。
こうなってくると、「ここに通帳しまっておくね」が通用しません。また、スマホは基本的に個人認証しますから確認できないことになります。
時代の変化が、「財布を開けるか引き出しを探ればなんとかなる」とはいかない状況を生み出しています。意思疎通ができなくなった時にスマホを開けるために、お互いのスマホに指紋認証の登録をするか、パスワードの共有を検討してもいいでしょう。わが家はそうしています。
情報の保護と、夫婦での共有というのはなかなか両立しにくい難問です。それでも情報のシェアは有効であるはずです。
病気、あるいは交通事故はいきなりやってくることがあります。震災被害に遭ったため、連絡がつかなくなることもあるでしょう。
しかし、家族が暮らしていく生活は続いていきます。今、元気で平和な日々が続いているうちに、共働き夫婦の「口座情報」シェア、夫婦でちょっと話し合ってみてはどうでしょうか。
山崎俊輔
フィナンシャルウィズダム代表。ファイナンシャルプランナー。夫婦で共働き、共家事、共育児しながら子どもふたりを育てている。
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