以前にも著作をご紹介したことがありますが、『比べて丸わかり! 会計の用語図鑑』(石川和男 著、KADOKAWA)の著者は建設会社役員・税理士・簿記講師・時間管理コンサルタント・セミナー講師と5つの仕事を掛け持ちする人物。

会計の知識ゼロで入社した会社で経理に配属され苦労したため、日商簿記、建設業簿記、宅建、税理士などの資格を取得。経理の実務を30年以上にわたって務め「総務経理担当部長」になったという実績の持ち主でもあります。

大原簿記学校で15年にわたって簿記講師を務め、さらには働きながら税理士の資格を取得し、税理士としても開業。今年で13年目を迎えるのだとか。

そんな著者は本書の冒頭で、会計知識を正しく理解してビジネスに活かしている人の少なさを指摘しています。その理由は、「専門用語の多さ」と「用語の意味の違いのわかりにくさ」にあるのだと。しかもちょっとした間違いが致命的な損害を生み出してしまうケースも少なくありません。

そこで、混同しがちな会計用語を対比しながら解説することで、会計の知識を身につけ、儲けの仕組みを理解し、ビジネスに役立ててもらう。それがこの本の趣旨です。

ただし、一点だけ注意してほしいのは、簿記、つまり帳簿や財務諸表の作り方の本ではないということです。作り方から学ぶのは骨が折れます。面倒なので嫌いになるかもしれません。作ろうと思うから挫折します。

スマホの作り方が分からなくても、スマホを活用することはできます。財務諸表の作り方が分からなくても、活用することはできるのです。財務諸表や内部資料を見て、読んで、分析して、戦略を練って、ビジネスに活かす! 会計担当者以外は作る必要はないのです。(「はじめに」より)

きょうはそんな本書のCHAPTER 1「会計の全体像がわかっていない!」に焦点を当て、基礎中の基本である「『簿記』と『会計』の違いとは?」について確認してみたいと思います。

会計がなければ会社を続けるのは不可能

たとえば、これから美容院を開業するとしたら、なにが必要になるでしょうか? どんな取引が行われるのでしょうか?

まずは、コツコツためた貯金や退職金を会社に渡します。

このことを会計用語で「出資する」といいます。

会社側では、それを元手に美容院をはじめる準備をします。(12ページより)

まずは土地を買うか、あるいは借りなければなりません。借りるとしたら、敷金、礼金、前払家賃、保証料、仲介手数料などのお金が出ていきます。ドライヤー、タオル、シャンプーやコンディショナーなどを買う必要もあるでしょう。

ネットや新聞の折り込み広告で宣伝をすればお金がかかりますし、オープンしたらお客様の髪を整える代わりにお金をいただくことになります。

従業員を雇って、働いてくれた見返りに給料を支払います。また、税金を納める必要もあります。

このように、美容院を開業するとさまざまな取引が発生するわけです。もちろんそれは、他の職業で起業しても同じですが、これらの取引をすべて記憶しておくことは難しいはず。そこで登場するのが、「簿記」と「会計」だということ。(12ページより)

簿記とは、内部管理的に困るから帳簿に記録すること

さまざまな取引を頭に記憶しておくことは不可能ですし、そんな苦労をする必要もなし。なぜなら、人は記録ができるから。

記憶に頼らず記録する。どこに? 帳簿というノートに記録するんです。この「帳簿に記録」するの「簿」の字と「記」の字をとって「簿記」といいます。

つまり、簿記とは、帳簿というノートに記録することなんです。

簿記では、日々発生したすべての取引を記録します。「すべて」とは、資産、負債、純資産、収益、費用の5項目です。この5項目が、増えたり減ったりすると簿記上の取引なので帳簿に記録します。

帳簿には、左右に分けて記録します。ここが一般的な小遣い帳や家計簿と違うところです。(14ページより)

たとえば5月10日に銀行から100円を借りて、普通預金に入金した場合は、

5/10 普通預金 100 / 借入金 100

と左右に分けて記録します。この記録のことを仕訳といい、仕訳帳という帳簿(ノート)に記録します。(14ページより)

記憶に頼らず記録するのは、そうしないと経営者や社員が困るから。つまりはそうしない限り、内部管理的に大変だということです。しかし他にも困る人たちはいて、それは企業を取り巻く利害関係者。(14ページより)

会計とは、企業を取り巻く利害関係者の皆様に会社の状況を報告する手続き

ご存知のとおり、現金で受け取ったり、支払ったりすることを現金取引といいます。しかし、毎回、現金取引をすると手間がかかります。

そこで、「今月購入(販売)した商品は、来月の末にまとめて支払い(受取り)ますよ」という取引があり、それが信用取引(会計用語では「掛取引」)。その名のとおり、「信用しているのでお金はあとからでもいいですよ」という信用から成り立っている取引です。

しかし、信用したくても、その会社の経営状況や財産、借金などの情報がなければ信用して取引はできません。それがわからなければ銀行もお金を貸せませんし、投資家も、どれだけその会社が儲かっているのかわからないと出資のしようがありません。

税務署にしても同じです。たとえ経営者が「100万円儲かったから30万円の税金を納めます」と記憶を頼りに納税しに来ても、それでは検証できないわけです。

このように、「うちの会社はこういう状況で、これだけ財産があり、これだけ借金があって、これだけ儲かっています」ということを、企業を取り巻く利害関係者の皆様に伝える必要があるということ。その手続きを会計というのです。

簿記とは、内部管理的に困るから帳簿に記録すること。帳簿には、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売上帳などがあります。

会計とは、その帳簿をふまえて、企業を取り巻く利害関係者の皆様に「うちの会社はこういう状況ですよ」と報告することをいいます。つまり、簿記は会計に含まれます。(15ページより)

簿記は、利害関係者に報告する報告書をつくるまでの下準備で、日々、取引を帳簿に記録し続けるもの。その記録をもとに、利害関係者に報告するまでの一連の流れが会計だということです。(15ページより)

著者は、簿記の講師、税理士、民間企業の経理担当という3つの視点から、会計についてわかりやすく解説できると自負しているそうです。つまり、そんな実績から生まれたのが本書だということ。会計の基礎を頭に入れていくために、活用する価値はありそうです。

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Source: KADOKAWA