「楽観的な人」とは、どのような人でしょうか?

「コップに半分しか入っていない」ではなく「コップに半分も入っている」と、肯定的な見方をする人のことでしょうか? それとも、かつてウィンストン・チャーチルが言ったように、「あらゆる困難のなかにチャンスを見出す人」のことでしょうか?

「楽観的な人」が職場にもたらすもの

私の考えでは、楽観的な人とは「明日は今日より良くなる」と信じている人です。そしてそうした人は、その実現に積極的な役割を果たします

より良い明日のために積極的に取り組む姿勢は、テクノロジー分野で働くうえでの必要条件です。

テクノロジーとは本来、問題を解決するために実用化された科学や情報のことです。さまざまなアプリケーションやソフトウェア、デバイスが、心や体の健康、職場の生産性向上のためにつくられていることを考えてみてください。

テクノジー分野で働く人のほとんどは楽観的です。そして、テクノロジーには人々の生活をより良くする力があると確信しています。

では、テクノロジー関連の職場において、楽観主義はどのような形で現れているでしょうか?

たとえば、楽観的な社員は、努力する時全力を注ぎます

これを裏付ける調査結果があります。楽観的な社員は、仕事で最善の努力をしようと考える割合が103%高いのです。ですが、一生懸命働くことは、楽観主義のアルゴリズムの一部にすぎません。

楽観的な職場とはどのような職場か? どうすれば仕事場で楽観主義を育めるか? 楽観的な職場のメリットは何かについて、さらに詳しく見ていきましょう。

「楽観的な人」に共通する特徴

否定的な考え方と同じように、楽観的な考え方も伝染します。楽観的な考え方の人を雇うことが重要なのは、そのためです。

たとえば、楽観的な人に見られる以下のような兆候を探してみてください。

楽観的な人かを見極めるチェックリスト

  • 期待に胸を膨らませているか?
  • 目的意識をもっているか?
  • あなたの会社で働きたい理由を認識しているか?

新しく雇われる人のほとんどは、刺激的で給料の高い別の職場から転職してくるということを忘れてはいけません。彼らはもっと仕事をし、もっと変化し、もっと革新するためにあなたの会社に入ってくるのです。

この「もっと、もっと、もっと」という感情が、チームのほかのメンバーの能力を高め、顧客に提供するサービスの水準を押し上げます(この詳細については後述します)。

好循環を促す「増幅型」の人材とは

会社に必要なのは、まわりの人の能力を引き出す「増幅型」の人材、つまり「今まで誰もやったことがないので、できません」と言うのではなく、問題解決に向けて邁進する人材なのです。

メンバーの才能を開花させる技法』(邦訳:海と月社)の著者リズ・ワイズマンは次のように語っています。

「増幅型」の人は、1人ひとりの特有の知性を引き出し、天才が育まれる空気、つまりイノベーションや生産的な努力、集団の知性などが育まれる空気をつくり出します

この言葉は、本当にその通りです。増幅型の社員は常に、自分の仕事の肩書が求める以上のことをしようとするのです。

たとえば、わが社の社員たちは、利益を増やし、より良い結果を出し、影響力を大きくすることによって、組織に変化をもたらしています。

私たちは、ただ技術的な仕事をしたり、製品を売ったりしているだけではありません。私たちのビジネスで、顧客が何を実行し、何を達成するかについて制限するものがあるとしたら、それは「顧客の想像力」以外にはありません。

これが、職場における楽観主義です

楽観的な人が広げるのは「影響の輪」

筆者は20年前、ある本を読んで感銘を覚えました。スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』(邦訳:キングベアー出版)です。

彼の「影響の輪(circle of influence)」という概念にも刺激を受けました。「影響の輪」には、あなたが影響を与えることができるものが含まれます。

一方、「関心の輪(circle of concern)」には、あなたが直接影響力をもたないもの(経済や、世界的規模のパンデミックなど)も入っています。

楽観的な人は、自分の時間とエネルギーを、自分がコントロールできるものに集中させます。コントロールできるものに力を入れることによって、結果的には、より大きな規模で影響を与えることができます

たとえば、筆者自身は世界的なパンデミックを止めたり防いだりすることはできませんが、自分の生活のなかで対策を取ることはできます(ソーシャルディスタンスを取る、換気の悪い場所は避けるなど)。それが私を助け、より大きなコミュニティに影響を与えるかもしれません。

楽観的な人は、自分の「影響の輪」に集中するだけではありません。どんな状況にあっても、いつも希望の光を探します

新製品のベータ版をリリースしたところ、予期せぬバグが見つかったとしましょう。楽観的な開発者はまず、「この問題から、何を学べるだろう」と自問するはずです。

開発者たちは、厳密につくられたロードマップを忠実に守り、製品を滞りなくリリースするために、できることはすべてやったはずです。しかし、それでもバグが出てしまいました。

それは、彼らがコントロールできなかったものです。そして、彼らはこう考えるのです。

どうすれば、今回学んだことをもっと大きな体制に取り入れて、今後の製品リリースに役立てられるだろうか?

楽観的な人の「不平不満」に必ず含まれるもの

テクノロジー業界は、絶えず変化しています。まるで、転がり続ける球体の上にいるようなものです。特に、ITサービスやクラウド技術の分野は、(医療や金融サービスも含めた)ほかのほぼどんな業界よりも速く進化します。

そして、こうした変化の多くはコントロールできません。だからこそ、チームが変化にどう対応するかが重要です

顧客やチームの仲間、あるいは仕事のパートナーについて、不平不満ばかり言うチームは望ましくありません。

楽観的な人も、時には不平を言うでしょう。けれども、彼らの不平の中には、周囲との協力や何らかの提案など、「解決の手立て」がかなり含まれています。チームは、不平不満を吐き出すだけでなく、解決するという目的のために、問題点を切り離して考えるべきです。

こうした「解決の手立て」は、職場ではどのような形で展開されるのでしょうか?

顧客が何か苦情を言っているとしましょう。楽観的な人は、ムキになって反論するのではなく、その状況を「贈りもの」だと考えます

顧客は、間違った憶測に基づいて操作しているかもしれないし、顧客がもつ情報が古いのかもしれない。もしかすると、本当に製品に問題がある可能性もある。

顧客の話に耳を傾け、彼らの問題に取り組んで解決すれば、長い目で見ると、その顧客の信頼を勝ち取ることにつながります。顧客の満足感は、彼らがそもそも苦情を言わなかった場合よりも高くなるでしょう。

苦情を訴える顧客は、必ずしも悪い顧客ではありません。何も言わずに去ってしまう顧客こそ厄介なのです。

同じように、テクノロジー関連のパートナーが価格や契約を変更してきたら、楽観的なチームはこう考えます。

「この変更にうまく対処しながら、顧客の役に立つにはどうしたらいいだろう?」

そして、価格変更が適用される前に、顧客が現在の価格体系を利用できるようにするでしょう。

ここでも、自分がコントロールできる要素をコントロールし、コントロールできない要素による影響を最小限に抑えるわけです。一貫してこのような対応をしていれば、あなたが顧客(そして、あなたの組織)に与えるプラスの影響は、確かなものになるでしょう。


前述の著者スティーブン・コヴィーによれば、人生には3つの変数があります。「変化」「選択」「原理」です。

もし、楽観主義があなたの会社を導く「原理」であるとしたら、あなたのチームは、予想もしない「変化」が起きても、好ましい結果をもたらす実行可能な「選択」をして対処する準備ができています。

そして、こうした肯定的な結果が、長期間にわたって積み重ねられることによって、社内的には社員のために、そして社外的には顧客やパートナー、ビジネスで関わるすべての人のために、より強い会社がつくられるのです。

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Source: Leadership IQ, Amazon.co.jp, FranklinCovey

Originally published by FastCompany[原文

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