「単刀直入にわかりやすく伝えれば角が立つこともある。遠まわしに言えば優柔不断とも思われる。とかく、コミュニケーションは難しい…」
こう感じる方は多いのではないでしょうか? だからこそ、伝え方のセオリーを知っておくことをおすすめしたいのです。
筆者は研修講師として数万人を見てきましたが、各社で研修をしていて実感するのは、評価の高い人物の多くが「センスのある話し方」をしているということ。観察すると、彼らはTPOに合わせて「伝え方」を変えているのです。
そこで今回は、「好感度を高める話し方のセオリー3選」と題し、TPOに合わせながらも、誰もがスグに使える話法を紹介します。
ポイントは、「遠慮ではなく配慮すること」。簡単に取り入れられる話法なので、ぜひトライしてみてください。
遠慮して言いたいことが言えないなら「DESC法」

人にお願いするのが苦手。言いたいことが言えない。
そんな時は、相手の思いをケアする話法「DESC法(デスク法)」がおすすめ。筆者の研修でもよく紹介する、誰もが飛躍的にセンスの良い対話ができるようになる話法です。
DESC法とは、以下の流れで意見を主張する方法のこと。
【DESC法のフロー】
● Describe:事実を描写する
● Explain:意見を述べる
● Specify:提案・相談する
● Choose:選択を求める
言いにくい時、場の空気を読んだ方がよさそうな時、遠慮をせずに“配慮”をしながら発言できるようになります。
具体例
シーン:上司に「急ぎで今日の会議の議事録をまとめてくれない?」と頼まれた場合
【事実を描写する(語る)】
「かしこまりました。実は、17時にABC商事の方との打ち合わせがあり、事前ミーティングを○○さんとやることになっています」
【意見を述べる】
「今日中に作成したいとは思いながらも、少しお時間をいただけると安全に思うのですが」
【提案・相談する】
「差し支えなければ、明日の13時まででもよろしいでしょうか?」
【選択を求める】
「もちろん、難しければおっしゃってください。お急ぎのところすみません。いかがでしょうか?」
ポイントは、いきなり主張するのではなく、まず「事実(描写)」からはじめ、「自分なりの意見」を説明。状況を理解したうえで、「相談(提案)」する流れで、“配慮”のある主張を示している点です。
言いにくい内容の主張や、お願いごとの際は、さりげなくDESC法を使えるようにしておきましょう。
会議や商談。何から話していいかわからないなら「POINT話法」

会議や商談で、いきなり本題から入ってしまったり、とりとめもなく話してしまうことはありませんか? 冒頭で「センスが良い」と思われるには、最初の30秒が肝心。
これには、「POINT話法」を押さえておくと良いでしょう。流れは次の通り。
【POINT話法のフロー】
● Purpose(目的):ミーティングや商談の「目的」から伝える
● Outline(概要):全体の「概要(話すテーマ)」を伝える
● Input(相手の意見):一言、相手に「意見(希望など)」を尋ねる
● Transition(移行):問題がなければ、本題に「移行」する
この順序で話すだけで、相手への“配慮”を冒頭の30秒で伝えられます。
具体例
シーン:顧客との商談を開始する場合
【Purpose(目的) 】
「○○様、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。今日は、●●の案内をできればと考えております」
【Outline(概要) 】
「まず最初に、○○様の状況をお伺いしたあとで、弊社のサービスをご紹介し、最後に意見交換ができればと思っております」
【Input(相手の意見)】
「○○様のご意向もお伺いしたいと考えておりました。いかがでしょうか?」
【Transition(移行)】
「かしこまりました。では早速、本題に入らせていただきます」
いかがでしょうか? 一方的な印象を与えないだけでなく、これからどんな話をするのかが明確にイメージしやすくなるので、“配慮”を感じるわけです。
ダラダラと話し続けてしまうなら「PREP法」

ダラダラと話してしまうのは、評価を下げる原因に。
そこで、最後に紹介するのは「PREP法」。端的に結論から話す話法です。説明や連絡、時には質問をする際などに用いる方法で、ビジネス会話の基本だと考えておいて間違いありません。
「Point(結論)」「Reason(理由)」「Example(実例・具体)」「Point(結論の繰り返し)」の順で話します。では、このPREP法の具体例を見てみましょう。
具体例
シーン:「御社のサービスは、他社と何が違うの?」と質問を受けた場合
【Point(結論)】
「弊社の特徴は、特にアフターフォローにおいて好評をいただいている点です」
【Reason(理由)】
「というのも、フォローの専門チームを抱えているからです」
【Example(実例・具体)】
「弊社では、専門のチームが “些細なお困りごと”を確認し、その場での専門的なアドバイスの実践に努めております。
98%のお客様にリピートしてご購入いただけるのは、このサービスによるものと自負しております」
【Point(結論の繰り返し)】
「ですので、製品力はもちろんのこと、アフターフォローにおいても、とりわけ好評いただいているのが、弊社の特徴です」
このように、PREP法で話すと、余計な前置きを省いた端的で理解しやすい説明になります。
慣れるまでは難しく感じるものですが、筆者の研修を受講された方を見ると、約1カ月意識して実践すれば、「無意識」にできるようになっています。ぜひトライしてみてください。
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今回は、好感度、そして評価を高めるを話し方を解説しました。ぜひ、普段の会話を振り返り、改善すべきことがないか考えてみてください。
まだやるべきことがあるようなら、早速次の機会に実践してみてください。今回の内容が、コミュニケーション力向上に向けての一助になれば幸いです。
伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、オンラインを活用した研修も好評。近著に15万部を超える『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ(PHP研究所)』『できる営業は、「これ」しかやらない(PHP研究所)』のほか、新刊の『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる(アスコム)』をはじめ、他多数の書籍がある。
※無料メーリングニュース(全8回)
※YouTube「研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル」、音声メディアVoicy「1日5分 スキルアップラジオ」もスタート。
※伊庭の研修をオンラインで学べるUdemyの講座も好評(Udemyベストセラー入り!)