1930年、著名な経済学者であるジョン・メイナード・ケインズは、技術的な進歩と経済的な進歩によって、人の労働時間がどのように減少したかを調査しました。

そして、2世代以内に大部分の人たちは1日3時間労働になるだろうと予測しました。

「一生懸命働くことは問題にはならないだろうが、多くの人にとっては、増えた自由時間に何をするかが問題になるだろうと。

ケインズの考えの多くは正しかったのですが、自由時間が増える点ははずれました。技術の進歩によっても、経済的進歩によっても、平均的な人の自由時間は増えていません。

そして、富も増えていません。実際には、稼げば稼ぐほど自分では持っていると思える時間が少なくなることを示す研究もいくつかあるのです。これらを考えると、お金では幸せを買えないという結論になります。

時間を得るためにお金を払う

でも、意図的かつ意識的に少しお金を払って、時間を少し得ることはできます。

米国科学アカデミーの議事録に掲載された2017年の研究では、お金を払って、楽しくない、またはやりたくないタスクを時々他人に依頼した何千人もの人々を調査しました。

たとえば、庭の芝生を刈る、家の掃除、用事をすませるというような、やらなければならないけれど、自分では特にはやりたいとは思わなかったようなことです。

少しの時間を得るために少しのお金をすすんで払う人たちは、そうでない人々よりも幸せであり、人生の全体的な満足度が高かったということには納得がいきます。

時間が買えると幸せ?

ただし、相関関係はかならずしも因果関係ではありません。お金を使って時間を買える人は、時間を得るためのお金を持っているから幸せなのかもしれませんよね?

いいえ、そうではありません。比較的裕福な人たちが少し時間を得るためにお金を支払った場合、そうしなかった同レベルの裕福な人たちよりも幸せでしたが、経済的に下層にいる人たちでも、少しの時間を買うためにお金を費やした人は、そうしなかった人たちよりもやはり幸せだったのです。

収入にかかわらず、財産にかかわらず、お金を出して時間を得られることは幸せにつながるのです(これには注意点があるので、あとで説明します)。

40ドルの実験でわかったこと

この因果関係を証明するために、さらなる実験が行なわれました。実験の参加者には、ある週に40ドル(約4400円)が与えられ、モノを1つ、または自分が選んだ複数のモノを買うように指示されました。唯一の制限は、そのお金でモノを買わなければならないということでした。

その次の週に参加者はまた40ドルを受け取りましたが、今度は時間のためにそのお金を使うように言われました。

たとえば、誰かを雇ってクリーニングを取りに行かせるとか、メンテナンスや配達など。

他人を雇って自分がやりたくないことをやってもらうと、自分がやりたいことをする時間が増えます。

もう結果はおわかりでしょう。モノではなく時間を購入したほうが参加者はもっと幸せを感じられ、またストレスが少なく、満足度が高くなったのです。

ただし、これには注意点があります。

研究者たちは、「時短サービスに多額のお金を費やすと、日常のタスクを何もできないと思うことにつながり、幸福度が下がるかもしれず、個人のコントロール意識が損なわれる可能性がある」ことを発見したのです。

時間のために、意図的にお金を使う

とはいえ、ほとんどの人たちには、多額のお金を払って、自己嫌悪に陥るほど他人にいろいろなことをやってもらい自分の時間をつくるような経済的な余裕はありません。

しかし、それでも、時々人に依頼するタスクについては意識的に決めることが重要です。

なぜ、そのタスクを他人に頼むと決めたのですか? もし、いつも誰かに庭の芝生を刈ってもらっているなら、それはあなたのニューノーマルになり、自分にはまだ時間が足りないと感じるでしょう。

時間を買う秘訣は、お金によって得られた時間をどう使うかを意識的に決めることです。お金を出して時間を得ることは、意図的で目的があると感じられる場合だけ幸せにつながります。

それは、時間がないからではなく、持っている時間を違う方法で使いたいという理由で行なうからです。

庭の手入れをする代わりに、家族や友人と一緒に時間を過ごそうと決心する(繰り返しますが、うまくいくためには自分で決めなければなりません)かもしれません。

それとも、なかなか着手できないでいるサイドプロジェクトに取り組みますか? 読書をしますか? ワークアウトですか?

つまり、自分が楽しめること、やりたいことをやるのです

自分がお金を出して得た時間で。その時こそ、収入にかかわらず、お金でちょっとした幸せが買えることになります。

――2021年8月19日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

訳:ぬえよしこ/Source: Wikipedia, National Bureau of Economic Research

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