今回紹介するメソッドは「新しい環境で良好な人間関係を築くコツ」です。
社会人になった、異動になったなど、このタイミングで新たな環境で仕事をするようになった際、最初に気になることの1つに「良い人間関係が築けるだろうか」といったことがあるかと思います。
研修講師としてよくいただく質問の1つがまさにこれ。人間関係の悩みです。ここは、しっかりとクリアしておきたいもの。
というのも、仕事がわからない時に気軽に聞くこと、また困った時に手伝ってもらえることは、仕事で結果を出す上では不可欠の条件だからです。
ご安心ください。実は、「初めにやっておくべきこと」を知っておけば、ほぼ確実に新たな職場でも良好な人間関係を築くことができます。
「人間関係の不安を解消したい」「良好な人間関係を築きたい」という方のために、その具体策を紹介します。
1. 積極的に「接触の機会」をつくる

何度も顔を合わせるだけで、相手に親しみを覚えることはありませんか?
これは、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した「単純接触効果」または「ザイアンス効果」と呼ばれるもので、繰り返し接触する相手への好意度や印象が高まる効果です。
単純接触効果について簡単に解説すると、以下のような実験がベースとなっています。
・大学生6人に知らない人の写真を見せる(会話はなく、回数はランダム)
・相手を0~7段階で評価してもらう(好きかどうかを判定)
・写真を見た回数と評価に「正の相関」が見られた(見る回数が多い方が好感度は上がる)
なので、最初におすすめしたいのが、相手に積極的に話しかけて、自ら接点をつくること。
たとえば、
- こちらから挨拶する(始業・終業のタイミングなど)
- 「私がしておくべきことはありませんか?」
- 「デスクで飲み物を飲んでもいいですか?」
- 「ランチは、みなさんどうされているのですか?」
など、さまざまなシーンでこちらから接点を持ってみてください。
人見知りの人には難しいかもしれませんが、最初の壁を突破すると後がラクになります。最初だけ、がんばってみてください。
やってはいけないのは「1人でもじもじ」と遠慮してしまい、孤立してしまうこと。これでは周囲も話しかけにくくなってしまいます。
2. 「この職場でうれしい」と声に出す

嘘は不要ですが、「この職場でうれしい」と声に出すことをおすすめします。
もしも褒める点が見つけにくいなら、部分的でも良いので「良い点」を見つけてみましょう。そして、こう言ってみてください。
「○○なので、うれしい」
解説しましょう。「拡張自我(自分の大切にしているもの自分の一部)」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
友人のことを親から貶されたり、逆に友人から自分の親のことを悪く言われたりすると抵抗したくなるでしょう。自分が大事にしているものを否定されるとムカッとなるもの。
つまり、自分が大事にしているものを自分の一部のように感じる心理が拡張自我です。
そこで、会社や職場も相手の「拡張自我」だと考えてみましょう。そして「この職場でうれしい」と伝えてみてください。
もちろん自分を偽る必要はありません。素敵だと思う“部分”はないでしょうか? 見方を変えれば“素敵な解釈”はできないでしょうか?
この「部分的にほめること」「リフレーミング(角度を変え、違う意味を見出す)」を実践してみるのです。
【具体例】
- 保守的で年配者が多い → 相談がしやすいので、うれしい
- リモートワークが認められていない → 一体感を感じられるので、うれしい
また、仕事を教えてもらえることを「うれしい」と伝えることも忘れないでください。
中には未熟な自分を隠そうとがんばる人もいますが、人から好かれるといった観点で言うとむしろ逆です。あえて「未熟さ」を見せて教えてもらった方が、関係性は良くなります。
その時も、「教えてもらえるので、うれしい」と伝えてみましょう。効果が見込めますよ。
3. 「待ちの姿勢」ではなく「攻めの姿勢」に

考え方を「相手が○○してくれない」ではなく、「自分から○○くらいはしてみる」に変えてみてください。
「構ってくれない」「教えてくれない」「話しかけてくれない」とは思わないことです。相手にも事情がある。これが前提です。
解説を加えます。
まず、待っているだけの姿勢では、「あの人やる気あるのかな…」と周囲も不安を感じます。
だからこそやってほしいのが、自ら進んでアプローチすることなのです。「○○してくれない」と思ってしまいそうになったら、「○○くらいはしてみよう」に考え方をチューニングしてみましょう。
【具体例】
- このやり方では売れない。でも戦法を教えてくれない → 相談くらいはしてみようかな
- リモートワークを認めてくれない → 事情を話すくらいはしてみようかな
- ランチに誘ってくれない → 最初くらいは、こちらから声をかけてみようかな
そうすることで、「待ちの姿勢」から「攻めの姿勢」に転ずることができ、迷った時に自らアクションを起こすことの大切さを自分自身で確認できるようになるでしょう。
先述した通り、待ちの姿勢は相手に不安を与え、場合によっては「やる気があるのか」と誤解されることもあります。なので、ぜひ「○○くらいはしてみる」といった発想で、アプローチ力を高めておいてください。
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今回は、「新たな職場で良好な人間関係を築くコツ」を紹介しました。今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。
ーー2021年4月21日公開記事を再編集して再掲しています。
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伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、オンラインを活用した研修も好評。近著に12万部を超える『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ (PHP研究所)』『できる営業は、「これ」しかやらない(PHP研究所)』のほか、新刊の『目標達成するリーダーが絶対やらないチームの動かし方(日本実業出版)』『結果を出す人がやっている! 仕事を「楽しくする」方法(アスカビジネス)』をはじめ、他多数の書籍がある。
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