『不安定な社会で成果を手にする バランス思考』(高砂哲男 著、あさ出版)の著者は、現在、多くのビジネスパーソンの思考法には2つの大きな流れが生じていると指摘しています。
まずひとつは、「あいまいで中途半端な思考法」への流れ。
難しい課題や問題と向き合うなかで、はっきり決められなくなることはあるもの。しかし、さらにあいまいで中途半端な思考法では、複雑で困難な問題を解決することは難しいわけです。
もうひとつは、「シンプルで極端な思考法」への流れ。
課題や問題が複雑かつ不安定で先が見通せなかったとしても、シンプルでわかりやすければ「複雑さ」や「わかりにくさ」は表面的には減ることになります。しかし、「シンプルでわかりやすい」が蔓延すると、思考はだんだん極端になっていく可能性があります。
なぜなら興味があって都合のいい「シンプルでわかりやすい」こと・ものばかりに触れ、思考するようになってしまうからです。したがって特定の意見や考え方に影響を受けやすくなり、思考や行動も極端になってしまうということ。
しかし、それでは望ましい形で問題を解決することなどできません。だからこそ、あいまいで中途半端な思考や極端な思考に陥らず、目の前の問題を解決し成果を上げていくための思考法として、「バランス思考」が必要になってくるというのです。
本書で取り上げる<バランス思考>とは、単に中庸や均衡を保つという従来のバランスではなく、さまざまな要素を考慮しながら新しい均衡や安定を生み出していく思考法です。
もっともわかりやすく言えば、「変化」「違い」「対立」に対応し、目の前に立ちはだかるさまざまな問題を解決して、新しい均衡や安定を生み出していくために必要な思考法だと言えます。(「はじめに」より)
だとすれば、バランス思考についてもう少し知っておきたいところ。そこで第1章「<バランス思考>とは何か」に目を向け、基本的な考え方を確認してみましょう。
「動きや変化」「違いや対立」に着目する
<バランス思考>を考えるにあたって、著者はまず「バランス」ということばについて触れています。普段の生活で馴染み深いことばではあるものの、その真意をあまり意識することはないのも事実だからです。
いうまでもなく「バランス」とは、「つり合い、均衡」を意味します。すなわち、“つり合いを取ること”“均衡を保つこと”が「バランス」。そして著者は、ビジネスにおいて「バランス」が必要とされる場面には、2つの要件が含まれていると感じているのだそうです。
ひとつ目は、「動きや変化がある」ということ。
動き・変化があることで想定や意図と異なる状況が生まれ、つり合いや均衡を考えるためのバランスが必要になるわけです。
ふたつ目は、「問題に発展する可能性がある、違いや対立がある」こと。
違いや対立があったとすると、それは定まった方向には進まないもので、予期せぬ動きが報じてしまうことも考えられます。そこでなんらかの対応が必要となり、そこにバランスを取ることの意味が生まれます。対立があるからこそ、バランスが求められるのです。
さらには、「違いや対立そのものに問題が生じる」可能性もあるかもしれません。違いや対立を放っておくとなんらかのマイナスが生じてしまうため、バランスを取ることが必要となるのです。
なお、「バランス」を生み出すこれら2つの要件をもとに<バランス思考>を捉えると、そこには以下の基本要件があることがわかるといいます。
1. 動きや変化に対応するための思考である
2. 違いや対立に対応し問題を解消する思考である
(23ページより)
変化が大きな社会やビジネスの現場においては、異なる考えや対立している意見があったりするもの。
それらに対応して課題や問題を解決し、合意点を見出していくための思考が<バランス思考>だということです。(21ページより)
“不安定な状況下”では常にスピードが求められる
バランスということばは、「バランスの取れた人材」「バランスの取れた考え方」というように、ポジティブな使われ方をするケースが多いのではないでしょうか?
しかしその一方、近年は「バランス」や「バランスの取れた思考」が、ネガティブな印象を含んでいる場面も増えていると著者は感じているのだそうです。
その原因のひとつとして挙げられるのは、「バランス=中庸」というイメージが、以前よりも強くなってきていること。中庸とは「かたよらず中間、中正を取ること」ですが、「あいまい」「中途半端」「どっちつかず」「当たらず触らず」といった印象を与えることもあるというのです。
しかし、変化が激しく不安定な現代社会においては、常にスピードが求められます。思考や意思決定、行動にも素早さが求められるべきでしょう。あいまいでどっちつかずの状況においては、なにも進まず、素早い意思決定や行動も行うことができないわけです。
つまり、そこに求められるべきが<バランス思考>だということ。
たしかに変化がより激しく厳しくなるなか、従来のような「バランスの取れた思考」だけでは時代の変化に対応できそうもありません。重要なのは、環境変化に合わせて、思考法もアップデートしていくこと。
変化に対応していくための、新しい思考の核となるのが、本書で紹介する「新しい調和・均衡を生み出すために、変化に対しぶれない柱を基に信頼を高め、プラスを増やしていく」――新しい<バランス思考>なのです。(29ページより)
たとえば、なにかの折に専門性を発揮することには間違いなく意味があるでしょう。慣れ親しんだ特定の状況下に置いては、専門性を活かしながら成果を上げることはできそうです。しかし、そこに汎用性がないとしたらやはり問題です。
さまざまな未知の問題にも対処するためには、スペシャリスト的な思考のみならず汎用的に使える思考も有効になるからです。だからこそ、<バランス思考>に目を向けるべきだと著者は主張するのです。(23ページより)
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「従来の考え方や思考法では、なかなか成果が上がらない」
「新しい思考法を身につけ、自らの能力やスキルを高めたい」
「新たなチャレンジをして成長したい」
本書は、そんな思いを持っている方のために書かれているそう。自分自身をブラッシュアップしてさらなる成果を上げるため、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Source: あさ出版