「いつもひとりで仕事を抱え込んでしまう」「人に頼ることができない」というようなことで悩んだ経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
それは、『仕事は自分ひとりでやらない』(小田木朝子 著、フォレスト出版)の著者も同じだったようです。
子どもが生まれてからも仕事を続けたものの、結果的には仕事も育児も家事もひとりで抱え込むことになってしまい、「これ以上は無理だ」というところまで追い込まれたというのです。しかし、そんな状況から抜け出すきっかけになったのが「ヘルプシーキング」だったのだとか。
ヘルプシーキングとは、一言でいえば周りの人に助けを求め、ひとりで抱え込まないスキルです。Help(助け)、Seeking(探す)という意味で、立教大学経営学部教授の中原淳先生が発信されていた言葉です。(「はじめに」より)
著者はヘルプシーキングを取り入れた結果、自分がラクになっただけでなく、仕事の生産性が上がり、より多くの仕事をこなしながら成果にどんどんつながるようになったといいます。
また、一緒に働くメンバーとも積極的に連携し合えるようになり、安心して仕事ができる体制が整ったため、チームの成果も大幅に伸びたそう。
そこでヘルプシーキングを試行錯誤しながら体系化し、いまでは多くのビジネスパーソンや企業の経営者、マネージャーへと伝える側になったのだといいます。つまり、そうした活動を通じて得たノウハウをまとめたのが本書であるということです。
きょうはそのなかから、第2章「『ヘルプシーキング』というビジネススキル」に焦点を当ててみたいと思います。
いまの時代だからこそ使えるビジネススキル
ヘルプシーキングとは、どのような人たちに使えるスキルなのでしょうか? この問いに対して著者はまず、「私たち個人としてのビジネスパーソンに使えるスキル」なのだと述べています。
多くのビジネスパーソンは、仕事をすることでの楽しさを実感し続けつつ、人生のなかで長期にわたって仕事を継続したい(=持続的可能性が必要)だと考えているはず。だからこそ、ひとりで抱え込むことなく、周囲と助け合いながら成果を上げることのできるヘルプシーキングに意義があるということ。
そしてさらには、「企業」「組織、チーム」レベルで使えるスキルでもあるようです。
多くの会社組織やチームは、働き方も年代もバラバラの多様なメンバーで構成されているもの。
新卒から同じ会社で仕事をしている人もいれば、他社・他業界で仕事をしてきた中途入社の人もいるわけです。また、短時間勤務者やパートタイマー、業務委託で外部のパートナーが参加しているチームもあることでしょう。オフィスで仕事をする人がいれば、リモート勤務の人がいたり、育児や介護など抱える事情も多種多様。
そうした状況下でヘルプシーキングは、自分自身にもメンバーにも抱え込ませず、連携と成果を両立するアプローチとして注目されているというのです。
加えて、若手の育成や定着、女性活躍推進のなかでキーワードとしてよく挙がるのが「マネジメント・スタイル」のアップデートだそう。
管理職は「責任をひとりで抱え込まなければいけない人」「誰よりも長く働き、メンバーをサポートしなければならない人」だと捉える声をよく聞きます。
しかし、これでは誰もなりたくないうえに、当の管理職も辛すぎますよね。
だからこそ、「チームで成果を出すための考え方とマネジメント・スタイルのアップデートが必要」と言われるようになってきました。(52ページより)
したがって、管理職もひとりで抱え込まないことが大切。メンバーと連携し、チームの成果を最大化するというマネジメント・スタイルを組織に浸透させるべきだということです。
そうすれば管理職の疲弊や負担を緩和することができ、多様なリーダーを組織に生み出すことができるからです。すると必然的に、それに続く若手や女性も増えるという好循環につながるわけです。(50ページより)
ヘルプシーキングはこれからの組織スキル
つまりヘルプシーキングは個人のためのスキルであると同時に、チーム・組織などさまざまな場面においても使えるビジネススキルだということ。そう理解することは、実践の大きな励みにもなることでしょう。
ヘルプシーキングが会社やチームに浸透すると、効果が増大するのだと著者はいいます。周囲がそれぞれ抱え込む状況のなか、ひとりだけで「助け合おう」と奮闘するよりも、みんなで実践したほうがチームの成果への影響は圧倒的に大きいからです。また、その結果として効果的・効率的に助け合うことができるようにもなるでしょう。
なお、ヘルプシーキングを効果的に実践できているチームは、次の要素に分解できるそうです。
ヘルプシーキングが上手なチーム = 個人スキル × 仕組み × 文化(55ページより)
個人スキルとは、チームメンバー各人がビジネススキルとしてのヘルプシーキングを理解し、実践できること。つまりは欠かすことのできない基本中の基本です。
私たちがまず「助けを求めることは“甘え”や“逃げ”ではない」と思い込みを手放すこと。仲間と適切な情報を共有しながら、必要な際に素早く判断すること。上手に助けを求めるための言語化力や論理的思考力などのスキルが磨かれていること。
個人スキルは、チームでヘルプシーキングを実践するうえでも、大事な前提です。(55ページより)
仕組みとは、たとえばお互いがなにをやっているか共有される場があること。チーム内で情報共有するためのツールや仕組みがあったり、業務プロセスが効率的で無駄がなかったり、メンバー同士がオープンに相談し合える仕掛けがあったりすることなどです。
そして文化とは、助けを求めやすい空気や、そうした行動が推奨される共通認識の観点。
ひとりだけでがんばるのではなく、チーム全体で実践できると、“ひとりで抱えるよりも大きな成果”が実現できるということです。(54ページより)
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「『助けを求める』ことは甘えではない」と著者は断言しています。ひとりで抱え込み、助けを求められないことのほうが組織にとってはリスクであり、個人としてもそんな仕事のやり方は長く続けられないとも。
たしかに、そのとおりではないでしょうか? だからこそ本書を参考にしながら、「まわりに頼りながら、チームで成果を出す」ことを目指したいところです。
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Source: フォレスト出版