プロジェクトをうまく進め、成果につなげるのはなかなか難しいもの。しかも、短い期間でやりきらなければいけなかったり、少ない予算で多くの要求に応えなければならなかったり、技術的に困難な課題を乗り越えなければならなかったりと、一筋縄ではいかないプロジェクトも少なくありません。

加えて厄介なのは、そこに時代状況が大きく影響すること。

今は、先が見えない不確実な時代です。社会や市場の変化、お客様のニーズの変化など、あらゆるものが目まぐるしく変化しています。そういった状況の中でも、プロジェクトを成功に導くための手法こそが、プロジェクトマネジメントなのです。

そしてまた、プロジェクトマネジメント自体も時代の変化を取り入れながら進化し続けてきました。(「はじめに」より)

そこでおすすめしたいのが、『PMBOKはじめの一歩 スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本』(飯田剛弘、奥田智洋、國枝 善信 著、翔泳社)。著者によれば、タイトルになっている「PMBOK®︎(ピンボック/Project Management Body Of Knowledge)」は「プロジェクトマネジメントの世界水準の教科書」といっても過言ではないものなのだとか。

特徴的なのは、これからプロジェクトマネジメントを学ぼうとしている人でも無理なく理解できるように、ケーススタディを用いながらわかりやすく解説されている点。つまりは「はじめの一歩」としてのアプローチを実現しているわけです。

きょうはそのなかから、基本中の基本を押さえたIntroduction「PMって何だろう?」内の「PM(プロジェクトマネジメント)って何?」に焦点を当ててみたいと思います。

プロジェクトとは

PMBOK®︎ではプロジェクトを、「独自のプロダクト、サービス、所産(つくり出されるもの)を創造するために実施される有期的な業務である」と定義しているのだそうです。

ここでいう「創造されるもの」とは、プロジェクトの成果物のこと。たとえば、工場などでつくり出されるような製品(有形)や、業務を効率よく進めるためのプロセス(無形)があるわけです。

また当然のことながら、ここで生み出されるものは1つとは限りません。(2ページより)

独自性があるということ

PMBOK®︎には「独自」ということばがよく使われているのですが、それは「定常業務」と一緒に考えると理解しやすくなるのだそうです。

定常業務とは、毎回、同じ作業を繰り返し行い、同じ結果を生み出すものです。それに対して、プロジェクトは、いつもとは異なること、または全く新しいことをやる中で、「独自性」を持って成果を生み出すことです。

同じプロダクト、サービス、所産を生み出すのではなく、プロジェクトの特性(例:場所、環境、状況、関係者)において独自性があります。(2ページより)

ここでその例として取り上げられているのは、工場で決められた仕様と手順でつくり出される「犬小屋」。こういうものに関しては、どのお店に行っても同じものを購入できるわけですが、このような「同じもの」をつくることが定常業務であるわけです。

一方、DIYの場合はどうでしょうか? 自分で犬小屋をつくるとしたら、完成イメージによって、できあがるものは変わってきます。たとえば金属でつくるのか、木材でつくるのかによってもまったく別ものになることでしょう。

質感や色も異なってくるはずですし、つくる人が変わればつくり方も変わり、違う犬小屋ができあがると考えられます。つまり、これはプロジェクトだということになるのです。

工場で決まった犬小屋をつくるのは定常業務ですが、お客様の新たなニーズに応えるため、いままでにないデザインの犬小屋をつくるとしたら、それはプロジェクトだということ。

皆さんも定常業務の中で起こった課題を解決するために、何か新しい取り組みを考えて、実行するといったことはあるでしょう。これがプロジェクトです。

つまり、定常業務のニーズはプロジェクトになります。この課題解決を目的に定常業務から切り離された新たな業務として、プロジェクトが発足します。そして、プロジェクトが立ち上がった後も、人や資源の多くは定常業務から供給されます。(3ページより)

このように「プロジェクト」と「定常作業」は、つねに関係性を保ちながら進んでいるわけです。(2ページより)

有期性があるということ

PMBOK®︎のプロジェクトに関する説明では、「有期性」ということばも出てきます。はたしてこれは、どういったものなのでしょうか?

たとえば新しいデザインの犬小屋を売り出すプロジェクトの場合、発売日までに商品企画や試作、生産などが終わっていなければなりません。そこには、絶対厳守の期限という「終わり」と同時に、プロジェクトを開始するという「始まり」があります。

「いつの間にか商品企画をやっていた」とか、「気がついたら試作品をつくり始めていた」というようなことはないわけです。

つまり、この「始まり」と「終わり」があるという事実が「有期性のある」ということ。

なお、ここで注意すべきは、すべてのプロジェクトが成功して終わるわけではないということだそう。そのことに関し、著者は以下の例を挙げています。

・プロジェクトの目標が達成された

・プロジェクトを進めるための資金援助が無くなった

・他の新しいプロジェクトのほうが効果があると判明した

(4ページより)

たしかに映画などでも、研究者が国から資金援助を断られてプロジェクトが終了し、悪の道に進むというようなシーンが登場したりします。

いずれにしてもプロジェクトというのは、その期間の長い、短いにかかわらず、「始まりと終わり」があるもの。その点を意識しておくべきだと、著者は主張しています。(3ページより)

本書を読み進めていけば、プロジェクトを成功させるために、「なぜするのか」「なにをするのか」「どのようにするのか」がイメージできるようになるはずだと著者は太鼓判を押しています。先々にあるプロジェクトを成功させていくため、読んでみる価値はありそうです。

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Source: 翔泳社