「どんなビジネス・どんな業界にも欠かせないのが営業」であると述べているのは、『今日からできる ゼロストレス営業』(河合克仁 著、すばる舎)の著者。
どんな組織も、現場の力、つまり“営業”で回っています。今後、世界が100%機械化・AI化されていったとしたら、もしかすると営業という仕事はなくなってしまうのかもしれません。
でもそれは、営業に求められがちな「売る」という役割がなくなるのであって、「お客さまの相談に乗る」「悩みに寄り添う」「直感的に合いそうな人を紹介する」など、売れる営業パーソンが行っていることは代用できないでしょう。(「はじめに」より)
こう断言できることには理由があるようです。著者自身が多くの経営者の方々と接してきたなかで、「どんな人材がほしいですか?」と聞くと、「売れる営業」と答える方が多かったというのです。
つまりこれから発展していく企業にとって、「営業ができる人材」はのどから手が出るほどほしいものだということ。そして、営業が組織の根幹となる大事な仕事である以上、「営業ができる人は食いっぱぐれがない」ということにもなるのでしょう。
しかしその一方、「営業をしたことがない」「営業に苦手意識がある」というような人が少なくないのも事実。そこで本書では、営業への苦手意識を克服し、「大得意!」とまではいかなくても自分のスタイルで無理なく、抵抗感なく営業できることを目標にしたプログラムを紹介しているのです。
きょうは第4章「決めたい時の営業フレーズ厳選7種」のなかから、2つをピックアップしてみたいと思います。
日割り計算で価格を検討してもらう「ペットボトル分割法」
名称からもわかるとおり、これは「商品やサービスの総額を日割りにしたら1日あたりどれくらいか」と考えてもらう方法。
たとえば「月額5000円で、安全でおいしいお水が飲めるんです」といわれるよりも、「1日あたり500ミリリットルのペットボトル1本分の金額程度なんですよ」といわれたほうが検討しやすくなるわけです。
もちろんそれは、「総額30万円の自由診療の歯科治療を提案する」といった場合でも同様だとか。
人生100年時代ですから、少なく見積もっても80歳くらいまではお元気で過ごされそうですよね。
仮に30年間で試算しましょう。
30年間で30万円の投資、1年間で1万円です。1年間は12ヶ月ですから、1万円÷12ヶ月/約840円になります。
1日ペットボトル1本どころか、1ヶ月に6本……言い換えれば、水筒を持つ習慣をつけるだけで、何気なくコンビニでペットボトルを買っていたお金が、健康の源になります。何より美味しいものを存分に食せて、そして外見も美しく過ごしていただけるようになります。
3年間で分割いただいたら、ちょうど1ヶ月1万円弱。まさにペットボトル1本分くらいのご負担で済みます。一度治療されれば、メンテナンスさえ怠らなければ、一生維持できます。ベストな状態を保つために、3ヶ月に1度、来院でメンテナンスにいらしても、年間で1万円ちょっとです。(118〜119ページより)
このような“ダメ押しのトーク”にすることもできるということ。
また、この方法でもうひとつおすすめできるのが、「携帯電話料金」と比較することだそう。携帯電話料金が生涯でどれくらいになるのか、考えてみるわけです。
たとえば本体代金や機種変更なども含めて月1万円程度払っていたとすると、1万円/月×12ヶ月×65年間(15歳〜80歳)×消費税10%=858万円になります。
なかなかの出費ですが、私たちは日常的にそういうことを意識しながらスマホを使っているわけではありません。日常においては、このような“意識していない大出費”が少なくないということ。そこで、そのことを利用して、
「人の健康に関しては、取り返しがつくことと、つかないことがあります。スマホは壊れたら機種変更ができますが、歯は一度失うと、二度と生えてきません。○○さんのスマホの料金と比べて、20分の1の価格で歯を守れるとしたら、いかがでしょうか?」(120ページより)
というような伝え方もできるという考え方。「価格がネックで決められない」というお客さまに対し、ひとつの視点としてお伝えしてみる価値はありそうです。(118ページより)
先延ばしは誰もハッピーにしない「意志確認法」
著者によればこれは、「必要なのはわかっているんだけど、いま決めるのはどうかなぁ…」と決断を躊躇しているお客様に有効な切り口。
「あとで決めるのではなく、いま決めませんか?」と促す方法だそうです。
人がなにかを購入するのは、
①「いまの状況を多少なりとも変えたいか」、②「結婚や出産、死別や引っ越しなど環境に大きな変化があり、変えざるを得ない」かのどちらか。
このうち②については緊急性が高まっているわけですから、動くしかないでしょう。たとえば、車が故障したから買い替える、引っ越し先の電化製品を買い揃える、体調を崩して病院に行くなどがそれにあたります。
しかし多くの場合、①については緊急性はないものです。明日決めても明後日決めても大きな差はないため、つい先延ばしになっていくわけです。そんな状況下で役立つのがこのトーク。決めかねているお客様に対し、「いまでない理由はなんなのか?」、ご本人の意思を確認するような話法だといいます。
とはいえ、無理矢理その場で買わせるために使うのではないようです。「本当は現状を変えたい(一歩踏み出したい/購入しようかと思っている)。“けれども…”」と、迷いのほうが大きいお客様に対し、次のような聞き方ができるというのです。
「1日1本のペットボトル代と言っても、タダではありません。同じお金で、他の学び、楽しくて豪華な食事、旅行にだって行くことができます。
よろしければ、改めて本日、この体験会に来てくださった理由や、○○さんがなぜ英会話の力を高めたいのか、お聞かせいただけないでしょうか?」(123〜124ページより)
こうして目的に立ちかえる質問をすることで、「実は…」と深いレベルで話し始めてもらえる可能性が高まるというわけです。
大切なのは、その話をしっかり聞き、相手のことばを繰り返しながら、深くうなづき、ときに自分の意見を伝えること。
そのようにお客様との関係性をつくっていければ、「やる・やらない」ではなく、「どのように始めるのか?」「どれくらいの期間で、どこを目指すのか?」といった建設的な話ができるようになるわけです。(122ページより)
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営業は、“人と人とのおつきあい”。「人とどう接し、その人のなにを見るか」ということに尽きると著者はいいます。
事実、ご自身も営業をするなかで成長し、尊敬できる先輩方と出会うことができたのだそう。そんなバックグッラウンドがあるからこそ、本書は説得力を感じさせるのでしょう。
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Source: すばる舎