リモートワークによって移動時間が減り、個人が自由に使える時間(可処分時間)が増えたこともあって、その時間を新しい分野の勉強に使う人が増えています。

しかし、いざ勉強しようと思っても、「なにから手をつければいいのかわからない」という状況に陥ってしまうことも少なくありません。

独学脳』(坂本 翔 著、ぱる出版)は、そんな方のために書かれた書籍なのだそうです。著者は、高卒のバンドマンから、独学で行政書士試験に合格したという異例の経歴の持ち主。

現在はSNSプロモーション事業などを展開する株式会社ROC代表取締役CEOであり、行政書士の肩書きも持っているのだとか。印象的なのは、自身がたどってきたプロセスに関する以下の記述です。

大学にも行かず、就職もせず、独学で取得した資格だけを持って社会に出た私は、おそらく壁にぶつかる回数が人よりも多く、その度に自分の頭で考えて乗り越えてきました。

その経験を伝えることで、救われる人がいるかもしれないと思い、本書を執筆しています。

大学に通って先生に教えてもらい、就職をして良い上司についた経験があるなど、スムーズに人生を送ってきた人からすると、非効率な人生に見えるかもしれません。

しかし、これからの時代、自分で答えが導き出せないものや、そもそも答えのないものに対して、人に教えてもらうのではなく、自分自身が向き合っていかなければならない場面が増えていくと思っています。(「はじめに」より)

だからこそ、時間を管理したり自分自身をコントロールしながら、必要なアウトプットを行い、自分の手で人生を最良なかたちにしていくべきだということ。

そうした考え方に基づいた本書では、これからの時代に対応していくことができる力を、「情報を収集する力」「決断して進む力」「時間を管理する力」「セルフコントロール力」「アウトプット力」だと定義づけています。

きょうはそのなかから、「時間を管理する力」に目を向けてみましょう。

独学はスケジュールがすべて

当然のことながら、独学を行う際には誰かが「こうしなさい」と道筋を示してくれるわけではありません。カリキュラムやスケジュールの構築から、日々のモチベーション管理も含め、すべてを自分で行わなければならないわけです。

したがって、「なんとなく」の状態では、その場で足踏みするような状態になってしまうことになります。そこで重要な意味を持つのが、スケジュールを立てること。

たとえば国家試験の場合は年1回であることが多いので、その試験日から逆算してスケジュールを立てることが大切。決まった試験日がない勉強の場合は、「いつまでにどうなっていたいか」という将来像から逆算し、まずは年間(場合によっては数カ月間)の長期スケジュールを立てるべき。

大まかでもいいので、とにかくまずは自分でスケジュールをつくってみることが大切だと著者はいいます。

たとえば12月が試験日の大まかなスケジュールを仮で作成したとしたら、次のようになるそうです。

○ 1〜2月:過去10年分の過去問を解きながら、試験に必要な範囲を選定する期間。

○ 3〜5月:試験範囲の中を、テキストでインプット、問題集でアウトプットを行き来しながら、一通り勉強する期間。

○ 6〜7月:再度、過去10年分の過去問を解く(力が付いて、1回目よりも点数が上がっていることを確認)。

○ 8〜9月:過去問の間違えた箇所を重点的に勉強しながら、過去問以外の問題を解く期間。

○ 10〜11月:市販の模試や予備校が主催する模試を受けて、間違った問題を中心に勉強する期間。

○ 12月:苦手な部分を中心に全体をさらって、試験当日のイメージトレーニングをしながら体調を整える期間。

(106ページより)

まずは、このような大枠のスケジュールでOKだそう。忘れるべきでないのは、独学において「とりあえずなにも考えずにやってみる」はNGだということ。

ビジネスにおいては瞬発力と行動力が功を奏することもあるでしょうが、独学はそうはいきません。したがって、スケジュールを立てることが大切なのです。(104ページより)

詳細な計画は週単位で立てる

日々の具体的なスケジュールは、週単位で立てるべき。1日単位で前日に立てるようでは、いくらでも修正が効きます。そのため、単に明日やることを決めるだけになってしまうわけです。

また月単位では、長くてリカバリーしづらく、あくまで目安にしかなりません。一方、年単位の場合は「大きくこの時期までに、ここまで終わらせる」というざっくりの計画は把握できますが、詳細までは決めづらいもの。

そういう意味で、具体的に計画でき、リカバリーも効く最も現実的な計画スパンは週単位ということになるというのです。

まずはそれぞれの曜日で、何時間ずつ独学にあてられるのかを計算。そのうえで、大枠のスケジュールに応じ、「このテキストの◯ページまで読む」「この問題集の◯ページまで終わらせる」など、週ごとに各曜日のスケジュールを埋めていくわけです。

ここで、重要なポイントをお伝えします。

週単位で計画を立てる際、必ず1日は「調整日」として、何も予定を入れない日を設けてください。

私が行政書士を独学で受験していた頃は、日曜日を調整日にしていました。

実は仕事の都合などで、どうしてもスケジュール通りに勉強が進まない週もあります。

そういう日が2〜3日続いてしまうと、「最近全然できていない」「ダメだ」というマインドになってモチベーションが下がってしまい、勉強が進まなくなってリタイアしてしまう可能性も出てきます。(109〜110ページより)

モチベーションを自分でコントロールしなければならない独学においては、モチベーションが下がってしまうことはなんとしてでも避けたいところ。そうならないように策を打っておく必要があるわけで、その策のひとつが、週1回の調整日を設けることなのです。

そうすれば、スケジュール通りに進められなかった分をその調整日に処理することができるので、翌週に持ち越すことがなくなるということ。もしスケジュール通りに進んで、調整日にすることがなくなったとしたら、その日を休日にすることもできるでしょう。

たしかにそうすれば、モチベーションを維持することができそうです。(108ページより)

これからの時代を生きていくために必要だと感じることがらを、著者自身の経験をベースにまとめた一冊。独学にチャレンジしてみたいという方は、ここからなんらかのヒントを探してみてはいかがでしょうか?

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Source: ぱる出版