『働くあなたの快眠地図』(角谷リョウ 著、フォレスト出版)の著者は「スリープコーチ」。聞きなれない名称ですが、さまざまな企業において、睡眠に困っている人が「自分で快眠になれる」ようにサポートしているのだそうです。
そうした活動を行うようになったことには、明確な理由があるようです。多くの人々に対して睡眠や食事のサポートを行ってきた結果、「働く人がいちばん困っているのは睡眠だ」という結論に至ったというのです。
食事に困っている人や運動不足に困っている人も一定数いるものの、睡眠に困っている人のほうが圧倒的に多いのだとか。
睡眠は食事や運動よりもはるかにメンタル状態や幸福度と強い相関関係があります。
糖質多めの食事も運動不足も健康にはよくありませんが、メンタルや幸福度が睡眠不調ほど下がることはありません。
しかし、睡眠が十分に取れていないと、メンタルは落ち込み、幸福度は劇的に下がるのです。(「はじめに」より)
ここ数年、「睡眠負債」ということばが広く知れ渡ってきたのも、それだけ睡眠の重要性を認識する人の数が増えたからなのでしょう。
ただし「睡眠負債」ブームは高級マットレスや高級枕、CPAP(睡眠時無呼吸症候群を改善する機械)、睡眠系サプリなどの流行にもつながってしまったため、「快眠になるためにはお金がかかる」というイメージがついてしまったことも事実。
しかし快眠は、お金をかけずに多くの人が快眠を手に入れることができるもの。たしかに、ナルコレプシーや重度の睡眠時無呼吸症候群の人など、自力で快眠を手に入れるのが困難な方もいます。けれども大半の人は、日常のちょっとした工夫や環境づくりだけで容易に快眠を手に入れられるというのです。
そこで本書では、楽しみながら、そして自分の睡眠の特性をつかみながら、“死ぬまで使える快眠のスキル”を公開しているわけです。きょうは第4章「デキるビジネスパーソンの夜の過ごし方」に目を向けてみたいと思います。
仕事モードのスイッチは入浴で強制的にオフ
入浴をシャワーで済ませる方も少なくないでしょうが、「快眠を手に入れる」という観点からすると、NG入浴しないことはなのだそうです。
なぜなら「仕事モード」のスイッチを強制的にオフにできることが、入浴の最大のメリットだから。
多くのビジネスパーソンの快眠サポートをしてきた著者は、睡眠に困っている人の根本的な問題は「仕事モード(緊張モード)のスイッチが切れないこと」だと指摘しています。
ゲームやネットサーフィンをするとリラックスできている感じがするかもしれませんが、実際にはすることが変わっただけで、仕事モードは変わらずオンになったまま。そのためなかなか寝つけられず就寝が遅くなり、朝に起きられなくなるということです。しかも、仕事モードを切り替えるためには相応の時間が必要。
そこで、厄介な「仕事モード」を強制的にオフにするための簡単な方法として、著者は「バスタブに浸かる入浴」をすすめています。入浴は「肌にお湯がふれる」「浮力作用による脱力」など強制的にオフスイッチを押してくれることが、千葉大学の研究で実証されているそうなのです。
人は深部体温がいったん上がって、それが下がる時に深い睡眠に入りますので、女性や帰宅後うたた寝して体温を下げがちな方は特におすすめです。
シャワーより半身浴、さらに全身浴のほうが水圧や浮力による作用が大きくなるため、精神の疲労も肉体の疲労もより回復することが分かっています。(130ページより)
注意すべきは温度を上げすぎないことで、著者がすすめているのは40℃〜42℃のお湯。基本的に42℃以上は交感神経のスイッチを入れてしまうため、熱いお湯やシャワーは目覚めに活用するのがいいそうです。(128ページより)
快眠最大の敵「夜のスマホ」は自力では99%やめられない
寝る前にスマホを見ることが睡眠によくないことは、いまや広く知られています。
にもかかわらず、寝る前までスマホを見ているという方は少なくないはず。もはやスマホは生活必需品なので仕方がないことでもあるのですが、意志力でやめられないのであれば、仕組みや機能を活用するべき。たとえば、いちばん簡単な方法として著者がすすめているのは「ナイトモード」の活用です。
指定した時間帯に画面が暗くなったり、白黒になったりする機能です。どこまで暗くするかにもよりますが、これだけでもスマホ依存が数分の一に低下して、やめやすくなります。
最も強力なのは「スクリーンタイム」といって、自分が指定した時間帯に強制的にロックがかかる機能です。私はこの機能を使ってスマホのマネジメントをしています。(134ページより)
さらにおすすめできる原始的な方法は、スマホを視界に入らないところで充電すること。多くの人はスマホが視界に入るだけで「見たい」という欲求にかられてしまいがちですが、それを避けることができるわけです。(132ページより)
寝る前に「なにを飲むか」で睡眠の質が決まる
寝る前には、なにを飲んでいるでしょうか?
睡眠改善のアンケートやヒアリングによれば、安定的に飲まれているのは牛乳だといいますが、実験によれば牛乳に睡眠効果はないそうです。むしろ、胃腸の強くない方は避けるべき。
また当然ながら、コーヒーやお茶などカフェインの入った飲み物を夜に飲むことにも注意が必要。個人差はあるもののカフェインの覚醒効果は約6時間なので、カフェインの効果が残っていると、すぐ寝られたとしても深い睡眠に入りにくいわけです。
では、何を飲めば快眠になるのか。私のおすすめはハーブティーです。
実際に夜寝る前に飲むものをハーブティーに変えた86%の方が「快眠に効果があると感じる」と答えています。
以前、某競技の日本代表チームの睡眠改善サポートをした際、全員睡眠スコアが改善したので「何が一番睡眠改善に効果があったと感じますか?」という問いに一番多かった答えが「ハーブティー」でした。(138ページより)
カモミールやローズが鉄板ですが、いろいろ試してみて「これだ!」と感じたハーブにするのがいいようです。(136ページより)
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忙しくても快眠になれるように、また季節や年齢、あるいは家庭環境が変わるなど、人生のさまざまなタイミングで活用できるようにつくられている一冊。心地よく眠れるようになるよう、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Source: フォレスト出版