ニューノーマルの、その先へ。社会全体が再起動に向かっている今、個人もこれまでの歩みを振り返り、未来に向けて自らの仕事や人生を改めて設計するタイミングではないでしょうか。

自分だけのニュースタンダードをつくろう」特集では、新しいステージへの挑戦を始めた人の物語や、自分らしいワークプレイスのつくり方、必ず達成できる目標設定術まで、キーパーソンに徹底取材して、自分だけのライフハックを見つけるヒントをお届けします。

第4回は、「じぶん流DIYちゃんねる」を運営する片井義二さんにインタビューしました。郊外のオンボロ平屋を150万円で購入し、自分たちの終の棲家としてリノベーションするストーリーをYouTubeで発信しています。

自分の居場所を自分でつくる、ニュースタンダードの究極の形をご紹介します。今回は後編です。

▼前編はこちら

築36年のオンボロ平屋を理想の「終の棲家」に建て直すサラリーマン | ライフハッカー[日本版]

築36年のオンボロ平屋を理想の「終の棲家」に建て直すサラリーマン | ライフハッカー[日本版]

作業は行き当たりばったり。考える前に動く

――前編では片井さんの原点ともいえる、セルフビルドしたログハウスの経験を伺いました。現在DIY中の鹿嶋市の平屋は屋根からトイレ、お風呂場という順に作業を進めていますが、何か理由があるのでしょうか?

片井 作業するたびに雨漏りするようじゃ困るので、まず屋根からやろうと。なんとなく「南欧風にしたい」というイメージだけは持っていたので、そんなデザインにしました。

5、6月の初夏シーズンにやったので、屋根の下地が熱を持ってものすごく熱かったことを覚えています。靴を履いていても足の裏が火傷しそうなくらいでした。

Screenshot: via「じぶん流DIYちゃんねる」

次にトイレをつくったのは、単純に作業中にトイレへ行きたくなったら行けるようにと考えたからでしたが、実は完成したけれど使えないんですよね。ぼっとんトイレから水洗式トイレにするには浄化槽というものを設置しなくちゃいけないんですが、浄化槽法という法律があり、素人が勝手に設置できないんです。

外注はしたくないので、自分で資格を取ろうかどうしようか悩んでいるのですが、とりあえず後で考えようと、問題棚上げにしちゃっています(笑)。

こんなに楽しいことを人に任せるなんてもったいない

――そのトイレやお風呂のDIY中、あちこち腐っていたり、シロアリに食われていたり、想定外のトラブルが絶えません。今のトイレの話も含め、正直外注すればいいのにと思ってしまうのですが、そうしない理由は何でしょうか?

片井 一言でいうなら、「こんな楽しいことを人に任せるなんてもったいないから」ですかね。

確かに色々なトラブルに見舞われて、お風呂の床下の土を掘り起こす作業なんて、はっきり言ってただの肉体労働です。自分でも「俺、なんでこんなことしてるんだろう」と思う瞬間がないわけではないです。

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Screenshot: via「じぶん流DIYちゃんねる」
Screenshot: via「じぶん流DIYちゃんねる」

でも、それを乗り越えて自分でやり遂げたときの達成感を知っちゃったんですよね。自分でつくったものって、それを使うたび、触るたびに「これは俺がつくったんだ」って思うんです。

北海道でつくったログハウスも、仕事から帰ってきて明かりのついた家を見るたび、「この家、俺がつくったんだ」って毎回すごい満足感を味わっていました。これはたまらないですよ。この達成感を知っちゃうと、絶対に人には渡せないって思います(北海道のログハウスの話は前編参照)。

――なるほど。それは確かに自分でやり遂げた人にしか分からない喜びでしょうね。「やってみたい」という気持ちも湧いてきますが、同時に不器用な自分じゃ絶対無理だろうという気持ちにもなります。

片井 そんなことは全くないですよ! 今は何でもインターネットで調べられるし、DIYや建築関係の動画もたくさんYouTubeに上がっているので、簡単に勉強できます。

安くて高機能な初心者向けの工具などもホームセンターでいくらでも売っています。現代は一昔前とは段違いにDIYのハードルが低くなっているんです。こんなに恵まれた時代はないと思っています。

体の疲れは寝れば取れるが、心の疲れは取れない

――やり方は学べる、道具も安く買える。確かにはじめるハードルは下がっているかもしれませんが、それだけの時間とエネルギーをかけるのは大変なことですよね? 片井さんは会社でも責任ある立場だと思います。仕事と両立するのは難しくありませんか?

片井 そこも考え方次第です。私のモットーは「体の疲れは寝れば取れるが、心の疲れは寝ても取れない」。確かに毎週末、船橋の自宅から車で1時間半かけて鹿嶋まで来て、一日中トンテンカンと肉体作業をするのは大変です。

でも、すごく楽しい、充実した時間でもあります。夢中になって好きなことに取り組むと、心の疲れが癒されるんです。脳がリフレッシュして、気持ちも切り替わるから週明けからガンガン仕事できる。

心がワクワクしているから、会社でもモチベーション高く仕事に取り組める。若手とのコミュニケーションもスムーズになって、チームメンバーも生き生きと働いてくれるようになりました。

リーダーがしかめっ面していたら、部下も気持ちよく働けないですよ。実際、このDIYをはじめてから、営業所の成績も上がりました

「素人でもできる」ことをYouTubeで伝えたい

YouTubeもそうです。動画なんてほとんどつくったことはなかったですが、北海道のログハウスをつくったときにまわりから「本にすればよかったのに」みたいなことをよく言われて。

当時はつくることだけに必死で、写真もろくに取らなかったので記録がほとんど残っていないのですが、せっかくなので撮影しておこうかな、と思ったのがきっかけでした。

それでDIY系のYouTubeを片っ端から見て、どういうタイプの動画があって、ヒットしやすいのかを自分なりに分析しました。私はプロではないので難しい技術系の動画はできません。DIYの楽しい雰囲気を見せつつ、素人でもできるんだということを伝えたいと思いました。

合わせて、ただDIYの様子を見せるだけでなく、1本筋の通ったストーリーとして見せることができれば、ほかのコンテンツとの差別化ができるんじゃないかと思いました。

それで、「都内から90分のプチ田舎に150万円で買ったずたぼろ平屋」を「社宅住まいのサラリーマンがDIYで定年後の家づくり」という方向性で配信をはじめました。

DIYのほうにお金がかかるので、動画にはあまりコストをかけられません。なので撮影機材は旧機種のスマホ(Galaxyの「note8」)、動画編集ソフトも「PowerDirector」という1~2万円で購入できる初心者向けのソフト(買い切り)を使っています。

それでも、やってみればそれなりに見てくれる人が出てきて、登録者数がどんどん増え、応援コメントもたくさんいただけるようになって。1本20分程度の動画をつくるのに何十時間もかかりますし、毎週に近いペースで更新しているので、本業にDIY、動画編集と大変なことは大変なのですが、応援が力になって続けることができています。

これも心の栄養になって、自分のエネルギーになっていると思いますね。

老後は盲導犬の老犬を引き取って穏やかにYouTubeを続けたい

――最後に、今後の活動、老後の夢について教えてください。

片井 ログハウスはとにかく必死だったので、ところどころ妥協しながらなんとか作り上げた家でした。なので、今回の家はゆっくりでもいいので自分の納得がいくまで作り込んでいきたいと思っています。

家が完成しても、南側に100坪ほどある広い庭があるので、そこにドッグランをつくって飼っている犬を走らせてあげたいと思っています。

実はこれは老後の夢と重なっていて、ゆくゆくは老いた盲導犬を引き取るボランティアをしたいと思っているんです。以前、仕事で盲導犬協会が運営している老犬ホームに行ったことがあって、そこで盲導犬をリタイアした老犬がたくさん暮らしているところを見ました。

盲導犬は、老いて盲導犬としての役目を果たせなくなったとき、引き取り手がなかなかいないらしいんです。

年を取っているから、引き取ってもすぐ死んでしまうかもしれない。亡くなった時のペットロスの問題もありますし、どうしても引き取ることに二の足を踏んでしまう人が多いんです。

それなら、私自身が老後に入ったとき、この家で老犬とおだやかに暮らしたい。そのときはYouTubeも「DIYしながら犬と暮らす」みたいな方向性にシフトして続けていければいいなと夢想しています。

鹿嶋市も、都心から離れてはいるけれど、車で2時間程度で東京にいける距離ですし、山も海も湖もあって、魚介類もおいしい。すごくいいところです。

田舎といっても近所にスーパーやホームセンターもあるし、山奥の秘境なんてことはありません。北海道出身の私にとっては「ちょうどいい田舎」という感じなんです。

今中学生の娘が「私もここに住む!」と言い出していて、「娘の部屋は想定していないんだけど」という感じですが(広いリビングと寝室、水回りだけの1LDKの間取りにする予定)、それはそのときに考えようかと思っています。人生、行き当たりばったりですから(笑)。

大好きな薪ストーブも自分でDIYした片井さん。炎を見つめる目が儚げ
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▼前編はこちら

築36年のオンボロ平屋を理想の「終の棲家」に建て直すサラリーマン | ライフハッカー[日本版]

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Photo: 小原啓樹 / Source: YouTube