肯定的な言葉で誘導し、否定的な言葉を共有し、肯定的な言葉で締めくくるというフィードバック・サンドイッチ。これを一度でも振る舞ってもらったことがあれば、建設的批判を行なう最低の方法であることに対し、あなたはきっと驚かないのではないでしょうか。
マネジメントレビュー誌に掲載された研究によると、ほとんどの場合、フィードバック・サンドイッチで否定的あるいは劣悪な行動を正すことができないそうです。
しかし、別々に使えたとしても、人は肯定的なフィードバックははっきりと覚えているのに、否定的なフィードバックは短時間のうちにすっかり忘れてしまう傾向があることを知っているでしょうか。
自分自身についてどのように信念を形成しているかに問題は潜んでいます。私たちは皆、自分の能力を過大評価する傾向があります。自分は頭が良くて、自分には才能があって、優秀だと信じたいのです。
なので、私たちは潜在的に、自分をよく見せる方法を探しているのです。
つまり、ボン大学の研究者が明らかにしたように、私たちは否定的なフィードバックをすぐに合理化し、忘れてしまうことさえも得意なのです。
望ましいセルフイメージと実際の行動の間に生じる緊張は、多くの場合、信念や認識を操作することで解決され、それによりセルフイメージが回復されます。
肯定的なフィードバックを受けたあとの信念は上向きに維持されますが、否定的なフィードバックを受けたあとの信念は大幅に「回復」し、フィードバックを振り返る度合いがずっと小さくなります。
結果として、否定的なフィードバックが信念に与える影響は時間とともになくなっていくでしょう。肯定的なフィードバックには、そのようなパターンが見つかりません。
このような環境下では、人は望ましいセルフイメージを脅かすフィードバックを抑制しようとする(または抑制することができた)ことが示唆されました。
この研究結果を「動機付けられた考え」と心理学者は呼びます。何らかの良いことを言われると、自分はそれを覚えています。肯定的なフィードバックはセルフイメージを強化するからです。
否定的なことを私に言ってみてください。無理に抑制しようとしなくても、そのうち忘れることでしょう。
なぜなら、自分が平均以下の人間だと1番思いたくないからです。
では、どのように否定的なフィードバックを伝えるべきなのか。
あなたは今、窮地に立たされていないでしょうか。リーダーとして社員を育てるのはあなたの仕事であり、責任です。結局は、あなたの社員が優秀であればあるほど、ビジネスはうまくいきます。
つまり、建設的フィードバックや少し厳しめの愛情が時には必要になってくるのです。
では、どうしたら動機付けられた考えから抜け出し、長期的な変化(それから発展)をもたらすことができるのでしょうか。
1. 必ず進歩状況を確認すること
フィードバックの直後に自信が「適切に調整される」という研究結果があります。もしあなたに、私が作成したプレゼンのスライドの10枚中9枚にミスがあったと言われたら、最初は少しいい加減だったことを受け入れます。
しかし、1カ月もすれば、次の2つのうちどちらかが起きます:
- あなたが間違っており、私の出来に問題ないと判断する(平均よりも上の効果)
- 会話したこと自体を私が忘れる
動機付けられた考えの影響を妨げる簡単な方法とはなんでしょう? それは、数週間以内に進歩状況を確認することです。
フィードバックを送ってから自分のパフォーマンスを評価しましょう。そして、あなたの評価を正当化する事実や数字、例を提示しましょう。
もし改善されたなら、それは良いことです。もし改善されなくても、その会話により、私の自信は適切に調整されることでしょう。
手短に言えば、一度受けた否定的なフィードバックは、永遠に残ると思ってはいけないことです。なぜなら、そうならないからです。
2. マイナスなことより肯定的なことを褒めること
もう1つの選択肢は、肯定的な記憶の力を活用することです。
研究によると、肯定的なフィードバックを受けた人は、そのフィードバック(「すばらしい! 」)だけでなく、そのフィードバックに付随する事実(「前月比で17%も売り上げが伸びた! 」)も覚えている傾向があることがわかっています。
繰り返しになりますが、プレゼン資料10枚のうち9枚は不正確な情報や誤字が所々見つかったとしましょう。
問題のある9枚を見せるのではなく、イラつきを抑えて、良かったほうに集中し、すばらしいと言ってみてください。それが見ている側とあなたにどう影響を与えるのかについて説明してください。
そうすれば、うまくいった時の気持ちよさを思い出して、またその気持ちを味わってみたいと思うはずです。
これは、「うまくやっているところを見つけて」現象であると考えてください。
たとえば、お客様からのクレームに対して、もっと辛抱強く対応してほしいと望むなら、そのような行動をとった時に褒めてください。
もし、苦労している社員の研修に時間をかけてほしいと言うのなら、そのような行動をとった時、褒めてください。
そうすれば、あなたの部下に対する認識だけでなく、同様に、自分自身に対する自分の認識や信念に沿うように生きたいと同じくらい思うようになるでしょう。
さらに、部下があなたの発言を記憶している可能性も高くなりました。それがこのフィードバックの核心なのです。
Source: SpringerLink, UNIVERSITÄT BONN/Originally published by Inc. [原文] © 2022 Mansueto Ventures LLC.