進行中のプロジェクトや締め切りのある記事に取り組む前に、デスクを離れたり、散歩に出てみたり、思いついたアイデアを何日かに渡って「寝かせる」ことがありませんか?

私はこれまで、そういう時間を「やるべきことを後回しにしている時間」と考えていました。確かに、単に先延ばししている時があるのも事実です。

けれども振り返ってみると、自分が最も優れた仕事を成し遂げられた時は「目に見えない仕事」を自分に許した後、ということもあるのです。

「目に見えない仕事」とは?

ここで言う「目に見えない仕事」とは、ジェンダー論でよく問題にされるような、価値を認められず、対価ももらえない、ジェンダーの違いとして片付けられてしまうような仕事を指しているのではありません。

私にとっての「目に見えない仕事」には、仕事を進めていくうえで不可欠でありながら、その進行具合を数値などでは把握できない、非常に貴重な行為や合間がすべて含まれています

それらは、会議中や電話中、ホワイトボードの前に立っている最中に進行する仕事ではありません。

何かを深く観察すること、人の話によく耳を傾けること、ぼんやりと考え事をすること、直感を受け入れること、会議が終わった後の課題や機会について生じた疑問を検討し、そうした疑問を違う視点から見てみること——。

これらはみな、目に見えない仕事です。新しいアイデアがひらめいた瞬間に、すぐ書き留めたり、キーボードを叩いてメモにしたりといった行為もそうでしょう。第4次産業革命が起きている今、こうした目に見えない仕事は、人間が仕事で何かを生み出そうとする過程において必要不可欠です

以前は、勤怠管理ツールでトラッキングしたり、タイムカードに記録したりした労働時間が評価されてきました。時は進んで21世紀に入ると、労働者を監視するソフトウェアは、指がキーボードを叩いている時間と叩いていない時間を記録するようになります。

私たち人間はもちろん、こうした監視を上手くかいくぐる方法を編み出しました。キーボードを1つか2つ、こっそりと叩いて、PCがスリープモードにならないようにしてから、再びスマホをスクロールする作業に戻るのです。

自らを体現するのが「本当の働き方」

では、こうした「ごまかしの働き方」ではない「本当の働き方」とは、一体どういうものなのでしょうか?

今の私たちは、職場で自らの感情や直感を共有するのが適切だとは考えていませんし、皆が似たような服装で身体を覆い隠しています。

けれども、そうした「仮の姿」で働くのは、もうやめなくてはいけません。結局、マネージャーが知っているのは私たちのほんの一部にすぎず、ありのままの全体的な姿ではないのです。

私が決して忘れられない1冊に、パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード氏が2005年に出版した自叙伝『社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア経営のすべて』(邦訳:ダイヤモンド社)があります。

シュイナード氏が実践していた、社員の自主性を重んじる「マクロマネジメント」の話を読んで、私は文字通り、身体がリラックスするのを感じました。

パタゴニアでは、社員が自分で働く時間を組み立てられるようになっています。波が高い午後には仕事を中断し、海に出かけていってサーフィンを楽しみ、その後の夕方5時から夜8時まで仕事をしても許されるのです。

本人さえ良ければ、それで構いません。仕事の都合に合わせて生活するのではなく、仕事を生活に溶け込ませるという考え方は、時代を先取りしていました。

でも、今は違います。求人情報サイトのインディードが2021年に発表したレポートで、全労働者の52%が燃え尽きたと感じていることが明らかになりました。新型コロナウイルスの感染が拡大する前の調査と比べると、その割合は9%増えています。

現在は、ハイブリッド型の働き方が可能な時代が到来しています。

私たちは、「会社に行かなくてはならない」となんとか頑張って出勤することを止め、この仕事をしたいと感じた時に仕事をできるチャンスを(コロナのおかげで)手に入れました

今こそ、仕事で自らを体現し、直感に従って行動する時です。私たちは現在、オフィスの物理的なあり方を再定義していますが、そうしたなかで私たちは、自らの心身と改めて結びつくことができるのです。

体現に必要なのは「身体の内面を意識する」こと

それでは、身体を実感し、好奇心を持ち、考えるための機会をもっと増やすには、一体どうすればいいのでしょうか?

仕事に関して言えば、私たちは、身体との結びつきが大きく失われてしまいました。

仕事で自らを体現するのは、「内受容感覚の原理」、つまり「身体の内面を意識する」ことだと説明するのは、『The Extended Mind: The Power of Thinking Outside the Brain(心を拡大する:脳の外で思考する力)』の著者Annie Murphy Paul氏です。

同氏はまた、身体は脳よりも理性的になりうることを示した研究を取り上げています。

働くことの意味を理解するために、改めて身体と結びつくことは、直感や好奇心、疑問を通じて創造性を発揮できる絶好の機会です

ただし、時速120kmで移動しながら疑問を持ったり考えたりはできません。従って、そうした時間を確保できるような環境をデザインする必要があります。

「目に見えない仕事」を可能にする3つの方法

1. 意欲を刺激する

チームメンバーにお金と時間を与えて、積年の問題を異なる視点から見られる人と出会えるように仕向けましょう。

そうした人は、普段は関わっていない組織や部門で見つかるかもしれません。日頃付き合いのない他者と交流すれば、これまでにない会話が生まれ、新たな疑問がひらめきます

こうしたことにゲーム感覚で取り組めるようにして、宝探しのつもりでチャレンジできるようにしましょう。

2. 「現場」に出る

アパレル業界で仕入れ販売に携わっていた時、私たちは意図的に時間を割き、自分たちの商品が売られている店舗で買い物をするようにしていました。

つまり、オフィスを離れて店舗に足を運び、商品を確認したり、商品に触れたり、店員と買い物客が商品をめぐってどのようなやりとりをしているのかを観察したりしていたのです。

同じことは、スリランカとポルトガルの工場で働いていた時にも目にしています。最も優秀なエンジニアは、席に座ってばかりいるのではなく、工場内を動き回っていました。

リーン生産方式ではこうした行動を、日本語を使って「現場」と呼んでいます。現場とは、「価値が生まれるところ」です。問題を解決するなら、現場に行くのが一番だというわけです。

3. 休憩をとる

休憩を、複数の異なる時間の塊と捉えてください。1日の間に休憩を挟みましょう。それと同時に、1年間の間にも短期間の休みを取ってください

3カ月に一度は、1人で過ごす休日を1日取りましょう。そして、その頻度を少しずつ増やし、1カ月に1回取るようにしていくのです。

仕事の手を休めてひと休みするように促すアプリやプラットフォームは、『Calm』や『Thrive Global』など、続々と増えています。

生産性を測る指標を逆にしたらどうでしょうか? 連絡が取れるようにするテクノロジーではなく、連絡が取れなくなる時間をさまざまに設定してくれるテクノロジーを増やし、目に見えない仕事のための時間を確保できるようにするのです


イノベーションとは、ある発明を、拡大可能な金銭的・社会的・文化的な価値へと変換したものです。

発明を拡大可能な価値へと変化させるうえで助けになってくれるのが創造性です。その創造性をもっと発揮できるよう、私たちは意図的にスペースと時間を確保しなくてはなりません

人間の創造性は、信じられないような最高のイノベーションに火をつけるきっかけになります。そこに至るまでの過程に欠かせないのが、目に見えない仕事なのです

Image: Shutterstock / Source: Amazon(1, 2), indeed

Originally published by Fast Company[原文]Copyright © 2022 Mansueto Ventures LLC.