クリエイティビティ(創造性)について考えるとき、どんな人を想像しますか?
苦悩する芸術家でしょうか? 世の中に対して先入観のない子どもでしょうか? ブレインストーミングをするグループや、アルコールや薬物で朦朧としながら素晴らしいアイデアを思いつく人でしょうか?
これらはすべて、私たちがクリエイティビティに関して自分自身に言い聞かせている思い込みを表しています。自分にはそうした思い込みがないというなら朗報です。あなたにもクリエイティビティはありますよ。
昨年、ある研究グループが、人々のクリエイティビティに関する思い込みについて調査しました。その結果、いくつかの「間違った」思い込みが非常に好まれていることがわかりました。
同論文は、「調査結果は、クリエイティビティをより効果的に支援できるようにするために、証拠に基づく知識をより良く伝達する必要性を強調している」としています。
換言すれば、多くの人は自分にはクリエイティビティは縁遠いと思い込んでいるということになります。しかし実際には、誰にとってもクリエイティビティは身近なものなのです。
迷信1:「クリエイティビティが発揮されるのは芸術だけ」
「クリエイティビティをどこに見出すか」という話をする前に、クリエイティビティを定義する必要があります。
もちろん異論はあるでしょうが、1つの言い方をするなら、クリエイティブなアイデアとは、斬新であると同時に、役に立つと他者によって判断されるものです。
また、別の定義では、クリエイティビティとは 「従来の考え、ルール、パターン、関係性などを超越し、有意義な新しいアイデア、形態、方法、解釈などを生み出す能力」とされています。
芸術や文筆など、従来から「クリエイティブ」とされてきた分野では、確かに新しい発想は歓迎されますが、クリエイティビティはそれだけにとどまるものではありません。
科学者やエンジニアが革新的な新しいアイデアを思いついたら、それはクリエイティビティです。契約交渉の際に、「こちらはそれを譲歩するから、そちらはこれを受け入れてください」というような、両者がハッピーになるような思いがけないアイデアを思いつくことも、クリエイティビティです。
迷信2:「クリエイティビティは右脳から生まれる」
タスクの性質によって右脳と左脳を使い分けるという考え方は、神経科学に基づくものです。ところが、そのコンセプトはずいぶん前に研究者の間では採用されなくなっており、世間がその由来をよく理解せずに繰り返し唱えているだけになりました。
ほとんどの脳機能は、脳の片側だけで機能しているわけではありません。また、クリエイティビティのような漠然としたものを、片側だけに限定することは不可能です。
さらに言えば、「左脳派」「右脳派」という区別は意味がありません。クリエイティブな仕事をするためには、脳の両側が必要であり、数学など左脳的と言われる仕事でもこれは同じです。
迷信3:「クリエイティビティは先天的なもの」
私たちはしばしば、クリエイティビティというと拷問を受けた天才や、クリエイティビティが原因で精神疾患を患っている人たちを連想します。
そのため、私たちはクリエイティビティを「一種の呪い」「ほとんどの人にはないもの」「もし持っていたとしても望まないもの」だと考えてしまいます。
反面、クリエイティビティは、生まれつきのものであり、子どもはクリエイティブだけれど、大人になるとほとんどの人がクリエイティビティを失ってしまうと考えられています。
しかし、どちらも本当のことではありません。
クリエイティビティに関する研究で、新しい有用なアイデアを思いつくことは、習得可能なスキルであり、実践することで磨きがかかることが実証されています。
1人の偉大な作曲家、シェフ、エンジニアの後ろには、同じ分野で趣味や仕事として働きながら、斬新なアイデアに事欠かない人が何千人もいます。受賞歴のある1人の偉大な作家の後ろには、そこそこの仕事をしている我々ブロガーもいるんです。
もっとクリエイティブになる方法
では、自分をクリエイティブだと思ったことがない人は、どうすればクリエイティビティを身につけることができるのでしょうか?
1つは、クリエイティブな趣味や活動に時間を割くことです。ある研究では、工芸品をつくる、音楽を演奏する、小説や詩を書く、新しいレシピをつくるなど、創造的なことをした翌日には、幸福度が高くなることがわかっています。
この結果は、たとえ針と糸を手にするたびにクリエイティブな発明や発展がなくても、こうした活動の時間をとるだけで効果があることを示唆しています。
もう1つは、散歩をすることです。運動が精神衛生に良いことはすでに知られていますが、特にウォーキングがクリエイティビティの向上に役立つという研究があります。
屋外に出ることで、目にするものや経験することが増え、身体だけでなく、脳も鍛えられます。
また、昔から言われている次のアドバイスについて、さまざまなクリエイティブな職業の観点から考えてみましょう。
そのアドバイスとは、「良い作品を制作するには、多くの作品を制作すべし」というもの。
私は執筆活動を始めた頃に、見出しやタイトルに行き詰まったら、10種類の選択肢を書き出しなさいというアドバイスをもらいました。3つ目のアイデアが完璧に思えたとしても、このエクササイズでは、さらに7つのアイデアを出し続けなければなりません。そして、多くの場合、後の方に出てきたアイデアの1つが、最終的にキープされます。
上記のアイデアのバリエーションとして、「30個の円」を用いるエクササイズがあります。
紙の上に小さな円を30個並べ、タイマーを3分にセットします。その3分間で、思いついたアイデアをできるだけたくさん円に書き込みます。
これにより、個々の円を見るだけでなく、思いついたことの共通点や相違点を振り返り、テーマを探すことができます。
自分にはどんなアイデアがあるのかは、目の前の紙に書いてみないとわからないことが多いので、まずはこのエクササイズでクリエイティブなアイデアを出して、結果を見てみましょう。
Source: ScienceDirect.com, Cambridge Core, Dictionary.com, The Guardian, npr, Taylor&Francis Online, Stanford University, Artwork Archive