『[図解&ノート]できるリーダーは、「これ」しかやらない 9割のマネージャーが知らない「正しい任せ方」』(伊庭正康 著、PHP研究所)の著者はここ数年、「いまのリーダーはがんばりすぎている」と思い続けているのだそうです。
会社からは高い目標を課され、チームの残業削減やコスト削減まで求められる。しかも常に人手不足なので、マネジャー業務のみならずプレイヤー業務も行わなくてはならない。
部下にもなかなか動いてもらえず、厳しく指導しすぎればパワハラ扱いされてしまう。その結果、リーダーである自分が残業や土日出勤で埋め合わせをすることになったりすることも…。
そんな「ひとりでがんばりすぎる」管理職の方々を、これまでたくさん見てきたというのです。また、著者自身もかつてはそんなリーダーだったのだとか。しかし、それが大きなきっかけにもなり、その反省をもとに、考えを180度変えたというのです。
自分がひたすら頑張るのではなく、メンバー全員がワクワクするようなチームを作る。そうすることによって部下が自発的に動いてくれるようにする。
そんなチーム作りを目標に、多くの優れたリーダーを観察し、共通するセオリーを導き出しました。
そして、それを実践した結果、「残業せずとも成果を出せるチーム」を作り上げ、営業リーダー、マネジャー、部長、社内ベンチャーの代表とどんどんステップアップしていくことができました。
(「はじめにーーできるリーダーは『正しい頑張り方』を知っている」より)
そうした経験から得たノウハウをもとに書き上げられたのが、2019年の発売以来、15万部を超えるベストセラーとなった『できるリーダーは、「これ」しかやらない』。つまり、その内容を「図解版」としてまとめたものが本書なのです。
図解のみならず、全著のエッセンスを素早く理解するための「入門書」としても注目に値する一冊。そこで、きょうは第2章「『部下に任せきれる』リーダーになるために」のなかから、いくつかの要点を抜き出してみることにしましょう。
リーダーに必要なのは「任せる覚悟」
「この人の可能性に賭ける」という覚悟と、「裏切られたら、そのときは自分が悪かったのだ」と受け入れる覚悟。任せるためにまず必要なのは、このふたつなのだと著者は主張しています。
ここで壁になるのが、「結果をすぐに期待する」という意識だといいます。経験の浅い部下が、最初から思ったとおりにできないのは当然のこと。
にもかかわらず「結果」を求めてしまうから、「任せられない」「自分でやったほうが早い」という考えになってしまうわけです。
期待すべきは、スグの結果ではなく、その人のノビシロです。その仕事を任せることで、どんな成長のきっかけを与えられるのか、それを考えて任せるのです。(32ページより)
逆にいえば、任せられないのは、目先の業務遂行のことしか考えていないから。しかしリーダーにはもうひとつ、「未来への投資」という重要な仕事があるのです。
したがって、どの仕事を部下に任せるかは、それが「部下が覚醒するきっかけ」になるかどうかで判断すべきだということ。(32ページより)
「新人」にも安心して仕事を任せる技術
「新人の4年目以降の成長は、最初の3年の経験で決まる。またそれは、彼らが『克服すべき厳しい経験』ができるかどうかで決まる」(36ページより)
著者はこう述べています。部下の成長を願うのであれば最初の3年、つまり新人のうちから少しずつ「チャレンジ」をさせる必要があるということ。
ただし任せるといっても、どうやったらいいのかわからず相談してきた部下に対し、「まずは、君が正しいと思うようにやってごらん」などと答えてしまうのはNGだそう。なぜならそれでは、部下を不安にさせてしまうだけだから。
もちろん、任せるという手段もあるでしょうがその際には以下の「5つのポイント」を押さえておく必要があるようです。
●新人に仕事を任せる「5つのポイント」
(1)リスクの低い「チーム(職場)の仕事」を積極的に任せていく。
(2)5W1Hの観点で「具体的な進め方」を伝える。(なぜ任せるのか、何をするのか、どのように進めるのか、いつまでに仕上げるのか、途中経過報告をするのか、わからない時はどうするのか等)
(3)伝えた後、「不安な点」「不明な点」がないかを確認する。
(4)念のため、本人に「やること」を復唱してもらう。
(5)その後、「できたかどうか」をお互いで確認し、良かった点をほめる。
(37ページより)
まずは「リスクの低いチーム(職場の仕事)」をピックアップしてみることから始め、それを任せてみればいいということ。
そうすれば、部下の成長のスピードが大きく変わるそうです。部下に1日も早く「頼れる人材」になってもらうためにも、試してみるべきかもしれません。(36ページより)
できるリーダーは「失敗」を語る
日ごろから多くの管理職の方々と接している著者は、「できるリーダー」が決まってやっていることのひとつとして「あえて、失敗を語ること」を挙げています。
「新人の時はさ、目標達成のプレッシャーでお客様視点が消えていたんだよね。お客様から叱られて、ようやく気づいたよ」といった感じです。
それを聞いた部下は、「今はすごい上司でも、昔はそうだったのか」と安心し、多少失敗してでも挑戦しようと思うのです。(38ページより)
もうひとつのコツは、わかっていることでもわからないフリをして、教えてもらう姿勢をとること。そして「なるほどねー」と感心すれば、部下は発言しやすくなるわけです。こういうちょっとしたことが、部下の可能性を伸ばしてくれるのでしょう。(38ページより)
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多くの場合、リーダーは孤独であり、相談相手は決して多くないもの。だからこそ本書を活用し、自分自身と対話をしてほしいと著者は記しています。そうすることでリーダーとしての能力が高まり、明日への活力も身につくというわけ。がんばりすぎるリーダーから脱却するために、参考にしてみる価値はありそうです。
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Source: PHP研究所