新入社員の頃も戸惑う毎日でしたが、なんというか、若さや勢いで乗り切れましたよね。でも社会人10年目ともなると、世間が見えてきて知識やスキルもついてきているはずなのに、その分焦りや迷い、不安も見えてきます。(「はじめに」より)

社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ 若手でもベテランでもない中堅社員の教科書』(河野英太郎 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、「社会人10年目」という節目についてこのように述べています。共感できる方も多いのではないでしょうか?

興味深いのは、そんな社会人10年目を思春期になぞらえている点。多くの悩みを抱える時期であると同時に、キャリア上のもっとも重要な時期でもある「社会人10年目前後」は、「キャリア思春期」だというのです。

この時期の過ごし方次第で伸びやかなキャリアを描く人もいれば、頑張っていても本人の思い描くキャリアから大きく外れてしまう人もいます。

「思春期」ゆえ、反抗したり他責にしたりするケースもあります。一方で自分にその矛先を向けてしまう人もいるでしょう。私の場合はどちらかというと後者でした。(「はじめに」より)

しかし、そんななかにも「こう考えると少し楽になりますよ」とか、ちょっとだけ工夫すると乗り越えられますよ」というようなコツがあるもの。

そこで本書において著者は「キャリア思春期」に差しかかった人たちに向け、自身の経験を軸とした「10年目以降の社会人生活に必要なノウハウ」を伝えようとしているわけです。

きょうはそのなかから、1章「スキルの壁」に焦点を当ててみたいと思います。

10年働いたのに、誇れる仕事がなにもない

「成し遂げたこと」なんて、

キャリアに一度あればいい。(18ページより)

キャリア10年目という節目には、「自分はこの10年になにを成し遂げることができただろう?」と考え、理想とは大きく異なる現実にぶちのめされたりもするものです。

しかし、たった10年で人に誇れるような仕事をできる人など、ほんのひと握り。20年にひとつ成し遂げただけでも立派であり、それどころか一生にひとつだったとしても充分人に誇れるものなのだと著者はいいます。

日本のコンサルティング業界を作り上げた人。老舗大企業のトップに上り詰めた人。出版業界に風穴を開けた人。政治家や起業家。オリンピックのメダリスト。プロのアスリート。

そんな人々とお話しする機会があるたびに、これまでのキャリアについて伺いますが、10年で何かを成し遂げた人は稀です。それどころか最初の10年など、鳴かず飛ばずならまだ良いもので、笑い物になっていた人だっているのです。

そしてその人たちに成功の秘訣を問うと、一様にこう答えます。

「目の前の仕事を、着実にやり遂げること」(20〜21ページより)

「自分はまだ、なにも成し遂げていない」と嘆く人が陥りがちな落とし穴は、やるべきことが目の前にあるにもかかわらず、別の「それっぽいこと」に気をとられてしまうこと。

ちなみに「それっぽいこと」とは、いま注目の会社に安易に転職したり、正論だけを掲げたり、うまくいかないことを人のせいにして仕事を放り投げたりすること。逆にいえば、そういった誘惑に流されなかった人が大成するということです。(18ページより)

漠然とした不安がある

「モヤモヤ期」こそ、

活動量を増やす。(30ページより)

誰しもキャリアの過程においては、「漠然とした不安」に苛まれることがあるもの。「自分なんて…」「将来はどうなるのだろう」「なんだか充実感がない」というような感覚ですが、あまりに漠然としているため、誰かに相談することもできなかったりします。

それは、冒頭で触れた「キャリア思春期」の悩みに近いともいえそうです。

おそらくはどんな人も、思春期にはモヤモヤした感覚を抱いた経験があり、それを自分なりの方法で解決したのではないでしょうか? あるいは、あとから振り返って「こうすればよかった」という思いを持っているかもしれません。でも著者によれば、そうした経験は「キャリア思春期」にも役立つもの。

みなさんは、思春期の悩みはどのように解決しましたか?

その解決方法は、今から振り返ってどうでしたか?

そして、今のみなさんであれば、思春期だった頃の自分にどんな言葉でアドバイスしますか?

私自身の思春期を振り返ってみると、最低限課されたこと、たとえば学校の宿題とか部活などは基本的にはこなしましたが、それ以上のことは、自分からは何もやりませんでした。そして時が過ぎ、いつの間にかモヤモヤをやり過ごした、というところです。

当時を振り返って、何かに向かってもっと踏み込めばよかった、と感じています。何かに打ち込む、読書や対話を通じて先人の知恵に頼ってみる、見聞を広めるようなことをする、という類のものです。(31〜32ページより)

そこで、次に訪れた「キャリア思春期」においては、その反省を活かしたのだそう。

ただ最低限のことをして時期をやり過ごすのではなく、行動し続け、前に進んでみたということです。

もちろん失敗もしましたし、一時的に無駄な投資に終わったと感じた時間やお金もたくさんありました。

しかし、今ではすべての経験が現在のキャリアに集約されて、毎日毎時間、役に立っていることに気づきます。

計画的・戦略的にいろいろトライしなくても、感覚に従って、思い立ったら動く、くらいで大丈夫です。

自分は迷走しているのではないか、という心配が常につきまとっていたのも事実です。ですが、振り返ると不思議なことにパズルのピースが埋まっているのです。(32〜33ページより)

大切なのは、不安を不安のまま過ごさないこと。なにも行動を起こさずに悶々と考えることは、不安を増大させるだけ。だからこそ、まずは一歩踏み出して、活動量を増やしてみるべきだということです。(30ページより)

本書で紹介されているのは、ちょっとした発想の転換や、視点の移動のヒントばかり。すぐに試すことができるため、習慣化していけば将来的に結果は大きく変わることになるだろうと著者は断言しています。社会人としてステップアップするために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

>> Kindle unlimited、いまなら2カ月99円で200万冊が読み放題に!

>>【最大80%オフ】Kindle本「新生活SALEキャンペーン」対象本はこちら

>> 「Voicy」チャンネルでは音声で「毎日書評」を配信中【フォロー大歓迎】

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン