「雑談が苦手」だという方は、意外に多いのかもしれません。『すごい雑談力 25万人が自信をつけた話し方・聞き方のルール』(松橋良紀 著、秀和システム)の著者も同じで、もともとはコミュ障の“売れない営業マン”だったようです。

ところが自分を変えたいという思いから心理学を通じた雑談術を学んだ結果、“売れる営業”になることができたのだとか。本書で「信頼関係を築くうえで重要なのは雑談力」なのだと断言しているのも、そんな経験があるからなのです。

どんなに時代がすごいスピードで変わっていっても、最も必要とされる能力は「コミュニケーション力」です。

テレワークになっても、実際には「業務の生産性や創造性を高める」「人間関係を深める」という理由で、雑談が求められています。(「はじめに」より)

ここでいうコミュニケーション力とは、相手の感情や気持ちをくみ取り、適切なことばを伝えること。それが、業務の生産性や創造性を高め合い、人間関係を深めることにつながるわけです。

これからはますます「雑談力」が重要となります。雑談力さえあれば、どんな業界でも生き残れるはずです。(「はじめに」より)

こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第1章「雑談のピンチを一瞬でチャンスに変える技術」に焦点を当ててみたいと思います。

いいたいことは「マジカルナンバー3」でまとめる

2001年、ミズーリ大学の心理学教授ネルソン・コーワンの研究によって、「人間が本当に記憶できるのは4±1」だということが明らかになったのだそうです。そこから、「マジカルナンバー4」、あるいは「マジカルナンバー3」ということばが広がっていったわけです。

つまり人間は、3つまでのことしか印象に残らないということ。とくに自己紹介をする際には、この点には注意が必要。

たとえば、プレゼンの基本は「ポイントを3つに絞れ」ということだといわれます。そしてつかみの部分では、次のようなトークが一般的なのではないでしょうか。

「今日、みなさんにお伝えしたいことは3つあります。1つめは弊社の企業理念、2つめは弊社の強み、3つめは弊社の今後の方針についてです」(68ページより)

このようなプレゼンが一般的なのは、3つ以上になると記憶に残りにくいから。つまり、マジカルナンバーの原則が生かされているわけです。(67ページより)

雑談ネタがないときは、チャンクダウンで情報収集

「チャンク化」とは、多すぎる要素を3つ程度のグループに分類すること。

たとえば11桁の携帯電話番号は、そのまま記憶しようとしてもなかなかうまくいかないもの。しかし、080-****=****というように3つのかたまりに分けると記憶しやすくなるわけです。

心理学でチャンク(chunk)は「かたまり」「グループ」を意味し、さらにそれらを小分けにしていくことを「チャンクダウン」といいます。これは、具体的に詳細を細かく聞いていくことにより、話を広げていく手法。

重要なポイントは、雑談を広げる際にこのチャンクダウンが有効だということ。なお、その際には5W3Hを使うといいそうです。情報を詳細に聞いていくだけで、雑談が可能になるからです。

【5W3H】

① When(いつ)

② Where(どこで)

③ Who(誰が・誰と)

④ What(何を)

⑤ Why(なぜ)

⑥ How(どのように)

⑦ How Many(どれくらい)

⑧ How Much(いくら)

(71ページより)

たとえば旅行の話題になったとしたら、以下のような8つの質問が可能。細分化された情報を聞くことができるわけです。

① 「いつ行ったの?」

② 「どこに行ったの?」

③ 「誰と行ったの?」

④ 「旅行先で何をしたの?」

⑤ 「なぜそこに決めたの?」

⑥ 「交通手段はどのように?」

⑦ 「どれくらいの期間行ってたの?」

⑧ 「いくらかかった?」

(72ページより)

通常の会話においては、さまざまなことを曖昧にしながら話を進めていくことが多いはず。

しかし雑談レベルの場合は、気になったことがあれば「チャンクダウン質問」をすることによって、より具体的で詳細な会話になるわけです。したがって雑談に困ったら、細かい情報を聞いていくのもひとつの方法なのです。(70ページより)

具体例を聞いて相手の情報を集める

なお、著者にはコンサルティングをしているとき、よく使う質問があるそうです。

「具体的には?」

「たとえば?」

「と言いますと?」

(73ページより)

これらのことばを利用して、話している本人が当たり前だと捉えている世界を具体的に言語化していく。そうすることで、ようやく気づいてもらえることも多いというのです。(73ページより)

どんな相手とも雑談できるようになれば、人間関係が大きく広がることは間違いなし。そればかりか、より充実した毎日を送ることができるようになるかもしれません。だからこそ本書を参考にして、雑談力を高めてみてはいかがでしょうか?

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Source: 秀和システム/Photo: 印南敦史