新型コロナの影響でリモートワークが一般化したとはいえ、「○時から○時まで働く」というように自分の時間を設定することは、現実問題として難しくもあります。家族が近くにいる環境であれば、なおさらかもしれません。
そこで注目したいのが、『すきま時間を味方につける 10分仕事術 』(滝岡幸子 著、同文舘出版)。中小企業診断士、経営コンサルタントである著者はここで、「まとまった時間がつくれなかったとしても、『10分』というすきま時間ならつくれる」と主張しているのです。
自身もそのことに気づいてから、パフォーマンスが向上したのだとか。そこで、そうしたライフスタイルや考え方を広めるために、「ひとり起業塾」を始めたのだといいます。
まとまった時間が取れない日には10分を活かす。(中略)長時間労働を必ずしもする必要はない。10分間のこま切れでも、やるべきことを進めていけば、仕事も家事も子どもの世話も両親のケアも同時進行できるとわかったのです。「すきま時間をうまく使うこと」「自分が動きやすい仕組みを、自分でつくること」が必要になるんですよね。
(中略)
仕事時間を減らしても、アウトプットは減らないと思います。私も「10分仕事」を意識するようになってから、作業効率が上がり、以前よりも余裕ができています。(「はじめに『自分の大切なこと』に時間をかける時代へ」より)
こう明かす著者の経験を軸とした本書のなかから、きょうは4章「やらなくていいことをやめる・減らす」に焦点を当ててみたいと思います。
「しない」引き算で、労働時間を短縮
私たちは日常のなかで、「しなくていいこと」を無意識のうちにやっているものではないでしょうか。たとえば、「昔はそれが当たり前だったけれど、いまはもうする必要がない」というムダな慣習や行動がそれにあたるはず。
したがって、「しなくてよいこと」を「しない」ようにすることは、業務改善の第一歩なのだと著者は述べています。
「しなくてよいこと」を探しましょう。探す際のヒントは、「面倒くさい」ことです。自分の役に立つことなら、面倒に思わずやるでしょう。
心のどこかに「この作業をする必要はあるのかな?」という疑問があるから、面倒に感じるのではないでしょうか。(95ページより)
改めて考えてみれば、仕事においても「しない」で楽になることは少なくないはず。だからこそ、しなくても仕事がまわることは思い切ってやめてみるべきだと著者は主張しているのです。(94ページより)
不得意な作業は、思い切って「もうやらない」
「不得意なことを得意にしよう」とか、「苦手なことを人並みレベルにしよう」というような努力ほど、ムダに時間を食うものはないと著者はいいます。多くの場合、十分な素質や「好きになる要素」が足りないから不得意になるのだとも。
「向いている分野」は誰にでもあり、それぞれ違うもの。また「好き」なことであれば、練習も楽しみながら積み重ねることができるはずです。
逆にいえば、それが「不得意なこと」であった場合、パフォーマンスは必然的に落ちることが考えられるわけです。だから、「不得意なこと」は思い切って他の人に任せたほうが数倍うまくいくということです。
・「手書き」が面倒なら、すでに必要な文章が印刷されたものを購入したり、フォーマットを活用する
・「人前に立ってプレゼンする」ことが苦手なら、文書や資料をわかりやすくつくって回覧する(わかりやすい資料を作成する人として認められる)
・「書類を作成する」ことが不得意なら、上手な人が作成したフォーマットを活用する。または、直接会って説明する
・飲食店を営むオーナーで、料理は得意だが、スイーツづくりはそれほど得意でないなら、ケーキづくりが得意な人を雇ったり、近所のケーキ店に卸売りしてもらう
・ある分野の経験が浅いなら、詳しい人に聞きまくる(仕事の達人がよくすること)
・料理の献立を考えることが苦手なら、いくつかのメニューだけでルーティン化。または、週に何度かいろいろなお惣菜を加える
(99ページより)
たとえば、このようなことが考えられるわけです。(98ページより)
完璧を目指さない。60%できたら進む
ひとり起業をしていると、完璧を目指しすぎて、けれどもなかなかうまくいかず、悶々としてしまうこともあるかもしれません。
しかし大切なのは、「完成度を高くしたい」という気持ちは持ちつつも、「60%できたら進む」「走りながら考える」という姿勢だといいます。
たとえば、書類はフォーマットに文字や情報を半分埋めた段階で見せる。アイデアは少し形になったら話してみる。イラストは、色をつける前に見てもらう。料理はもうひと味足りないけれど、形になった段階でメニュー名を考える。そうこうしているうちに、もうひと味が見つかることでしょう。(101ページより)
このように、複数のことを同時進行で進めるためには、すべてを「60%のでき上がり」、ときには「30%だけ」という状態で進めていくという考え方です。(100ページより)
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時間にはお金と同じ価値があるもの。「たった10分」ではなく「大切な10分」という考え方を意識すれば、思わぬ余裕や発展性が生まれると著者はいいます。
「自分の時間」を取り戻すためにも、そんな考え方に基づいた本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: 同文舘出版/Photo: 印南敦史