複数人で会話をするとき、なかなか自分から発言できなくて、結局はいつも聞くだけになってしまう。そのため、やがて疎外感に苛まれたり、相槌を打つことすら億劫になってきたりもするーー。
『複数人での会話がラクになる話し方』(みやたさとし 著、フォレスト出版)は、そんな人のために書かれた書籍なのだそうです。
著者は、「内気な性格そのままで人並みの会話力を身につける」というコンセプトのもとでコミュニケーション講座を開講しているという話し方講師。かつて自身が内向的なまま人並みの会話力を身につけることができたため、こうしたコンセプトに行き着いたようです。
いずれにしても、会話が苦手な内向的な人であるなら、複数人での会話の難易度がさらに上がるのは当然の話。人目が増えるほど、話す際の心理的な抵抗は大きくなるからです。
だから「大得意」になるのは難しいかもしれませんが、「無理なく輪の中に入って楽しく会話に参加する」くらいなら誰でもなれます。
コツはただひとつ。意識を「私」から「みんな」に向けることです。
「何か話さなきゃ!」ではなく、「みんなを楽しくおしゃべりさせよう!」と考えましょう。(「はじめに 複数人での会話が苦痛で仕方ないあなたへ」より)
そんな意識を持って本書で紹介されているノウハウを実践してみれば、「ただそこにいるだけの人」から抜け出すことができ、その場に欠かせない存在になることも夢ではないのだとか。
きょうは、そんな考え方に基づく本書のなかから第5章「複数人の中でも無理なく話すコツ」に注目してみることにしましょう。
「やっぱり私も話したい」は我慢しなくていい
聞き役として、みんなが楽しく会話できるようにサポートしていけば、会話の輪に入ることは決して難しくないはず。
しかしその反面、心のどこかで、「サポートばかりではなく、自分も話したい」と感じることだってあるかもしれません。話したいけれどうまく話せず、つい話すことを躊躇してしまうから悩むのでしょう。
とはいえ当然のことながら、「話したい」という思いを我慢する必要はありません。そもそも人は一般的に、他人の話を聞いているときよりも、自分で話しているときにこそ楽しさを感じるものなのですから。そういう意味では、基本的に聞き役であったとしても、適度に話し役に回ったほうが、さらに会話を楽しめるようになるわけです。
話すことも聞き上手に近づくひとつの手段です。
自分のプライベートな話をすることを自己開示と呼びますが、自己開示には「返報性の法則」というものがあるからです。
返報性とは、受けたものを返そうとする心の動きのこと。
つまり、あなたが自分の話をすれば、それが呼び水となってほかのメンバーも自己開示しやすい心境になるのです。(159ページより)
サポート役だからといっても、つねに聞き続ける必要はないのです。むしろ、適度に話すことも立派なサポートの一環だと考えたほうがよさそう。
また、いい聞き役は存在感も好感度も高いため、自分からアピールしなくても自然に話を振ってもらえるようになるといいます。(158ページより)
複数人の場でも自ら話す方法
いい聞き役になれば、話せる機会も確実に増えていくことでしょう。とはいえ、最終的には他人次第であるのも事実。消極的な人や気の利かない人ばかりのグループでは、なかなかパスが回ってこないということもありうるわけです。
そんなときは、自分から話すことにチャレンジしてみるべきですが、自分から話を切り出すことに難しさを感じている方も少なくないでしょう。
その理由としては、以下のようなことが考えられます。
・「何について話せばいいかわからない」という迷いがあるから
・「いきなりこの話をしたら不自然かな」という不安があるから
・「ほかに話したい人がいるかもしれない」という遠慮があるから
(162ページより)
こうした心理的な壁を越えるための方法として、著者は「誰かが話したあとに、自分も同じ話題で話す」ことを勧めています。それが、もっとも簡単に自分から話す方法だというのです。
話し役「今年のゴールデンウィークは、箱根に旅行に行くんですよ」
あなた「箱根ですか! それは楽しみですね」
話し役「ええ、じつは前から行ってみたかった美術館があって……」
(ひと通り話を聞いたあとに)
あなた「僕は残念ながら遠出する予定はないんですけど、大人買いしたマンガを一気読みしようと思っているんです」
(162〜163ページより)
たとえば、こんな具合。著者は誰かに話す機会を与えてあげる行為としての「パス回し」の重要性を説いていますが、こういう場合はパスを回す相手を「他人」から「自分」に変えればいいということです。
たしかにこの方法なら、直前に話していた人と同じテーマで話せばいいだけ。新しく話題を用意する必要はなく、「いま、この話をしたら不自然じゃないかな…」というような不安を抱く必要もありません。
しかも、「ほかに話したい人がいるかもしれないからやめておこうかな…」と遠慮しそうになったときは、先にパス回しをすればいいのです。
4人で会話しているなら先に自分以外の3人に話させて、最後に「私の場合は…」と話し始めれば、みんなこころよく聞いてくれることでしょう。(161ページより)
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著者の講座と同様に、本書においても「内気で引っ込み思案な人でも少しの努力で再現可能なノウハウ」だけを厳選しているそう。
そのため無理なく、①聞き役として場になじむ〜②質問役としてみんなをしゃべらせる〜③話し役として楽しく会話に参加する、というステップアップを実現できるというわけです。
コミュニケーション能力を高めたい方は、参考にしてみてはいかがでしょうか?
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Source: フォレスト出版/Photo: 印南敦史