お金に関するなんらかの不安を抱えているなら、まず「お金のなる木の苗」を買うべき。『お金のなる木を育てなさい』(小林昌裕 著、朝日新聞出版)の著者はそう主張しています。ここでいう「お金のなる木」とは、投資・副業のこと。
著者は、お金のなる木を20本以上育てているという投資家。しかし、もともとはお金の不安に追い詰められた普通のサラリーマンだったのだそうです。
私は、ほんの10年前まで、ただのサラリーマンでした。人づき合いが苦手で前に出ていく性格でもありませんでした。そんな臆病者の目線で自分の給与の上がり方を見ていたら、このままサラリーマンでいることがとてつもなく怖くなりました。
「毎月お小遣い制で自分が自由に使えるお金はほぼない」という上司の声にショックを受けました。どう考えても、私の未来にあるのは、幸せに生きるために十分な収入が得られる世界ではなかったからです。
だから、私はお金のなる木の苗を買いました。(「はじめに お金のなる木の苗を買いなさい」より)
基本的には会社から受け取る実(給料)があったため、自分のお金のなる木を育てる十分な時間と、上手な育て方を研究する時間が持てたのだとか。
やがてお金のなる木の小さな苗は少しずつ大きくなっていき、著者にお金の実を落としてくれるようになったというのです。そこで、さらに他の種類の苗を買って育てていったそう。
いまではお金のなる木のプランテーション(農園)を持ち、さまざまな実を収穫しているとのことですが、つまり本書はそうした自身の経験を軸として書かれているわけです。
きょうはそんな本書のなかから、「副業」についての考え方を明かした4章「必ずやってくる『想定外』に備える」に目を向けてみましょう。
うまくいかないときこそ一歩前へ
著者によれば、副業をはじめた場合、最初はうまくいったとしても「だいたいどこかでつまずく」のだそうです。しかし大切なのは、そんな最初のつまずきで、「あ、やっぱりだめだ」と逃げて離脱しないこと。
よく考えてみてほしいのです。
私たちが生まれてこのかたできるようになったことはすべて、練習の上に成り立っています。たとえば日本語です。生まれてすぐにペラペラと話せたわけではありませんよね。
(中略)
勉強もそう、本業である仕事もそう。
ならば、副業はどうでしょうか?
当然、副業だけが例外ということはありえません。(中略)
ほとんどの人は一から練習して筋力をつけて立ち上がり、一歩踏み出し、歩き出します。そして、最初にうまくいったという人でも、必ずといっていいほどうまくいかないときがあるし、うまくいっていてもなにかしらの課題は出てきます。(173〜174ページより)
それは、会社員にとっての本業にもあてはまるはず。任された大きなプロジェクトが絶好調だったとしても、そこにたどりつくまでには、なんらかの“越えるべき壁”があったに違いないということです。そして当然のことながら、副業もまったく同じ。
共通していえるのは最初からうまくいくことを目指さないこと。失敗は当然あります。お金持ちになってからでも当然あります。
うまくいったらその先に挑戦すべき課題は必ず出てくるものだということ。それを覚えておくだけでも、つまずいた時に落ち込まずに済みます。(174ページより)
もうひとつ失敗や壁を乗り越えるコツがあるとすれば、それは「うまくいった経験」を思い出すことだといいます。過去に想定外の事態をどう乗り越えてきたかを思い出してみれば、過去の自分がいまの自分に自信を与えてくれるというのです。(172ページより)
大切なのは、勘ではなく再現性
「どこで副業について習うのがよいですか?」と相談されたとき、著者は一貫して、「その人だけにできる特殊なことではなく、誰にでも再現できる手法を教えてくれるところで学びましょう」と伝えているのだそうです。
どんな業界にも天才的に仕事をこなせる人はいますが、そういうタイプはほんのひと握り。「うさぎとかめ」のかめのように、コツコツとひとつずつ学んで、成功している人からやり方を聞き再現していくことを重要視すべきだというのです。
基本的には、成功している人がトライアンドエラーを繰り返すことでたどり着いた「再現性のある手法」を学び、そのうえで自分のやり方を育てていくほうが圧倒的に成功しやすいということ。
また、私の周囲で大きな成果をあげ続けている人は「自分に対する自信」と「自分を疑う警戒心」のどちらも持ち合わせています。
自信がなければ周囲の意見に影響されて踏み出せなくなってしまいますし、疑う気持ちや警戒心がなければ裸の王様になってしまい、長期的には成果に結びつきません。
大切なのは、「うまい話」でも「努力が必要ない楽ちんな話」でもなく、再現性のある確かな手法をどう手に入れるかです。誰がやってもほぼほぼうまくいくしくみを知ることは確実に成功への近道になります。(179ページより)
さらには、そうした「うまくいく再現性の高い方法」もたくさんあることを覚えておくべきだと著者はいいます。
「誰かのうまくいった方法」を鵜呑みにして真似するのではなく、「これならうまくいくよ」といわれたから真似るのでもなく、「この方法なら自分にもできて、しっくりきて、再現性がある」と思える方法を自分で選択することが大切だという考え方。
ただし、その“選択の仕方”は失敗を繰り返しながら身についていくものでもあるでしょう。そのため、選択ミスについて自分を責めたり、落ち込んだりする必要は一切なし。
自分に合う再現性の高い方法を選択し、あとは、自分の力でその方向に向かって歩き続けることが必要なのです。(180ページより)
自分に合ったやり方で、自分がやりたいと思えたことを、自分のペースで続けることができれば、ほとんどのことは実現できるということです。(178ページより)
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著者は過去の自分を振り返り、「本当に、あのときお金のなる木の苗を買ってよかった」と実感しているのだそうです。そんな思いを軸とした本書を参考にしてみれば、将来的には著者と同じような安心感を得ることができるかもしれません。
Source: 朝日新聞出版/Photo: 印南敦史