やりたくないことがあると、必ずと言っていいほど気分が悪くなるものです。罪悪感や失望感がどんどん強くなるからです。

どうしても途切れてしまう記録、どうでもいいバッジ、リラックスしようとしていたのに邪魔してくる通知。ああ、これって参加者の意欲をかき立てるためにゲームの手法を応用するゲーミフィケーション(ゲーム化)です。

ゲームが「指標」をもつのは現実を模倣するため

ゲーム化すると良くない理由を語る前に、ゲームがなぜそのような仕組みになっているのかを説明します。

ロールプレイゲームでは、現実の経験の比喩として「経験点」を獲得します。現実のお金の概念を模倣してフェイクマネーを稼ぎます。ゲームでクエストが与えられるのは、現実の世界で、人間は目標に向かって一生懸命努力するからです。

ゲームにこのような指標や構造があるのは、ゲームが現実の生活を模倣しようとしているからです

「実生活」における健康管理のゲーム化は悪影響?

実生活では、偽の指標は不要であり、実際に経験を積んでいるので、XPを積む必要もありません。本物の冒険(クエスト)をしているので、偽の冒険は必要ありません。

500ポンドのデッドリフティングができるようになるとか、次に医者に行ったときにコレステロール値が改善されているなど、健康習慣には実世界での報酬や結果があります。

では、健康に関する習慣のゲーム化が裏目に出る例をいくつか見てみましょう。

米LifehackerのスタッフライターであるStephen Johnsonさんが、この最も一般的なゲームの戦術をこちらの過去記事で説明しているので、まだチェックしていないなら一読の価値ありです。ゲーム化はたいてい単なるごまかしであり、多くの場合、メリットよりもデメリットのほうが多くなります。

ゲームの指標を追うのではなく、自分の習慣がもたらす現実の結果に注目したらどうでしょう。その意味を以下に説明します。

完全無欠の連続記録にこだわるより「一貫性」を目指す

明確な目標に向かって1日も休まず努力していくことにこだわると、それがうまくいっている時には楽しめますが、1度でもつまずくと大きな失望感につながります。1日も休まずに努力を続けていた理由より、連続することに集中してしまいがちだからです

私がここで主張したいのは、もし連続をキープしたいという罠にはまってしまったら、連続することで破滅させられる前に、自分でそれをやめるべきだということです

どんな健康習慣も、毎日欠かさず行なう必要はありません。休息日は肉体的にも精神的にも必要であり、身体にとっては9,999歩も1万歩も違いはありません。

身体にとって重要なのは、長期的に一貫性を保つことです。1回も欠かさず続けることが重要なのはアプリ開発者だけです。Apple Watchは、なぜユーザーが毎日12時間立って過ごすことを望むのでしょうか。

それは、起きている間中、Apple Watchを装着してもらうためです。「立って過ごす」という目標がアプリにプログラムされているのは、ユーザーでなくAppleに利益をもたらすからです。

「習慣」とは、瓶の中にコインを貯めていくこと

では、一貫性はどうやって確立すればいいのでしょうか。それは、自分のトレーニングや習慣をカレンダーやトレーニング日記に記録することです。私は筋トレを毎日続けてする方法をあらためて発明しようとしているわけではありません。

最初の週は7回、次の週は6回、そして休暇を除いた残りの期間は毎週4~5回筋トレ習慣を実践していたとしたら、非常に一貫性があります。(日単位ではなく週単位でカウントしてくれるPelotonアプリに拍手! )

この場合、連続性維持管理アプリはユーザーが失敗したと考えるでしょう。しかし、もしこれがワークアウトだったら、1年の終わりには、はじめた時よりもずっと健康で、筋力がつき、身体が柔軟になっているでしょう。

また、歯磨きをした日だったら、歯医者代が大幅に減った状態で1年を終えることができるでしょう。これで言いたいことはおわかりでしょうか。

私は、習慣とは、カレンダーに連日「済」の印をつけていくことでなく、瓶の中にコインを貯めることだと考えたいと思います。毎日、野菜を食べたり、ランニングをしたりすると、1枚コインを瓶に入れていると考えるのです。

1円の日もあれば25円の日もあり、何もない日もありますが、いずれにしろ瓶は満たされていきます。

フェイクでなく、本物の競技で競う

アプリの中には、ほとんど知らない人たちのグループに参加して、絵文字で励まし合ったり、リーダーボードで対戦したりして、コミュニティの力をテコにしようとするものがあります

しかし...そのリーダーボードにいる人たちのことを気にする人はいません。対戦相手として相応しくなければ、勝とうとは思わないでしょう。また、本当の友人とでなければ、ハイタッチしたところで、どうでもいいと思うのではないでしょうか。

では、本物のチームメイトやジム仲間がいたらどうでしょう? 本物の競技会に申し込んだらどうでしょう? これにはいろいろな形がありますが、いくつか例を挙げてみましょう。

  • 地元の5kmマラソンに出場して、自分の年齢のグループの上位X%に入ることを目指す。
  • パワーリフティングの大会などでは、大会当日に最高のトータルスコアを出すことを目標にする。
  • レクリエーション・スポーツ・リーグに参加して、ソフトボール、サッカー、ピックルボールのチームのメンバーと知り合いになり、お互いに勝ったり負けたりして喜んだり悲しんだりする。

クエストでなく、ゴールを目指す

ゲーム化は、過大評価されたS.M.A.R.T.ゴールのフレームワークのように、結局は他人から自分のゴールを押し付けられることになります。デジタルバッジを獲得したいと心底思う人などいません。

では、デジタルバッジのためでなければ、なぜジムに入会したのでしょうか?

おそらく、健康になりたかったからではないでしょうか。では、あなたにとって健康とは何でしょう。一定の重さのスクワットをすること? 途中で休憩せずにハイキングすること? 車道の雪かきをしても、次の日ずっとソファでへたりこまずに済むこと?

何であれ、それがあなたの大きな目標です。

次に、いくつかの小さなプロセス目標が必要です。意味のある目標です。500ポンドのスクワットをする前に、200ポンドのスクワットをしなければなりません。スクワットを向上させるためには、優れたトレーニングプログラムに沿って行なわなければなりません

つまり、プロセス目標は、以下のようなものになるはずです。

1. 良いトレーニングプログラムを見つける。

2. そのプログラムを実行する。

3. プログラムを予定通り終了する。

4. スクワットの最大値を再度テストする。

そのためには、連勝やバッジ、チェックインは必要ありません。本当のゴールを追いかけられるようになるために、偽のゴールを追いかける必要はありません。

本物を追いかけて、デジタルの仲介はカットしましょう。

>>もっと「習慣化ガイド」の記事を見る

Image: Shutterstock