筆者(鈴木)の目下の悩みは、「書く文章が長い」ことです。
ウェブメディアの記事は、スマホの小さい画面で読まれることが大半。しかも、通勤電車や仕事の合間に、さくっと読むスタイルが主流です。
そのため、記事全体のボリュームもそうですが、一文一文がコンパクトであることが書き手に求められています。
今書いた上の一文で50字。肌感覚でも「ちょっと長い」と思われる寸前の文字数だなと感じました。
短いは正義、長いは残念
たたみかけるように、「一文60字という文字数は、読みやすさを左右する境界線」と言うのは、田口まこさんです。
田口さんは、ベテランのコピーライター。短くて刺さる文を生み出すことにかけては、プロ中のプロ。著書『短いは正義 「60字1メッセージ」で結果が出る文章術』(ダイヤモンド社)では、冒頭で次のように記しています。
「長すぎて、読みたくない!」と投げ出したくなるような、読み手を疲弊させるメールや企画書、商品資料は身近にあふれています。あなたも、そんな長く煩わしい文に出合ったことがあるでしょう。
もしかすると、ふだん自分が長い文を書いていることに気づいた人もいるかもしれません。
ダラダラ長文は、確実に仕事の評価を落とし、結果を遠ざけます。
では、どうしたら長文で書いてしまうクセを改善できるのでしょうか。本書から、そのあたりをちょっと紹介していきましょう。
一文一意でスッキリ短く
田口さんは、最初の一歩として「60字を超えないよう意識」せよとアドバイスしています。
具体的なコツの1つが、「一文一意」。1つの文の中に、伝えたいメッセージ・情報は1つにとどめるという意味です。
例えば、伝えたい情報が3つあるとしましょう。それを1文に納めようとすると、「Aであり、Bであり、Cでもある」などと、どうしても長くなります。これを「Aです。Bです。Cです」と3つの文に小分けすればいいわけです。
また、名詞・代名詞で文末を終える体言止めを適宜活用するのもポイント。「です・ます」の文字量が減らせるだけでなく、文章全体にリズムが生まれるメリットがあります。
田口さんは、一文一意と体言止めで改善した例を挙げています。まず、改善前の文章がこちら。
このマスカラは、髪を内側からケアするヘアトリートメント「〇〇」の美髪成分を贅沢に配合し、まつ毛をボリュームアップしながら、しっかりケアしてくれる1本で2役のアイテムなんです。(88字)
改善したら以下のとおり。スッキリしましたね。
このマスカラは、人気のヘアトリートメント「〇〇」の美髪成分を贅沢に配合。まつ毛をしっかりケアします。さらに、ボリュームアップも叶える、1本で2役のアイテムなんです。
「ていねい沼」から抜け出す
もう1つ、文章を短くできる秘訣が「文の贅肉を徹底排除」です。田口さんによれば、「想像している以上に、文には贅肉がついている」そうです。ここにメスを入れれば、ほどよく締まった文章のできあがり。
例えば「~していただき」「~させていただけますと」といった、「いただき」表現。どうしても、これを使った丁寧文にする必要があれば別ですが、基本なしでOK。
出張に行かせていただくため、欠席させていただきます。
このように、メール文でもよく見かける「いただき」文。「出張のため欠席します」と、「いただき抜き」処理するだけで、まったく変わります。
そのほか、「~てあげる」や「~していただいてよろしいでしょうか」など、本書で「ていねい沼」と呼ばれる表現は削るが吉。どしどし削っていきましょう。
時間をおいて必ず推敲する
直接的なテクニックとは別に、田口さんが強調するのが、「推敲」の重要性です。
多くの文章のプロが、1~3日ほど時間をおいて推敲します。これは、自分の書いた文章を客観的に見るためです。
とくに企画書やプレスリリースなどは、少なくとも一晩おいてから推敲すべきです。
書いた直後は「できた!」という安堵と達成感で、読み直してもミスに気づきにくい精神状態です。それが一度寝ると、まっさらな気持ちで文章を見直せます。
これはまったくそのとおりで、筆者も作成した原稿は、必ず翌日に推敲します。
この習慣のおかげで、文章の問題点を発見しやすくなりました。メールやSNSのメッセージも同様。よほど急ぎの返信を求められていなければ、1日寝かせます。
さて、田口さんは推敲時のポイントとして、「プリントアウトして紙で読み直す」ことも挙げています。
これは、「紙のほうが、情報を理解する前頭前皮質の働きがよくなる」という脳科学的な理由が1点。さらに、「より読み手に近い気持ちになれる」という理由も。くわえて音読すれば、読みづらい箇所が見つけやすくなって、なお効果的だそうです。
『短いは正義 「60字1メッセージ」で結果が出る文章術』で指南されているのは、これだけではありません。
「読み手の心に響く数字入り文章の作り方」や「漢字で重さを演出する」など、読ませる文章のコツが盛りだくさん。SNSから企画書まで、自分の文章力をワンランクアップさせたい方は、一読の価値ありです。
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Source: ダイヤモンド社