資産運用でよく目にするのが、「年率リターン◎%」という表記。1年あたりのリターンという意味です。分かりやすい数字のようですが、その定義をしっかり説明できますか?
「リターンは高ければ高いほど良い」と早合点すると、思わぬ落とし穴があるため注意が必要です。今回は、投資初心者が覚えておくと役に立つ「年率リターンの目安」を解説します。
リスクとリターンの関係を知る
まず、リスクとリターンの関係を整理しましょう。
リスクとは、リターンの振れ幅を指します。危険という意味ではありません。リスクが大きいとは、大きな収益を得る可能性も大きな損失が出る可能性もあるということ。
一般に、リスクとリターンは比例します。低リスクでハイリターンの金融商品は存在しません。元本保証で毎月5%のリターンを謳うような金融商品は「詐欺かもしれない」と疑いましょう。(参照)
1. 金融庁が想定している低リスク商品は年率リターン3%
「ハイリスク商品は怖いから、低リスク商品で運用しよう」と考えた場合、期待できるリターンは何%でしょうか。金融庁は、低リスク商品の年率リターンを3%と想定しています。
例えば、現在35歳の人が65歳までに老後資金を2000万円準備したいとします。
年率リターン3%の低リスク商品で運用する場合、計算上の積立額は月3万4321円。毎月3万4321円を積み立てて年率リターン3%で運用すれば、30年で2000万円になるという計算です。
条件を変えて試算したい場合は、金融庁のサイトで簡単に資産運用シミュレーションができるので、気になる人は活用してみてください。
2.日本株や海外株式は?
実際に投資した場合、年率リターンは何%でしょうか。過去20年間の平均リターンを投資対象ごとに分けて見てみましょう。高い順から並べると、
海外株式 +9.1%
国内株式 +5.7%
海外債券 +5.6%
国内債券 +1.7%
*集計期間:2001年7月末~2021年7月末/海外は米国を含む全世界が投資対象
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
リターンだけを見れば、海外株式に投資しようと思う人が多いでしょう。実際に「投資するなら海外株式一択」という主張もマネー記事でよく見かけます。
ただし、あくまで平均であり、平均リターンが高い投資先は、価格のブレ幅が大きくなることに注意してください。
3.個人向け国債は元本保証で年率0.05%の金利保証
お金を増やしたいものの、元本割れが心配な人は多いでしょう。現在、大手銀行の普通預金金利が0.001%、ネット銀行でも平均金利は0.001%~0.02%ほど、ある程度の価格のブレを覚悟し投資しなければ資産を増やすことは困難です。
ただし、銀行預金にほんの少し色を付けたリターンで満足できるのであれば、個人向け国債という選択肢もあります。2022年3月現在、個人向け国債は最低年率0.05%の金利を保証しています。元本は保証されるものの、発行後1年は原則中途換金ができません。数年間使う予定のないお金で購入しましょう。(参照)
厳密には違いがありますが、ここでは投資信託のリターン(利回り)と国債や預金の金利は同じリターンと考えてもらってかまいません。(参照)
4.期間によって数値が変わる点に注意
年率リターンとは、対象期間の平均収益率のこと。この対象期間はデータの作成者によって意図して選ばれていることを知っておきましょう。
同じ投資信託でも、リーマンショックを含む場合と外す場合では3年間の平均リターンは大きく異なります。ほとんどの場合、リーマンショックを除く期間の平均リターンの方が高くなるでしょう。金融商品を良く見せるために、わざと運用成績の低い期間をデータから外している場合があります。
金融商品の年率リターンを比較する際には、以下に注意してみる
- 複数の金融商品を比較する際には、対象期間を揃える
- 3年以上の長期間で見る
- リーマンショックやアベノミクスといった、対象期間中のイベントを把握しておく。
平均リターンはあくまでも過去の数字です。将来の予測として参考になるものの、利益の確約ではありません。
年率リターン◎%と聞くと、毎年着実に増えるイメージを持つ人は多いでしょう。しかし実際の運用は、上がったり下がったり、山あり谷ありです。
低リスク商品を選んだ場合でも、収益がマイナスになるタイミングがあります。短期的なマイナスには必要以上に神経質にならず、長期目線で見守りましょう。
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Image: Shutterstock
Source: 日本証券業協会(1,2),金融庁,三井住友トラスト・アセットマネジメント,財務省