コロナ禍で厳しい状況が続く宿泊・旅行業界で、「観光DX」と呼ばれる旅行サービスのデジタルトランスフォーメーションが本格化しています。

多言語同時翻訳ツールを提供し「言葉のカベ」の解消に挑むスタートアップ「Kotozna(コトツナ)」の活動もそのひとつ。

2022年3月16日に行なわれたメディア向けオンライン説明会では、JTBとの協業により開発されたコミュニケーションシステムや、観光客向けの多言語対応を可能にする新たな取り組みが紹介されました。

テクノロジーの力で「言葉のカベ」に挑む

「これまでテクノロジーで社会課題を解決することをミッションとしてきた」と語るのは、Kotozna株式会社 代表取締役の後藤玄利さん。

「言葉でつながる」という社名の通り、「Kotozna」では多言語コミュニケーションツールやサービスを通じて「言葉のカベ」を解消することで、地域・地方のインバウンド観光をサポートしたいと話します。

「訪日観光客が日本で困ることとして真っ先に挙げるのが“言葉のカベ”。

日本の地方にはすばらしい観光資源があるのに、コミュニケーションの難しさが観光のハードルとなっています。イノベーションが進む機械翻訳を活用すれば、地方経済をインバウンドで底上げできるのではないかと考えました」(後藤さん)

多言語コミュニケーションをスマホで叶える「Kotozna Chat」

2018年9月にローンチされた「Kotozna Chat」は、109言語の音声/テキスト入力に対応する多言語同時翻訳チャットアプリです。

アプリを立ち上げて自分のQRコードを相手にスキャンしてもらうと、すぐにチャットルームが開き、LINEのような感覚でやり取りできます。

メッセージはお互いのスマホの設定言語に自動で翻訳されるので、それぞれ母国語を使ってシームレスにコミュニケーションができるのです。

ホテルとゲストの言葉のカベをなくす「Kotozna In-room」

Image: Kotozna

今回の発表のメインとなった「Kotozna In-room(コトツナ インルーム)」は、この「Kotozna Chat」をベースに、Kotozna社とJTBが宿泊事業者向けに協働開発したシステムです。

「Kotozna In-room」の操作方法はシンプルで、ゲストは客室などに設置されたQRコードを自分のスマホでスキャンするだけ。

施設案内や周辺の観光情報などが自分の言語で表示され、施設内のどこからでもホテルスタッフと母国語同士でチャットができます。ゲストが個人情報を入力したり、アプリをダウンロードする必要はありません。

ホテル側の画面ではメッセージが日本語で表示され、そのまま日本語で返信できる(ゲストには母国語で返信が表示される)ので、英語が話せない日本人スタッフにとっても心強いツール。チャットルームを介せば「言葉のカベ」に阻まれずに、細やかな“おもてなし”をゲストに提供できるのです。

複数の機械翻訳を組み合わせて精度をアップ

このコロナ禍で宿泊事業者は大きなダメージを受け、多言語対応をしたくても、スタッフの雇用や設備投資に費用をかけられない状況にあります。「Kotozna In-room」は初期費用なしのサブスクリプションで、手軽に利用開始できるのがメリット。

ゲストのスマホがホテル専用の情報端末のような役割を果たしてくれるので、新たに端末などを用意する必要もありません。

施設の情報をゲストの母国語で表示できるのはもちろんのこと、ゲストからの質問が多い情報──例えば感染対策として、大浴場や食事会場の混み具合を表示することも可能。

問い合わせのやり取りはデジタル化されるので、「どの言語を話す人がどんな質問をすることが多いのか」「スタッフの対応は的確だったか」といったデータを蓄積することができ、マーケティングやカスタマーサポートに役立てることができるそう。

「Kotozna In-roomが他のカスタマーサポートと大きく違うのは、チャットにおいて精度の高い翻訳結果を表示するため、複数の機械翻訳を組み合わせていることです。

施設や周辺の観光スポットの名称などを辞書データベースに登録することで、さらに翻訳の精度が上がります」(後藤さん)

東京オリンピックの際に「Kotozna In-room」を試験導入した施設では、「今まで注文がなかった国のゲストからルームサービスの注文が入った」といった嬉しい声があったとか。

ソーシャルディスタンスにも有効とあって、2020年10月のローンチから2022年2月までの期間に、全国のホテル・旅館など200以上の施設、26,000室以上の部屋に導入されたといいます。

韓国・台湾からの見積もり依頼が増加。旅行業界に回復の兆し

この日の説明会には、「Kotozna In-room」をKotozna社とともに開発したJTBから、営業開発プロデューサーの玉崎元啓さんが参加。今後のインバウンド回復を見込み、宿泊・旅行業界ではDX化などの準備に拍車がかかっている状況だと話します。

「韓国、台湾からはツアーの見積もり依頼も非常に多く、先にそちらから動くのではないかというのが私の印象です。

いま世界で『どこに旅行に行きたいですか』という質問をすると、円安の影響もありますが、日本と答える方が大変多い。ポテンシャルは間違いなくあるので、もう少し人の流れがよくなれば一気に需要が戻ってくるのではないでしょうか」(玉崎さん)

今後「Kotozna」では、お客様窓口に寄せられる海外からのお問い合わせを自動翻訳チャットで処理する「Kotozna Live Chat(仮称)」や、日本の文化財を多言語で紹介し、チャットを介してスタッフと旅行者のコミュニケーションを促す「日本文化財ポータルサイト」のサービスを提供していくとのこと。

「Kotozna In-room」も日本国内だけでなく海外展開を考えており、ハワイなど日本人観光客が多い旅行先から広げていきたいと後藤さん。「Kotozna In-room」を海外のホテルで使えたら、現地での滞在がさらに快適になりそうです。

「言葉のカベ」は日本だけの問題ではなく、世界中の社会課題だと後藤さん。まずは日本各地の「言葉のカベ」を解消し、日本の地方を元気にするという「Kotozna」のチャレンジ、これからも注目していきたいと思います。

Source: Kotozna,Kotozna In-room