老後資金のために、企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)に加入している会社員の方も多いはず。よく分からないからと、ほったらかしにしているなら、年度が変わるタイミングで運用状況の確認や見直しをしてみませんか?
今回は、改めて企業型DC制度のおさらいと新年度に見直しておきたいポイントを解説します。
1.企業型DCとは?
企業型DCとは、企業が毎月積み立ててくれた掛金を、従業員が自分で運用する私的年金のこと。厚生年金のような公的年金の上乗せとして、老後の生活資金に備える制度です。
原則60歳まで資金を引き出せませんが、運用益が非課税になり、受取時にも控除を受けられるメリットがあります。
2.運用先は大きく分けて2種類
企業型DCの運用先は、大きく分けて2種類のみ。元本が保証されている元本確保型と、元本が変動する価格変動型です。なお、元本とは積み立てた掛金のことを指します。
種類 | 元本確保型 | 価格変動型 |
---|---|---|
特徴 | あらかじめ決められた金利で運用。 満期時に元本と利息が確保される。 | 運用状況に応じて 元本の変動がある。 |
代表例 | 定期預金、保険 | 投資信託 |
メリット デメリット | 元本保証あり。 低金利下では年金資産をほぼ増やせない。 | 運用成績に応じて 値上がりすれば資産が増える可能性がある。 値下がりして資産が減る可能性もある。 |
なお保険商品は、満期を迎えずに運用商品を変更した場合、解約手数料が差し引かれる可能性があるため注意してください。
元本確保型と価格変動型は一長一短です。両方の金融商品を選択肢に入れて検討しましょう。
3.新年度に見直しすべきポイント
企業年金協議会の確定拠出年金統計資料によると、2021年3月末時点で30代の約60%が投資信託を選んでいます。特に外国株式型とバランス型の比率が高いようです。
外国株式型投資の見直しポイント
外国株式型は値動きが大きい傾向があり、タイミングによってはマイナスになります。損失がでると、投資信託から定期預金や保険に変更したくなる人もいるかもしれません。
ところが、毎月一定額を購入するという企業型DCの特徴を考えると、株価が安い時に元本確保型へ変更するより、「株価が安いときだからこそ投資商品を多く買える」というメリットに着目したほうがいいことも。
長期で続けると平均購入単価が安くなるため、長い目でみれば、短期的な値下がりをカバーできる可能性があるのです。
利益が出た場合も、焦って利益を確定してはいけません。値動きに一喜一憂せず、ほったらかしにしましょう。
バランス型投資の見直しポイント
一方で、いくつか投資信託を組み合わせてリスクを調整している人は、想定以上のリスクを取っていないか確認してみましょう。株式ファンドと債券ファンドを半分ずつ持っているような人がこのパターンです。
ファンドの値段が上がったり下がったりすると、保有資産全体に占める株式ファンドと債券ファンドの配分が変化します。
例えば、運用開始当初は株式ファンドと債券ファンドを半分ずつ保有していたのに、株価が上昇し株式ファンドの割合が増えてしまったケースです。
株式ファンドは債券ファンドと比較し、高リスク。比較的リスクの高い資産の割合が自然と増えているので、想定以上にリスクが増えています。
こうした場合は、増加した資産を売却し、割合が減少した資産を購入することで、資産配分割合を元に戻せます。上記の例では、株式ファンドの一部を売却し、債券ファンドの割合を増やすこと。リスクを抑えリターンの安定化に繋がるため、年に1度程度の頻度で見直せると安心です。
元本確保型と価格変動型があったら、元本が保証されている方がいい、と考える人も多いでしょう。お金が減るのは怖いですから。
ただ、元本確保型に決める前に知っておきたいのが、企業型DCの税制優遇。通常の投資商品では運用益に対して約20%課税されますが、企業型DCならば非課税になります。
現在35歳の人が65歳までに老後資金を2000万円準備したいとします。資産運用シミュレーションをしてみると、
貯金だけで準備しようとすると、毎月約5万5600円の計算に。一方で、仮に年率リターン3%で運用できれば、計算上の毎月の積立額は3万4321円となります。リスクを取るメリットを知っておきましょう。
税制優遇を享受するために、企業型DCの一部を価格変動型の商品で運用し、それ以外の資金で貯金や保険持つという選択肢もあります。
4.年齢に合わせた資金計画を
自分に合ったリスク・リターンの目安が分からない人は、年齢を一つの基準にしてみましょう。20代から30代は株式型投資信託を多めにし、リスクをとった運用でリターンを高めるという選択肢があります。
運用期間が長くなるため、リカバリーが効きやすいのがメリット。セカンドライフが近くなるにつれ、預金といったリスクの小さい資産にシフトし、守る運用への移行を検討しましょう。
また、ターゲットイヤーファンドといって、残りの運用期間に合わせて、積極的な運用から安定的な運用へ資産配分を変えてくれる投資信託があります。投資内容を見直す手間を軽減できるメリットがあるため、知っておきましょう。
5.まとめ
老後に備えるためにお金を貯めようと思っても、最初の一歩はなかなか踏み出せないもの。
企業型DCであれば、既に制度に加入している会社員の方もいるでしょう。まずは運用商品の見直しから、老後資金の準備を初めてみてください。
Source: 投資信託協会,確定拠出年金統計資料,日本証券業協会,資産運用シミュレーション