製本工場に勤務していた頃、印刷前工程を担う技師が、印刷版を露光する前のフィルムの上に小さなテープの切れ端を誤って残してしまったことがありました。

それを受けて、二人の責任者が話し合っているのを偶然耳にしました。「クビにしますよね?」と一方が言いました。

するとその従業員の上司はこう言ったのです。「いや。それでは、せっかくの10万ドルの教訓が無駄になってしまう」。

科学的にも証明。「失敗」と「学び」の関係

ほとんどの人は、たずねられれば、「失敗から学ぶことのほうが多い」と答えるでしょう。この責任者の返答はリーダーらしい言葉に聞こえますが、科学もこれと同様のことを示しています。

『Annual Review of Psychology』に掲載された2016年の研究によると、犯した間違いが大きいほど、そして正しいという自信があった時ほど、学びを得る可能性が高くなるのです

その研究者たちはこう書いています。

興味深いことに、有益なこの効果は、自分の間違いが正しいのだと強く信じている時にとりわけ顕著に現れる。自信をもって犯した誤りは、自信のない状態で犯した誤りよりも容易に訂正されるのだ

この結果は、何かを間違えるということ自体が記憶に残りやすいという事実によるところもあります。

だからこそ、勉強に最良の方法は読み返すことではなく、自分自身にクイズを出すことなのです。自分に問題を出して答えを間違えれば、正しい答えを調べたうえで覚えられる可能性が高くなるだけでなく、覚えていなかったということも思い出せるようになります。

つまり、覚えていなかったということを思い出すことによって、その学びが強化されるのです

「誤った考え」を見直すと、次の意思決定も改善する

「考える」ということについて、考えることも同様です。これは、心理学者が「メタ認知」と呼ぶプロセスです。間違いに関して言えば、間違いに至った行動について考える、ということ。

誤りに至った思考過程を見直し、強い自信を持って自分が正しいと感じるに至った理由付けを振り返ってみましょう。

間違いに至った思考過程について考えることで、その間違いを再び犯す可能性が低くなるだけでなく、そうした考えが役立って今後の意思決定も改善されるのです

あの印刷前工程を担う技師は、フィルム上にテープの切れ端が残っていないことを確認することになっていました。

しかし、明らかにそれをしなかったのです。露骨な誤りであり、大抵の責任者が最終的には「こんなことを二度と起こすな」と言って対処したであろうミスです。

そして、それでおそらくはうまくいったことでしょう。

しかし、それでは、より深く学ぶための機会を無駄にしてしまうことになったはずです。。

その従業員に対して、なぜこのようなことが起こったと思うかを具体的に訊ねることで、その従業員は、修正しなければならないさらに大きな問題をいくつか明らかにしたのです

たとえば、自分の通常のプロセスはどんなものか、そのプロセスを中断させる可能性のあるものは何か、ほかの従業員の仕事のやり方についてどんな前提を立てているかなどの思考を巡らせました。

そして、今後避ける必要のある、「間違いになり得たかもしれないもの」を、成長の機会に変えました。

だからといって、従業員が大きな間違いを犯すことを望んだほうが良いということではありません。そうではなく、試行錯誤の余地を与えるということです。先に触れた研究者たちが以下のように言及する通りです。

もし、高いリスクを伴う状況で最適なパフォーマンスを発揮することが目的であれば、根気強くなにがなんでも誤りを回避するのではなく、リスクが低い学習環境にある間に誤ったうえで修正することを許容し、さらにはそれを奨励することには価値があるだろう

成功しない人は、「間違いを避けようとする人」

知る必要があると思われていることを、すべて知っている従業員はいないからです(あなたも私も、知る必要のあることをすべて知っているわけではありません)。

あらゆるスタートアップ企業も同様です。

イーロン・マスクが言うように、「成功するスタートアップと、そうでないものの違いは、成功するものは間違いを認識してそれを非常に素早く修正する一方、成功しないものは間違いを避けようとする」のです。

あるいは、ビル・ゲイツが言うように、「不愉快なニュースを、ネガティブなものとしてではなく変化の必要性を示す根拠として受け入れれば、それに負けることはない。そこから学んでいるのだ。失敗にどう取り組むか、それがすべてだ」ということなのです。

だからこそ、誰にとっても、時には失敗しても良いという許容度があったうえで、今後その失敗をしないことだけでなく、そもそもなぜ失敗してしまったのかを考えるように促された時に、学びを得る可能性が高まるのです。

私たちは皆、間違いを犯すからです。

重要なのは、やむを得ずミスをしてしまった時に、どう対応するか、そしてどう学ぶかです。

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Image: Shutterstock

Source: ANNUAL REVIEWS, Psychology Today, Youtube, Forbes

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