世界が非常に混沌としていて、複雑さに圧倒されてしまうように感じることがあります。それは、政治や経済や地球規模の問題のせいかもしれないし、職場や家庭で直面するストレスが原因のこともあるでしょう。
そうした状況をくぐり抜けようとするときに、何よりも優先すべき要素が「幸福」です。
人は、仕事や人生のなかで、喜びや充実感、そして満足感を求めています。幸福ははかないものに思えるかもしれませんが、幸福を見つけるための道は(ちょっと意外なものも含めて)いくつかあります。
幸福に関する私の研究によると、極めて重要で大きな意味のある「幸福の源」がいくつか存在します。
自分が関わることに目的意識を持つ。他者との有意義なつながりを維持する。幅を広げ、学び、成長する機会を持つ。感謝する。そのすべてに、幸福との相関関係があります。
ですが、幸福感を得る道筋には、意外に見えるものもいくつか存在しています。
追い求めてはいけない
「幸福のパラドックス」では、幸せになろうとすると、それを達成できる可能性が低くなることが示唆されています。そうではなく、幸福のために幸福を追求せず、幸福につきものの条件を作り出すことを探求すべきです。
なぜなら、幸福を追い求めると、自分に何が欠けているかを思い知らされるからです(なんといっても、それを追い求めている状態なのですから)。
そして、他の人のニーズではなく、自分自身のニーズに目が向いてしまいます。
しかし、幸福に関係しているのは、その反対の状況です。自分のニーズではなく、他人のニーズに貢献するほうが、幸せを実感しやすいのです。
時間を賢く使う
幸せになりたいなら、リラックスして若返るようなアクティビティに時間を掛けるのもよいでしょう。
英ノッティンガム大学の研究によると、自分の好きな趣味に時間を費やしたり、ゲームをして暇つぶしをしたりすることは、幸福度と相関関係があることがわかりました。また、昼寝も幸福度を高めるのに効果的です。
興味深いことに、米コロラド大学の研究によると、(全体として十分な睡眠が取れていると仮定した上で)毎日、普段より1時間早く目覚めるように目覚ましをセットすることにも、幸福度と相関が見られたそうです。
おそらく、自分の時間をよりコントロールでき、自分のしたいことをする時間が増えるからでしょう。
体験に投資する
幸福になるための条件づくりにおいて、有意義な体験を追求するのも賢い方法です。アイテムやモノにお金を使ってもいいのですが、体験のほうが喜びや満足感を得られる可能性が高いのです。
なぜなら、モノを買うと一瞬の満足しか得られないのに対して、体験は、時間をかけて脳の複数の感覚系神経回路に働きかけることができるからです。
ベネチア観光を楽しみ、美味しい食事に舌鼓を打ち、ゴンドラの揺れや足元の石畳を感じながら街歩きをする。このような体験は、モノで得られるよりも長く残る思い出になるのです。
また、体験はふつう、誰かほかの人と一緒に楽しむものです。それも、大きな幸福の源になります。自分の息子とスカイダイビングをすれば、その瞬間を思い出すたびに喜びがこみ上げてくるはずです。
野菜を食べる
好き嫌いの多い人は、この項目をとばして、次の項目までスクロールしてもかまいません。でも、すべてのヘルシー志向の方(またはヘルシー志向を目指している方)には、これも幸福の源になります。
英ウォーリック大学などの研究では、野菜や果物の摂取量が多いほど幸福度が高いという関係性が判明しました。
また、英リーズ大学による関連研究では、より健康的な食事をすると、血中カロテノイド濃度が上昇し、主観的な幸福度が高まるという仮説が立てられています。
コミュニティに貢献する
幸福に確実にたどりつくもう1つの道は、コミュニティとの強い結びつきです。『Social Psychological and Personality Science(社会心理学および人格科学)』誌に掲載された研究が示すように、子どもたちとの結びつきでも効果があります。
この研究では、自分のことよりも子どもたちのニーズを優先して考える人は、より大きな幸福を感じていました。
もちろん、子どもたちとの間に健全な境界線を設ける必要はありますが、時間をかけて無条件の愛を示し、子どもの幸福に無私の投資をすることが、より大きな幸福と強く結びついていたのです。
また、コミュニティでボランティア活動をすることでも、より大きな幸福感が得られます。
人は誰でも、自分の才能とスキルを発揮してコミュニティに貢献したいという本能を持っています。これを明らかにしたのが、米イリノイ大学の研究です。
この研究によると、人は、自分以外の人のニーズが満たされているのを見ると、自分も幸せだと感じるのだそうです。つまり、ほかの人を後押しすることは、自分自身を後押しすることでもあるのです。
金銭価値にとらわれない
お金で幸せが買えるというのは間違った考えです。安全や十分な食料、住居を確保するためには、どんな人でも基準所得額程度の収入を必要としますが、これらは最低限の満足をもたらすに過ぎません。
それ以上の満足を得ようと思ったとき、幸福をお金で買い足すことはできません。
真の喜びは、目的意識、健康、コミュニティへの貢献など、上で紹介したほかのすべての要素から生まれる傾向があります。
つまり、自分の周りで幸福が花開くのをひたすら待っている必要はないのです。その代わりに、自分が幸せになるための条件を、自分で作ればいいのです。そして、積極的に行動すること自体も、幸福の源になるはずです。
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