『ストレス革命 悩まない人の生き方』(Testosterone 著、きずな出版)は、以前ご紹介した『ストレスゼロの生き方 心が軽くなる100の習慣』(きずな出版)の著者による新刊。
本書内の自己紹介を引用するなら、著者は「筋トレ啓蒙活動をしている変なおじさん」。
筋トレに出会って人生が好転したことから活動を開始した結果、知名度が急上昇。独特の口調が受けたこともあり、筋トレ関連書籍のみならず、さまざまなテーマの書籍を連発している人物です。
今作の特徴は、そのアプローチ。
『ストレスゼロの生き方』では「やめる」「捨てる」「逃げる」「受け入れる」「貫く」「決める」というキーワードに沿って、“ストレスゼロで生きる100の方法”を提言していましたが、ここでは前作の内容と正反対のことを主張するという取り組みに挑戦しているのです。
その根底にあるのは、クリティカルシンキング(批判的思考)。
自分の主観に対して「なんで?」「どうして?」「それ本当?」と批判的意見をぶつけ、感情や主観に流されずに物事を判断する思考プロセスだ。
ディベート(討論)などで多数派に対してあえて批判や反論をするグループをつくり、議論を活性化させたり、より自由な発想を促進するためのテクニック「悪魔の代弁者」というものがあるが、これなんかはクリティカルシンキングのわかりやすい実例だ。(「はじめに」より)
つまり、自身が前作に対して批判的指向を適用し、「悪魔の代弁者」役を演じているということ。徹底的に批判的な目で前作の内容を精査し、代案を述べていこうとしているのです。
きょうは第4章「受け入れない」のなかから、2つのトピックスを取り上げてみたいと思います。
失敗を、受け入れない
世間が定義する失敗と、著者の定義するそれは少し違うのだとか。
・世間の失敗の定義:何かに挑戦してうまくいかないこと
・俺の失敗の定義:何かに挑戦してうまくいかず、挑戦をやめてしまうこと
(130ページより)
ちなみに上記を前提としたうえで、世間の定義する失敗を「シッパイ」、自身の定義する失敗を「失敗」と定義しています。著者の考えでは、シッパイは失敗ではないというのです。
なぜなら、なにかに挑戦するのであればシッパイは避けて通れないものだから。けれど、失敗を限りなく減らしていくことはできるというシンプルな考え方。成功するまで続ければ、シッパイは失敗になり得ないということです。
シッパイは、受け入れない限りは本当の意味での失敗にはならないもの。
そしてシッパイは、本人が受け入れたときに初めて失敗になるもの。心を折られて挑戦を諦めたとき、シッパイは本当の意味での失敗となるわけです。
たとえ何度シッパイしようとも、再挑戦し続ける限りそれは失敗じゃない。
成功した奴はシッパイしなかったんじゃない。成功するまでシッパイし続けた奴なのだ。
あなたが恐れるべきは失敗であってシッパイじゃない。シッパイを恐れるな。
生きている限り、何かに挑戦している限り、シッパイは避けられない。
シッパイは誰にでもある。つまり、シッパイしたときにどう対応するかが成功するか失敗するかの分かれ道なのだ。(131ページより)
つまり、シッパイは実験の結果に過ぎないということ。
大切なのは、その結果を分析し、学び、また実験すること。それを繰り返すことが、成功への唯一の道だという考え方です。
したがって、失敗(シッパイ)は受け入れるべきではないと著者は主張するわけです。(130ページより)
困難を、受け入れない
この世には、「よい困難」と「悪い困難」があると著者は言います。
よい困難とは自分を成長させてくれるもので、たとえばいい例が勉強やダイエット。つらく苦しいけれど、目標達成のためには不可欠であり、乗り越えた先に報酬が待っているわけです。
一方、悪い困難は、時間を奪い精神を削るだけで、なにも見返りがないもの。
いじめられているのに学校に通い続けるとか、ブラック企業で働き続けるとか、侮辱してくる人間と仲よくしようとするなど。
つらく苦しく理不尽なだけで、本来なら耐え抜くべきではない、そのあとに報酬が待っていないのが悪い困難。
だからこそ、よい困難を受け入れるのはいいけれど、悪い困難は絶対に受け入れるなと著者は強調しているのです。
いうまでもなく、悪い困難を受け入れてしまうと、貴重な時間を失うことになり、さらには自尊心や自信まで破壊されてしまうことになりかねないから。
困難にぶち当たったら、「この困難は自分を成長させてくれるだろうか?」と己に問いかけてほしい。
もし答えがノーなら、あなたはその困難に立ち向かうべきではない。(137ページより)
悪い困難にぶち当たってしまったときは、あえて迂回することを著者は勧めています。
視野を広く持てば、壁を迂回できる道を見つけられるはず。しかし視野が狭まっているとそれに気づかず、真正面から乗り越えようとしてしまうからです。
それは、“苦労は買ってでもしろ”ということばや、同調圧力が強くレールから外れることをよしとしない日本の文化、まわりからのプレッシャーのせいかもしれないと著者は指摘しています。
でも、いじめが原因なら、学校に通い続けなくとも転校なりホームスクールなり他の道があるはず。ブラック企業で耐える方法を考え抜くよりも、さっさと転職したほうがいい場合もあります。
あなたは今後の人生で様々な困難に直面するであろうが、その困難が乗り越える価値のある困難か否かをしっかりと見極めることを忘れないでほしい。(137ページより)
受け入れるべきは、よい困難だけ。悪い困難は受け入れず、迂回するべきだということです。(136ページより)
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「考え方に正解なんてない。『自分に合うなぁ』と思う考え方だけ自由に取り入れてくれたらいい」
「思考は武器みたいなもん。時と場合に合わせてもっとも適したものを選んで使えばいい」
(「はじめに」より)
本書について、著者はこう述べています。
著者独特の口調を楽しみながら気軽に読んでみれば、意外な気づきを得ることができるかもしれません。
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Source: きずな出版
Photo: 印南敦史