相手を気にして、相手の意向に合わせすぎてしまう人はたぶん、人の気持ちを察することができて、思いやりがある人なのでしょう。誤解のないように言いますが、こうした資質をもっているのは立派なことです。
とはいえ、いつもほかの人の希望や要望を聞き入れてばかりで、自分自身の感情を犠牲にするのは考えものです。
感じのいい人であることはいいことですが、相手に合わせてばかりいる人の多くは、精神的に疲れ果てていたり、自分の時間が自分のものではないように感じていたりします。
外から見ると感じが良い人であっても、内面は強い怒りやストレスがたまり、相手に拒絶されることを恐れている場合もあるのです。
自分が、みんなに踏まれるドアマットみたいだとうんざりしている人は、どうすれば、自分のことを第一に考えるようになれるのでしょうか。
相手に合わせるタイプのあなたはおそらく、相手を不愉快にするのは気が進まないのではないでしょうか。この記事では、自分自身の意見をはっきり主張するための具体的な方法をご紹介します。
しっかりとした境界線を引く
自分の気持ちを犠牲にしてほかの人に合わせることがないようにするには、いつ、どうやって境界線を引くかを知ることが重要です。
以前掲載した記事では、さまざまな個人的な境界線について取り上げました。自分の生活の中でどこに境界線を引くかを、時間を取って見極めることが重要だ、ということも説明しました。
あなたをドアマットのような気分にさせてしまう、境界線を越える行為とはどのようなものでしょうか。
友だちがあなたのことを、いつどんなときも恋愛話につきあってくれる人、とあてにしていることでしょうか。それとも、あなたが食料品の買い出しや食事の支度をすべてやっているのに、実はあなたが不満を感じているとはパートナーが思ってもいないことでしょうか。
あるいは、いつも仕事を手伝わされるのはもう勘弁してほしいということを、同僚がわかっていない、ということもあるかもしれません。
いったん自分の境界線が何かを見極めれば、身のまわりのこうしたことで線を引くのは簡単になっていきます。
自分を励ます決まり文句をもつ
自分を励ますための決まり文句は、やる気を高めてくれる古典的なツールです。私には、人生のあらゆる場面で、ちょっとした励ましを与えてくれる、お気に入りの言葉や表現がたくさんあります。
たとえば、いつもより長い距離を走っているときには、「誰のためでもない、自分のためだ」と言い聞かせます。
元カレにメールしたい衝動に駆られたときは、「前に進め、前進あるのみ」とつぶやきます。「ノー」と言わなければならないときに頼りになる言葉もあります。それは、「『ノー』とは、それだけで完結した文章だ」です。
自分を励ましてくれる、パンチのきいた自分流のフレーズを考えましょう。出かける前の決まり文句「電話、財布、鍵」のようなものですが、自尊心を高める内容にするのです。
ウェブサイト「PsychCentral」には、たとえば「ノーと言ってもいいんだよ」というような、とっかかりになるような言葉がいくつか載っています。
私の大好きな言葉はこれです。「これは私のサーカスではないし、私のサルたちでもない」(私の問題ではない、という意味)。
「自分を守るのは当然である理由」をすべて書き出そう
みんなを満足させなくてはという気持ちは、自信のなさや、拒絶されることへの恐れから生まれることが多いものです。
1つの対策は、境界線を引いて自分を守るのは当然である理由をすべて書き出し、スマホのメモに残しておくことです。定期的にそのリストを確認しなくても、書き出すという行為自体が、モチベーションを高めるのに役立つでしょう。
自分をよく見つめてみよう
相手に合わせてしまう理由として、もう1つよくあるのは、自分の本当の考えや感情に確信がもてないことです。自分の気持ちがよくわからないなら、ほかの人の意見に賛成してみんなを満足させるほうが簡単です。
自分を見つめて、なぜほかの人を優先する必要があると思ってしまうのかを明らかにするために、私は日記をつけることを強くお勧めしています。「ノー」と言うのがなぜ怖いのか、自分を問いただしてみてください。
そのあとで、自分自身の時間と労力を守るための目標を書き出しましょう。それが、自分のことを第一に考えられるようになるための準備になります。
「ノー」と言う準備をする
「ノー」と言えるようになるには、相手の要求をどのように断わるか、あらかじめ考えて書いておくことが役立ちます。そうすれば、慌てて曖昧なことを言ってしまい、結局相手に流されてしまうこともありません。ヒントになるフレーズをいくつか挙げておきましょう。
- 「ありがとう。でも今は手一杯なんだ」
- 「私に声をかけてくれたのはありがたいけど、今は引き受けられないの」
- 「ごめんなさい、避けて通れない問題を抱えています」
- 「ご依頼を引き受ける時間がありません」
- 「それはできないけど、こういう方法は考えてみた? (と別の解決策を提示)」
覚えておいてほしいのは、長々と説明する必要はないということ。先ほども言いましたが、もう一度言います。「ノー」とは、それだけで完結した文章です。はぐらかしてその場から逃げるしか手がないときは、それも1つのはじめ方です。
少しずつでいい
これまでご紹介したすべての方法を、ただちに実行する必要はありません。簡単なことからはじめましょう。気持ちを奮い立たせて直接「ノー」と言う前に、メールで断わることからはじめてもいいのです。
最後に、注意点があります。言い訳や謝罪を延々と繰り返すのは避けるようにしましょう。言い訳や謝罪を繰り返すと、相手に合わせて行動するという元の自分に戻りやすくなります。
慣れるには少し時間がかかりますが、「自己主張したあとの居心地の悪さ」をどう受け入れるのか、それを学ぶことには価値があります。
何はともあれ、「相手に合わせすぎてしまう」という自分の性向をなんとかするためには、合理的に取り組みましょう。
すべての人を満足させる方法はありません。まわりの人のために、何ができて、何ができないかを現実的に考えることは、自分自身と、そしてまわりのすべての人のためになることなのです。
Image: Shutterstock/Source: PsychCentral(1, 2), verywell mind