私たちの社会は、「グリーフ(悲しみ:愛する人との死別など、重大な喪失体験に対する複雑な反応や状態)」というものについて、あまりに狭く定義し、あまりにも浅く理解しています。

一般的に、親しい人が亡くなると、残された人は悲しみ、喪服を着て、朝食にキャセロールを食べて数日間を過ごしますが、その後は何事もなかったかのように日常生活を再開するものだとされています。

しかし実際には、グリーフに決まったスケジュールや形式などありません。

深い悲しみに形はない

エリザベス・キューブラー・ロスが提唱した「グリーフの5段階」が有名ですが、これは、この5段階を経過すれば、グリーフが終わるということを意味するものではありませんでした。

また、グリーフを経験するには、親しい人が亡くなったときだけとはかぎりません。

離婚、失恋、失業、家族や友人との離別、あるいは、メンタルヘルスの問題や、慢性疾患の後に起こるアイデンティティの喪失などでも、グリーフを経験することがあります。

さらに、世界的なパンデミックや、何世紀にもわたる人種差別など、長期間の出来事や困難に伴う集団的なグリーフやトラウマもあります。

認定心理療法士で作家でもあるAnnette Childs博士によると、どのようにグリーフを経過するかは、その人の「グリーフの元型」によって異なるそうです。

以下に、同氏が定義するグリーフの4つの元型と、それぞれの元型に応じたサポートの方法を紹介します。

グリーフの元型とは?

グリーフセラピストとして25年間働いた後、Childs氏は、クライアントのグリーフの経過の仕方が4つのパターン(同氏はこれを「グリーフの元型」と定義)に分けられることに気づきました。

以前紹介した「愛の言動」と同じく、「グリーフの元型」の背後にある考え方は、相手のタイプによってケアやサポートの仕方を変えるとうまくいく、というものです。

Childs氏は、MindBodyGreenによるインタビューのなかで、「グリーフの元型」を次のように説明しています。

グリーフに「正しい」やり方はありませんが、いくつかの典型的なタイプに分けることができます。

この「グリーフの元型」の概念を使えば、自分はどの道を通っているのかを俯瞰的に眺めたり、将来、誰かのサポートをするときに、どうすればいいかを考える手がかりを得ることができます。

もっとも、グリーフの経過の仕方は、生涯変わらないものではありません。教育やサポートを受けるうちに、別のパターンへと移り変わっていく可能性は大いにあります。

以下に、Childs氏が提唱する「グリーフの4つの元型」と、元型に基づくサポートの方法を紹介します。

1. 巡礼者

Childs氏の経験では、「巡礼者」がほかのどの元型よりもよく見られるそうです。

巡礼者タイプの人は、セラピーやアルコホーリクス・アノニマス、信仰に基づくサポートなど、支援的な人間関係を求める傾向があります。

「このタイプの人は心が優しく、本来は人を疑うことがありません。ただ、喪失を経験しているときは、警戒心が強くなり、先行きへの不安を募らせる」とChilds氏は説明しています。

サポートする方法

巡礼者は即効性のある解決策を求めてはいません。「巡礼者は、生涯を通して、支援者と深く永続的な関係を築きたいと考えている」とChilds氏は語っています。

ですので、巡礼者タイプの人をサポートするときは、その人が喪失を経験しているときにあなたに心を開き、頼れたとしたら、落ち着いた後でも、あなたを頼り続けると理解しておきましょう。

2. 村人

村人タイプの人は計画を好みます。村人はふだんから、サポートシステムや、感情をケアするためのツールキットを保持していたいと考えているから。

そして、新しいサポートシステムやツールをコレクションに加えることにも積極的です。

グリーフに際して村人が最も困難を覚えるのは、死別や喪失といった出来事に不意を突かれてしまったときです。つまり、計画外のことが起きたということです。

サポートする方法

村人は、自分がグリーフを経験しているときでも、ほかの人を助けようとします。たとえば、「強い人」になって、家族を支えようとします。

あるいは、親しい人が亡くなったときに、自動操縦モードに切り替えて、葬儀を取り仕切ろうとし、多くの責務を抱え込みます。

周囲にグリーフを経過中の村人がいたら、何を必要としているか、何をすれば一番助かるかを率直に尋ねてあげましょう。

そうすれば、村人はいつもの「計画モード」に戻って、あなたをリソースとして利用したり、「ツールキット」に加えることができます。

そして、自分がいま最も必要とするサポートが何かを教えてくれるでしょう。

3. 開拓者

Childs氏の経験では、開拓者はもっとも割合が少ない元型だそうです。開拓者は、運動や趣味、旅行など、新しいものに飛び込むことで、深い悲しみや喪失に対処しようとします。

Childs氏が説明するように、開拓者はグリーフを避けて通ろうとしているわけではありません。

開拓者はグリーフに違うやり方で対処します。喪失の悲しみを小さな断片に切り分け、深刻な感情に長く浸りすぎないようにするのです。

サポートする方法

開拓者をサポートするときは、相手がやりたいことに合わせるようにしましょう。たとえば、週末に日帰り旅行をしたり、一緒に新しいアクティビティに挑戦することになるかもしれません。

それが、開拓者のやり方であることを理解し、「現実に向き合え」だとか「自分のやるべきことをしろ」などと言わないようにしてください。

彼らは彼らなりにグリーフと向き合っています。ただやり方が違うだけです。

4. 航海者

航海者は、喪失に意味を見い出し、自分自身の成長につなげようとします。

Childs氏によると、航海者は、決まった道筋を辿るのではなく、悲しみに寄り添い、悲しみが自分をどこへ連れていくのかをじっと見極めることを好みます。

サポートする方法

航海者をサポートするときは、まず、その人が自分にとって最適なペースでグリーフを経過しようとしていることを信頼してください。

それは、あなた自身のペースとはまったく違うかもしれません。

また、航海者がグリーフのどの側面に最も意味を見出すかも、自分とは違うかもしれないことを心に留めておいてください。やみくもに励ますのではなく、その人の歩みに寄り添うようにしましょう。

──2020年11月6日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

訳: 伊藤貴之/Image: Shutterstock/Source: mbg Health, Dr Annet child