音楽配信サービスのSpotifyは、コメディアンで人気ポッドキャスト配信者のジョー・ローガンと独占配信契約を結んでいますが、ローガンが新型コロナウイルスに関して配信した番組をめぐって、ここ数カ月にわたって議論を呼んでいます

この件に関するSpotifyの対応を批判して、ニール・ヤングやインディア・アリー、そしてクロスビー、スティルス&ナッシュといったアーティストが、Spotifyのライブラリから自身の楽曲を引き上げる事態に発展しました。

さらにはユーザーの中にも、ほかの音楽配信プラットフォームに移行する人が出始めています。

倫理的な配信サービスはどれ?

倫理面での問題点を理由にSpotifyからほかの配信サービスへの移行を考えているなら、楽曲を提供するミュージシャンに正当な対価を払っている(少なくともSpotify以上の報酬を払っている)サービスを見つけてそこに加入することが、唯一の「倫理的な」方法と言えるでしょう。

この視点に基づき、米Lifehackerでは、米国で展開する大手音楽ストリーミングおよび楽曲購入プラットフォームから、アーティストが受け取る報酬額をチェックしました。

これには、楽曲のストリーミング再生1回ごとの平均報酬や、アルバムおよびグッズ販売で得られた収益の分配方法、さらには、広告パートナーシップによる報酬支払いをはじめとするマネタイズのオプション(提供されている場合)といったデータが含まれます。

ただし注意してほしいのは、以下に挙げる数字は、米Lifehacker編集部が入手できた、直近の平均支払額に基づいた推定値だという点です。

こうした数字は変動が大きいですし、リスナーあるいは購入者の居住地、曲の長さ、手数料や税金といった要素によって、アーティストが受け取る額は、平均値を上回ることも下回ることもあります。

Amazon MusicおよびAmazon Primeの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.004ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:250回

マネタイズの選択肢:Amazonでは、デジタルミュージックの販売も行っています。ミュージシャンを支えたいのなら、こちらを購入するのが常にベターな選択肢です。

Amazonは手数料として購入額の27%を徴収しますが、それでも、ストリーミング再生よりは、ミュージシャン側の取り分が占める割合が高くなります。つまり、Amazonで0.99ドルの曲を購入するたびに、だいたい0.73ドルがミュージシャンの懐に入る計算になりますね。

これに対して、楽曲販売と同じ額をミュージシャンがストリーミングサービスで稼ぐには、楽曲が183回再生される必要があります。

Apple Musicの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.007ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:143回

マネタイズの選択肢:Apple Musicが広告収入の一部をミュージシャンに渡していることは特筆すべき点でしょう。とはいえ、これは多くの場合、せいぜい数セント程度の額です。

Bandcampの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:Bandcampでは、ストリーミング再生回数に応じてミュージシャンに報酬を支払うことはありません。ただしこれには裏があって、ユーザーが楽曲やアルバムを無料で再生できるのは数回に限られています。

そのあとは、購入しないと聴くことができません。一度楽曲を購入すれば、Bandcampのウェブサイトやモバイアルアプリで何度でも無料でストリーム再生できますし、DRMフリーの音源をダウンロードして、ほかの場所にアップロードすることも可能です。

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:該当なし

マネタイズの選択肢:ミュージシャンは、デジタルトラックやアルバム、さらにはTシャツやアナログ盤、CDといったアイテムをBandcampで販売できます。

Bandcampは物品の販売について、10~15%の手数料をとります(料率はアイテムの種類によって変わります)。たとえば、1ドルで販売されている楽曲の場合、アーティストはこの曲が1回購入されるごとに0.85ドルを手にするわけです。

これが1枚12ドルのCDなら、アーティストの取り分は8.20ドルになります。

また、アーティストをさらに金銭的に援助したいという場合は、会計の際にチップという形で支払い金額に上乗せすることも可能です。

Deezerの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.003ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:333回

マネタイズの選択肢:Deezerのサブスクリプションサービスに契約すると、同プラットフォームで楽曲を提供しているアーティストに直接、月々の利用料の一部を渡すことができます。

もちろん、Deezerもある程度の手数料をとりますが、これは音楽ファンがお気に入りのミュージシャンを直接支援できる手段と言えるでしょう。

iHeartRadioの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.017ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:59回

マネタイズの選択肢:iHeartRadioと契約したアーティストも、同社の広告収入から一定の割合を報酬として手にできます。とはいえ、Apple Musicと同じように、このプラットフォームを利用する平均的なアーティストにとって、その金額は微々たるものです。

Napsterの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.019ドル/回

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:53回

マネタイズの選択肢:該当なし

Pandoraの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.00133ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:752回

マネタイズの選択肢:該当なし

Soundcloudの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:$0.003ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:305回

マネタイズの選択肢:該当なし

Spotifyの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:$0.004ドル

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:229回

マネタイズの選択肢:該当なし

Tidalの場合

ストリーミング再生1回ごとの平均報酬:0.0125ドル/回

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生回数:80回

マネタイズの選択肢:該当なし

YouTubeおよびYouTube Musicの場合

ストリーミング再生/視聴1回ごとの平均報酬:0.008ドル/回(『YouTube Music』アプリあるいはウェブサイトの場合);$0.00164/回(『YouTube』動画アプリあるいは「YouTube.com」の場合)

1ドルの報酬を得るために必要なおおよその再生/視聴回数:125回(YouTube Musicのウェブサイトあるいはアプリの場合);610回(YouTubeの当該アーティストのチャンネルの場合)

マネタイズの選択肢:YouTubeは、アーティストがアップロードしたコンテンツのストリーミング再生数や視聴回数に応じて報酬を支払いますが、それに加えて、彼らの音楽を使用しているほかのチャンネルの動画が再生された場合にも、再生/視聴回数1回あたり約0.0007ドルを支払っています。

支払いを受けられるのは、YouTubeの「Content ID」アルゴリズムが、著作権者が提出した楽曲と一致していると判定した場合です。

ほかにも、楽曲の権利保持者が、アーティストの楽曲を使って収益を得ている動画に対して申し立てを行うことで、報酬を得られるケースもあります。

こうした条件はつくものの、誰かに自分の作品を使われた場合に、アーティストが多少なりとも報酬を手にできるような仕組みがあるわけです。

このContent IDがマッチしたストリーム再生で1ドルの報酬を得るには、約1500回クリックされる必要があります。

アーティストを一番大切にしている配信プラットフォームは?

ここまで説明してきたビジネスモデルに基づいて判断するなら、Bandcampを通じて音楽を購入するのが、ミュージシャンの実入りを増やすには断トツでベストな方法です。

サブスクリプション方式のストリーミング配信モデルを求めるユーザーにとっては、Bandcampはあまり良い選択肢とは言えませんが、ほかの大手ストリーミング配信サービスと比べて、ミュージシャンは楽曲が売れるたびにより多くの金額を手に入れられますし、かなりの自由も得られます。

ゆえにBandcampは、今回リストアップした中では一番倫理的な音楽サービスと言えるかもしれません(もちろん、何をもって倫理的とするかはその人次第ではありますが)。

2番目はAmazon経由で楽曲を購入

次点としては、Amazon経由で楽曲を購入する選択肢が挙げられます。その一方で、Amazon経由でのストリーミング再生は、バンドの懐にどれくらいの金額が入るのかが心配だという人にはお勧めできませんね。

率直に言って、お気に入りのミュージシャンを応援するには、ストリーミング配信サービスは不向きな方法です。

ストリーミングサービスなら「Napster」

でも、音楽を聴くのにどうしてもこの方式のサービスを使いたいというなら、ストリーミング再生1回ごとに支払う報酬の料率は、原文記事を書いている時点では、Napsterが、どの音楽ストリーミングサービスよりも高くなっています。

つまり、Napsterに楽曲を提供しているアーティストは、ほかのどのサービスよりも1再生回数あたりで多くの金額を稼ぐことができるわけです。

今から20年ほど前には、ファイル共有サービスとして誕生したNapsterが、音楽の著作権侵害行為を助長する諸悪の根源だとみられていたことを考えると、これは皮肉な話ですよ。

ストリーミング再生1回ごとの報酬がNapsterの次に高いのが、iHeartRadioです。さらに少額ではありますが、広告収入を分配していることから、アーティストが受け取る報酬に関しては、最高のストリーミングサービスの1つです。

また、Deezerは、ストリーミング再生回数に連動する報酬は他のサービスに比べて低いものの、月額のサブスクリプション料金の一部をアーティストに提供できる選択肢があります。

これにより、ミュージシャンにとっては、ストリーミング以外にも報酬を得る道が開けますね。

大手で選ぶならApple Music

ただし残念ながら、ここまで挙げたNapster、iHeartRadio、Deezerという3つのサービスは、SpotifyやAmazon、Apple Music、YouTube Musicと比べて、再生可能な楽曲の数でもユーザーの数でも見劣りします。

ゆえに大半のユーザーは、ストリーミングに関して、あとに挙げた大手4社のサービスにしか目を向けません。でも、倫理的かどうかという観点に立てば、アーティストを搾取する度合いが高いのは4大サービスなのです。

これらの4大ストリーミングサービスのうち、どれかをどうしても使わなければならないとしたら、おそらくApple Musicが「ベストな」選択肢でしょう。

4大サービスの中では、ストリーミング再生1回ごとの報酬が一番高いからです(ただし、それほど大きな差ではありません)。

また、広告収入の一部をアーティストに還流しているのは良いことではありますが、ある程度以上の分配を受けられるのは、絶大な人気を誇るトップアーティストに限られるはずです。

何より、ほぼすべての音楽配信プラットフォームは、ストリーミング再生に関して、ミュージシャンにもっと多くの報酬を支払うべき。ただし、この記事では一般論として、どのサービスがアーティストに比較的手厚く報酬を支払っているかを示しました。

これによって、読者のみなさんが、自分のお気に入りのバンドを金銭面で支援する、より良い方法を見つけるお手伝いができれば幸いです。

※こちらはアメリカの情勢をまとめた米Lifehackerの記事です。日本の場合は状況が異なる可能性があります。


Source: GIZMODO, The Atlantic