皆さんにとって、「理想の上司像」とはどのような人ですか? 情熱的でパワフルな上司でしょうか? それとも、プライベートのことには触れず、仕事は仕事と割り切る上司でしょうか?

部下を1人でも持つ立場なら、この10年で部下が上司に求めることは大きく変わっていることを知らねばなりません。

今の部下が「上司に求めること」

リクルートマネジメントソリューションズの新入社員2380名を対象に調査した「2021年 新入社員意識調査」を見ると、上司に期待することが大きく変わったことを示唆しています。

【上司に期待する要素|上位トップ2】

・1位「相手の意見や考え方に耳を傾けること(51.3%)」

・2位「1人ひとりに対して丁寧に指導すること(47.7%)」

これらは、この10年で大きく伸びた要素。

一方で、この10年で大きく下落した要素にも着目しておくべきでしょう。

【大きく下落した要素】※( )内の数字は10年前との比較

・6位「言うべきことは言い、厳しく指導すること」(8.8ポイント下落)

・7位「仕事に情熱をもって取り組むこと」(14.6ポイント下落)

・8位「周囲を引っ張るリーダーシップ」(10.7ポイント下落)

上記は、上司に期待する要素の上位5位にも入っていません。これらが意味することは、一体何でしょうか?

私は、正解は「上司」にあるのではなく「部下」にあり、その正解を理解できる上司こそが求められるようになった、と考えます。

しかし、現場を振り返ると、そう簡単ではない事情もあります。私が各企業で耳にすることは、リモートワークや時差出勤など働き方の多様化によって、コミュニケーションがかつてより希薄になっているといった課題。

そこで今回は、今こそ把握しておきたい「部下にストレスを感じさせる上司の特徴」を確認し、そうならないための「とっておきの対策」を紹介します。

嫌われる上司は「コミュニケーションの機会を取らない」

前述の通り、1人ひとりの状況に耳を傾ける上司こそが理想とされている実情を紹介しました。しかし、実際は「業務の指示・確認に終始する上司」や、「部下と深いコミュニケーションがとれていない上司」が多いのも事実。

では、どのようにすれば良いのでしょう? これに対するおすすめの対策は、1on1ミーティングの機会を設けること。「人事白書2020」によると、今や4割を超える職場で1on1ミーティングが実施されています。

1on1ミーティングとは、業務の進捗を確認するような面談ではありません。1週間もしくは、2週間に1回、15~30分程度の時間をとって、“ひたすら”に部下の話を聞く面談です。

具体的には、以下のようなトピックを部下に考えてきてもらい、傾聴するスタイル。

  • 現在の状況で、上司にしておいてほしいこと
  • 業務のことで気になること
  • 職場環境のことで気になること
  • チャレンジしてみたいこと

今では、ヤフーを始め、パナソニック(コネクティッドソリューションズ社)、クックパッドをはじめ、多くの大企業も導入しています。

さて、4割を超える職場で、1on1ミーティングが実施されるようになったと話しました。その背景には、どの職場にも共通する「お互いの時間が取りにくくなった」ことが挙げられます

だからこそ、コミュニケーションの場として1on1ミーティングを設けることを推奨します。

嫌われる上司は「部下の“個別の事情”に気づけない」

上司は、部下が抱える問題の個別性が高まっていることに気を配らねばなりません

10年前であれば問題にならなかったことも、今では当前のこととして配慮しないと、部下にとってストレスとなることも増えています。

たとえば、次の4つの事項に気を配るようにしてみましょう。

1. 生活の事情

  • 親の介護
  • 男性の育児参加
  • 保育園事情
  • シングル親の増加

2. 心・価値観の問題

  • セクシャルマイノリティ
  • 慢性的な心の疲れ 
  • 納得しないと動きたくない若年層

3. キャリア不安

  • やりたいことが見つからない
  • 転職するのが当たり前の時代
  • 副業の急増(経産省が後押し)

4. 職場・ワークスタイルの問題

  • ハラスメント(パワハラ、セクハラ、モラハラ)
  • 勤務スタイルの変化(テレワーク)
  • オンラインミーティングの一般化

***

とはいえ、それぞれの事情を把握するのはプライバシーにも関わることであり、二の足を踏むこともあるでしょう。しかし、だからといって配慮ができないようであれば上司としては失格

だからこそ、先程の1on1ミーティングを実施することで、部下のほうから教えてもらう機会をつくるわけです。

詮索をすることはできませんし、もちろん最初から話してはくれません。何度も会話を重ねるうちに、部下はきっと徐々に共有してくれるはず。まずは時間をかけてでも、部下の個別事情に配慮できるようになっておきましょう。


今回は、ストレスを感じさせる上司の特徴に焦点を当て、その対策を解説しました。

ぜひ、今回のセオリーを取り入れ、改善すべきことがないか考えてみてください。そして、やるべきことが見つかれば、早速次の機会にトライしてみましょう。

今回の内容が、あなたの上司力アップの一助になれば幸いです。

伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、オンラインを活用した研修も好評。近著に15万部を超える『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ(PHP研究所)』『できる営業は、「これ」しかやらない(PHP研究所)』のほか、新刊の『結局、「しつこい人」がすべてを手に入れる(アスコム)』をはじめ、他多数の書籍がある。

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Image: Shutterstock / Source: リクルートマネジメントソリューションズ, 日本の人事部