大自然のなかでの仕事、想像以上。
「島」と聞くと、都会から遠く離れた場所というイメージがありますが、東京都にも、魅力溢れる個性的な11の有人の島があり、「東京宝島」という愛称で親しまれています。
これらの島々は、私たちが普段暮らしている場所とは一味違う壮大な自然が楽しめたり、その自然を利用したアクティビティでリフレッシュしたり、知られざる歴史・文化に触れられる観光地として知られています。
他方、リモートワークが普及しつつある現在は、これらの島々はワーケーションの場としても注目を集めています。
特に、東京宝島のなかでも先進的なワーケーションの取り組みを行なう式根島と、唯一羽田空港から航空便がありアクセス良好な八丈島は、新たなワーケーションスタイルを提供している、注目の島。
離島でワーケーションなんて、本当にできるのでしょうか? 仕事への影響は? 島での生活は? そしてこの2つの島は一体どんなところなのか?
謎に包まれた実態を探るべく、式根島と八丈島での「島ワーケーション」についてライフハッカー[日本版]編集部が調査してきました!
“通”のみぞ知る。式根島での「オフシーズンワーケーション」
実は離島でのワーケーションが初体験のライフハッカー[日本版]編集部。本当に快適に働けるのかを検証するために、現地でワーケーションを実践してみることに。

編集部が訪れたのは、式根島。飛行機と連絡船を乗り継げば東京(調布)から約50分(待機時間除く)。高速ジェット船ならば東京(竹芝)から最短3時間10分と、思っていたよりも近いという印象。
ただ、我々は大型客船の夜行便で11時間かけて式根島へ上陸。夜の船旅も味があっていいものです。

式根島は周囲約12kmと小柄な島。自転車があれば1時間もかからず一周できます。夏場は海水浴やシュノーケル、ダイビング、釣りなどのアクティビティに加え、伊豆諸島唯一のグランピング施設もあり、多くの観光客で賑わうのだそう。
式根島では、観光客の少ない10月から4月までのオフシーズンをワーケーションの場として利用してもらうために、「式根島アカデミー」というプログラムを開催しています。単にワーケーション需要を喚起するのではなく、企業の利用者をメインにモニターを募り、式根島を知ってもらう事前インプットの時間を設け、約1週間島でのワーケーションを実施。その後、モニターにヒアリングを行ない、よりワーケーションに適した体制づくりを…という熱量の高いプログラムです。
2020年から式根島アカデミーを2回開催し、コワーキングスペースの開設、通信環境の拡充を推進。そして現在、島内のキャッシュレス化なども整いつつあり、利用者が快適に過ごせるようになっています。
島ワーケーションで一番気になるところと言えば、やはり作業スペースと通信環境。果たして離島でも生産性を落とさず仕事ができるのでしょうか?
夏の飲食店を活用したオフシーズンだけのコワーキングスペース

式根島の拠点として選んだのが、コワーキングスペース「式根島CWスペース」。繁忙期は飲食店として、オフシーズンはワーケーションのためのスペースとして運営されています。
これまでオフシーズンは閉め切っていた飲食店を、コワーキングスペースとして活用することで、島の活性化にもつながるという発案により開設された経緯があります。

デスクスペースにはテーブルが6台。1人当たりのスペースが広く、ゆったりと仕事をすることが可能です。

スタンディングで作業ができるカウンターテーブルもあり、自分のスタイルに合わせられるのがうれしいですね。
またプリンターやFAXといった機器も完備されています。



もう1つ気になるのが通信環境。これが驚くほど快適!
式根島CWスペースでは、Wi-Fi接続時に利用者ごとに個別のSSIDが与えられます。1つのSSIDを多人数でシェアする必要がないため、回線速度は軽快かつセキュリティ面も安心なのです。こだわりがすごい。

デスクスペースのほかに会議室もあり、こちらも会議室専用の光回線が引かれています。

実際に本土で働く編集部員たちとオンラインで打ち合わせを行ないましたが、その体験は快適そのもの。オフィスでのオンライン会議よりも快適なんじゃ…。ふとそんなことすら思いました。
式根島でワーケーションをするなら、式根島CWスペースを拠点とすれば困ることはなさそうです。
ちなみに、式根島には多くの宿がありますが、なかにはワーケーション用のスペースを設けているところも。もちろんWi-Fiのアクセスポイントも整っているので、宿で仕事をすることも可能です。
コワーキングスペースだけじゃない。島内の通信環境がサクサクすぎる!

式根島CWスペースでひとしきり仕事をした我々。ちょっと一息つこうと、気分転換に島内一高い絶景ポイント「神引展望台」へ向かいました。

頂上近くの駐車場まではレンタカーで移動。そこから5分程登れば、いきなり目の前に絶景が飛び込んできます。なんという開放感…!

頂上には休憩スペースとしてテーブルと椅子が。ちょっとした場所があればすぐに仕事をしてみたくなるライフハッカー[日本版]編集部としては、ここで仕事をしないわけにはいかない! ということで早速仕事をしてみることに。
なんとこの神引展望台、4Gの電波がガッツリ入ります。スマホでテザリングすれば、ノートPCでの作業もサクサク。こんな絶景を見ながら仕事ができるなんて、島ワーケーションの真骨頂ですね。
ちなみに、一部を除いて4G回線は島内の生活圏ほぼ全域をカバー。つながりにくい海岸地域と温泉付近には、公共のフリーWi-Fiが設置されています。島ワーケーションでの通信環境に対する不安は、式根島では全くないと言ってもいいでしょう。天気がよければ、ここでお弁当を食べて、仕事して…1日中過ごしたいと思うほどでした。

慌ただしい日々にゆとりを。身心を整える式根島での余暇
ワーケーションの醍醐味と言えば、いつもと違う環境で仕事をすることと、仕事以外のアクティビティを楽しむこと。オンとオフの切り替えはとても重要ですよね。
ということで、我々もそそくさと仕事を終わらせて、式根島を全力で楽しみました。そりゃもう、全力で。いろいろな楽しみ方がありますが、今回はその一部をご紹介します。
東要寺の説法体験で心の乱れを「整える」

式根島で唯一のお寺が「東要寺」。こちらでは、事前予約で体験できる住職による説法を受けさせてもらうことに。
住職は、普段はサーフィンや釣りを楽しむなど、かなりワイルド。片や語り口調はとても優しく、難しい話も楽しく、わかりやすく聞くことができます。


ためになるお話を受けて、普段頭脳労働で疲れ切っている我々の心の疲れやストレスがスーッとなくなっていくのを実感。普段訪れることの少ない寺社仏閣ですが、内観・客観視するきっかけを与えてくれます。
毎日バタバタしていると見過ごしてしまいますが、こうして自分と向き合う時間は大切なんだなとしみじみと感じる体験でした。
郷土料理で生活リズムを「整える」

筆者は長年フリーランスで働いているため、生活がかなり不規則。深夜や明け方まで仕事をしていることも多いうえ、食事の時間もまちまちです。
筆者の生活は極端ですが、リモートワークになって生活リズムが崩れてきたと感じる方は多いのではないでしょうか。不規則な生活は、身体だけではなく心の乱れも引き起こしてしまうものです。


島ワーケーションのメリットの1つとして、乱れた生活リズムを整えられる点が挙げられます。
毎日島で採れた新鮮な魚介類や郷土野菜が食べられることに加え、規則的な生活が送れるというのは現代人にとって重要なこと。自炊をする場合でも、島内の商店では本土ではあまり見ない地元の魚や野菜が売られており、楽しい気分にもなります。

また、宿の女将さんや同じ宿に宿泊する人々と会話をすることで、気持ちがとても穏やかに。郷土料理を通じて人との交流が生まれ、島の歴史や風土、文化を知ることができ、より島の魅力を感じられます。
慌ただしい日々に追われ、四六時中仕事のことで頭がいっぱい…という方もいるかと思います。でも、島ワーケーションで人間本来の生活リズムを取り戻すことは、心身の健康にとても大切なことなのではないでしょうか。
秘湯を訪れ、疲れのメカニズムを「整える」

式根島にはいくつかの温泉があります。そして、そのほとんどが無料で入湯可能。これはもう入るしかありません。
今回は、島民にも愛されている「松が下雅湯」を訪れました。

松が下雅湯は、式根島港近くにある無料の公共温泉。混浴で水着着用必須です。昼間に訪れてみると、「ほぼ毎日来ている」と語る島民の方の姿が。
広々とした海を見ながらゆったりと温泉に浸かっていると、身体から疲れが抜けていくのがわかります。やはり、こうしたリフレッシュは必要ですね。


冬の松が下雅湯にはもう1つの楽しみ方があります。それは夜に眺める星空。
天気のいい夜に温泉に入りながら見る星々は、ネオンの光が明るい都会では見られない壮大な景色。「星ってこんなに多いんだ」と改めて宇宙の広大さを実感しました。そうそう、生まれて初めて流れ星も見ました! なんだか明日からまた仕事もがんばれそう。

式根島での島ワーケーションは、新鮮かつ刺激的なことばかり。快適な環境で仕事をし、気分転換に島内を散策し、島民の方と触れ合いつつおいしいものを食べ、星空を見ながら温泉でゆっくり…あれ、これってとっても贅沢じゃないですか?
滞在中、式根島アカデミーの牽引者が次のように語ってくれたのを思い出しました。
「式根島でのワーケーションを通じて、島民と触れ合い、島の魅力を知っていただき、ゆくゆくは移住・定住にもつながるような“関係人口”を増やしていきたいです」
「またここに戻ってきたい」。そう思わせる、夢のような生活が送れる式根島でのワーケーション、ちょっとクセになりそうです。
東京本土から約1時間。アクセス良好な八丈島でのワーケーション
都心(羽田空港)から飛行機で約1時間というアクセスの良さが特徴的な八丈島も、ワーケーション先として人気が高まっています。
そんな八丈島で注目したのは、「Island and office 八丈島」。会員制のオフサイト専用オフィスで、2020年に開業したばかりのフレッシュな施設です。すべての部屋から森か海が見えるつくりとなっており、裏手には八丈富士があったりと、自然に囲まれた好ロケーション。
自然豊かな八丈島でのワーケーションは、一体どのようなものなのでしょうか? Island and office 八丈島の担当者に話を聞いてみました。
「チームビルディング」「バリュー・カルチャーシェア」に最適な環境

Island and office 八丈島は、企業向けのオフサイト専用オフィス。年間プランを契約すれば、その企業の社員が組織・個人単位で利用できます(※)。
※2/14(月)~4/15(金)の期間限定で1日単位で宿泊できる試泊プランも展開中。詳細はこちらを確認してください。

一棟貸し切り型で、最大8名までの利用が可能。1名用の個室が4部屋、4名まで利用できる大きめの部屋が1室あります。なお、個室にはモニターも備えられています。

ミーティングスペースには、55インチの大型スクリーンとプロジェクターが設置されているので、資料を投影しながらの打ち合わせも快適に行なえます。また、壁一面がホワイトボードになっているため、アイデア出しにも活用しやすいでしょう。
森の中のツリーハウスのような環境で、非日常感を味わえそうです。

さらに、屋上展望デッキからは八丈島の離れ小島・八丈小島を眺めることができます。11月から4月は海でクジラが泳ぐ姿が見られることも。こんな体験、東京本土ではなかなかできることではありません。これだけでテンション上がっちゃいそうです。


Island and office 八丈島が大切にしているのは、「圧倒的な非日常体験をつくる」こと。そんな濃密な時間を人々と共にし、体験を共有することを通して、相互理解や良好な人間関係の構築促進に役立ててほしいと語ります。
事実、企業の部署単位やプロジェクトメンバーで訪れ、合宿のように利用されることが多いよう。たとえば、新規プロジェクトのマネージャーたちによるチームビルディングやバリューシェア(ミッションやビジョンなど、組織の存在意義や目指す姿を共有すること)、エンジニアのハッカソン(プログラマーなどの開発関係者が、 短期間で集中的に開発作業を行なうイベント)などに使われたりと、離島でのある意味隔離された環境で過ごすことで、集中してミッションに取り組めるはずです。
もちろん、仕事が捗るというだけではありません。Island and office 八丈島では、地元の食材を使った出張シェフによる夕食・朝食を追加料金なしで提供。さらに、夜はおいしいごはんを食べながら焚き火を囲むこともできます。
「食事が一番よかった!」という利用者も多く、朝採れたての魚や野菜をふんだんに使った夕食は大好評。また、焚き火は人の心をリラックスさせる効果があるようで、普段仕事でしか顔を合わさないメンバーが心から打ち解け合えるんだとか。
自然体験で感覚を呼び覚ます。「非日常」を味わう八丈島でのオフタイム
前述の通り、ワーケーションは、仕事だけではなくオフタイムを楽しく過ごすことも目的の1つ。もちろん八丈島には豊かな自然を生かしたアクティビティがたくさんあります。
なかでも人気のアクティビティは次の2つ。
八丈富士登山

標高854.3mの伊豆諸島最高峰である八丈富士。
八丈富士ハイキングの定番コースは、7合目付近からスタートし、およそ55分かけて頂上へ。八丈富士はカルデラとなっており、頂上をぐるりと回るお鉢巡りも楽しめます。また、カルデラを10分程降りていけば浅間神社を訪れることもできます。
ヘゴの森散策(裏見ヶ滝)

八丈島の森には、ヘゴシダが群生しています。そのヘゴの森を地元ガイドと散策するツアーです。まるで恐竜がいた時代の世界に迷い込んだような気分になるのだとか。
裏見ヶ滝は、ヘゴの森にほど近いところにある小さな滝。滝を裏側から見られるという、珍しい体験ができます。近くには無料の温泉(水着着用必須)があるので、そちらで温まるのもいいかも。
なお、島の中心部にはレストランや居酒屋などの飲食店も賑わっているので、自然でのアクティビティが終わったら、ふらりと出かけて地元の味を堪能することもできますよ。
「新たな気づき」「本質を捉えるきっかけ」が生まれる八丈島

実際に八丈島でのワーケーションを行なった方々からは「絶対オフィスでは出てこないアイデアが出てきた」といった声が多いそうです。
自然のなかにいると五感が刺激され、感じ方が変わったり、気づきを得られたりするのはよくあること。オフィスのほうが生産効率は高いかもしれませんが、アイデアを練ったり、メンバーと密な議論をしたりというシーンでは、雄大な自然に囲まれた環境に身を置いたほうが思いもよらない意見が生まれてくるようです。
ワーケーション施設は本土にも多数ありますが、やはり「いつもの生活の延長線上」のように感じてしまいます。
他方、飛行機に乗って遥々離島に赴けば非日常感が高まり、刺激を受ける感度も強くなります。そうした状況下でアイデアを出し合えば、意外な答えにたどり着くのかもしれません。

B to Bサービスとして展開しているIsland and office 八丈島は、どのような企業に八丈島でのワーケーションを実践してほしいと考えているのでしょうか? 最後にその想いを聞きました。
「人を大切にしている会社ですね。
かつては『条件』が会社を選ぶ基準でした。一方、そうした働き方は終わり、『やりがい』『社会貢献度』で仕事を選ぶ人が増えるなか、個人の価値観と、会社のミッション・ビジョン・バリューが重なってくる時代にシフトしつつあると思います。
2025年には、ミレニアル・Z世代が労働人口の半数を占めるなかで、個人の幸せを意識した経営が求められる時代になってきています。
リモートワークの普及で働き方が自由になった分オーバーワークになってしまった、エンゲージメント低下の兆しが見られる、会社のカルチャーが浸透しづらくなったという課題を持つ企業に、ぜひ我々の施設も活用しながらワーケーションを試していただければうれしいです」(担当者)
非日常感や新たな気づきを与えてくれる八丈島でのワーケーション。
「本質的に大切なことに目を向けるきっかけをつくってくれるのが、八丈島の最大の魅力」と語ってくれた通り、雄大な自然に囲まれた八丈島は羽田空港からわずか1時間とは思えないほど、都会の喧噪とかけ離れた、言わば異世界。
この島で過ごせば、いつもの忙しい日常を忘れ、本当に大切なことに向き合う時間を提供してくれるのと同時に、普段とは異なる非日常に身を置くことで新しい感覚を呼び覚ましてくれることでしょう。
***
式根島と八丈島から見えてきた「島ワーケーション」の実態。
いつもと違う環境で仕事がしたい。喧騒から離れて毎日にゆとりを持たせたい。非日常を味わいたい。チームの親睦を深めたい──。そんないくつもの「想い」を叶えてくれるのが、東京宝島での「島ワーケーション」。
都会を離れて、島にひとっ飛びしてみませんか?
Source: 東京宝島, 式根島CWスペース, Island and office 八丈島