新型コロナウイルスの蔓延から2年近くが経とうとしていますが、多くの不確実性に対応する状態が続いています。

私たちは、パンデミックの終焉に備えつつあるのでしょうか? あるいは、いつまでもパンデミックと付き合っていく方法を考えなければならなくなるのでしょうか?

オフィスワークへの回帰を計画しているところでしょうか? それとも、在宅勤務を続けるべきなのでしょうか?

不確実性のなかで生活していると、特に「自分ではどうしようもない」と思う場合にモチベーションが急激に低下することがある、と『Get it Done: Surprising Lessons from the Science of Motivation』の著者であるAyelet Fishbach氏は語ります。

自分が罹る可能性はコントロールできるにもかかわらず、人によっては、パンデミックは制御不能だと感じています。

私たちは、「無力感」という言葉を使って、人々が自分の状況を変えようとしない理由を理解しています。

「運命から逃れることはできない」と考えてしまうのです。これは、不確実性の影の側面です。行動が少なくなるのです。

不確実性が「良いもの」となる場合

一般的に人は不確実性を嫌うものですが、それが見返りに関連づけられると逆の効果を発揮して、モチベーションを高めてくれる可能性があるとFishbach氏は語ります。

私たちは、報酬が不確実な時のほうが懸命に働く傾向があります。

行動学者たちは以前、動物を使って不確実な見返りの影響をテストを実施。

テストでは、2つの報酬スケジュールをつくりました。1つは、動物が正しい反応をするたびに報酬を得られる連続的なスケジュール。もう1つは、その行動を行なっても一部の場合にしか報酬を得られない断続的なスケジュールです。

意外なことに、断続的なスケジュールのほうがうまくいくのです。

動物は、いつ報酬がもらえるかわからないと、希望を持ち続けて指示されたこと(座る、その場に留まる、静かにする、またはこちらに来る)をおやつが差し出されなくなってもやり続けます

報酬が不確実であることは、人間にとってもモチベーションになります

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスで行動科学とマーケティングの教授を務めるFishbach氏は、不確実な見返りの影響を調べる実験を同僚と共同で行ないました。

参加者には、2分間で約1.5lの水を飲んでもらいました。参加者の中には、2ドルの固定報酬が与えられる人たちと、コイントスで決まる、「1ドルか2ドル」という不確実な報酬が与えられると言われた人たちがいました。

すると、不確定な報酬を受け取るグループのほうが制限時間内に水を飲む人が多かったのです。

努力が報われるかどうかわからないから、それを知りたいと思うのです。

不確実性そのものは楽しいものではありません。暗闇の中にいるのが好きな人はいません。

しかし、不確実性が解消され、努力の成果を知り、それによって暗闇から光へと移行するということには、心理的に満足感があるのです。

アスリートは、勝利が決して確実ではないという事実にもかかわらずモチベーションを維持しているのではなく、その事実があるからこそのモチベーションなのです。

不確実性を上手く活用する方法

幸いなことに、見返りが不確実なことはよくあります。たとえば、仕事に応募したり学校に出願したりする時は、成功するかどうかわからないため、がんばろうという気持ちになるでしょう。

また、不確実性を利用して、完全に達成できるかどうかわからない目標を設定することで、夢や決意を実現するモチベーションを高めることも可能です。

たとえば、マラソンランナーを対象とした研究では、4時間をわずかに超えてゴールする人よりも4時間の直前でゴールする人のほうが多いことが分かりました。

これは、「4時間以内にゴールする」という目標を立てて挑戦しているからです。

多くの人にとって、達成できるかどうか確信が持てません。それが刺激とモチベーションになって、多くの人が目標をちょうど下回るのです。

目標を達成できない日もあるでしょう。確信が持てないからこそ、物事はやり甲斐があり、刺激的なのです。

Fishbach氏は次のように語ります。

今後は不確実性を受け入れましょう。そうすることでモチベーションが維持されるのです。

Source: Amazon.co.jp, American Psycholocical Association, NBER

Originally published by Fast Company [原文

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