私は本が大好きです。本を1冊も買わずに書店を出ることなどできません。でも、せっかく買った本をちゃんと読まないことが多々あります。読んでいる途中で、何か別のエンターテイメントに気がそがれてしまうのです。
そこで、本をもっと読めるように、習慣を少し変えてみたところ、けっこううまくいったので、今回は私が何をしたかを紹介したいと思います。ちなみに、速読は必要ありませんよ。
読書しやすい環境をつくった
まず第一に取り組んだのは、読書しやすい環境をつくることです。私は電気に似ています。できるだけ抵抗の少ない道を選ぼうとするのです。
行く手に障害物があると、すぐにあきらめ、もっと楽にできて、その瞬間は同じくらいの満足感を得られるものに、つい手を伸ばしてしまいます。たとえば、テレビをつけたり、スマホをいじったり、ビデオゲームで遊んだり、寝るまで食べ続けたりするのです。
このクセを直すのに、ソフトウェアの著作権侵害に関して誰かが言った次の言葉が参考になりました。
海賊行為をなくすには、コンテンツを違法にダウンロードするよりも、買うほうが楽だという状況をつくらなければならない。
つまり、私が本を読まなくなっているのは、読書しづらい状況になっているからだと気づいたのです。読書灯のスイッチが、ベッドから手を伸ばしづらい場所にありました。スイッチをオン・オフするのに、いちいちベッドから出なければなりません。
また、私のベッドはかなり高さがあるうえ、ちょうど窓台があるところに設置してあったので、顔の上で本を開いておくのに疲れても、上体を起こした姿勢がうまくとれませんでした。
そして最悪なのは、部屋の中に大画面テレビが置いてあったことです。毎晩寝る前に、『ボブズ・バーガーズ(米国の人気アニメ)』を見る代わりに読書をするなんて、できるわけがないですよね?
そこで、読書灯を適切な位置に移動し、バックライト付きのKindle Paperwhiteを入手しました。ベッドの位置を動かして、上体を起こした姿勢が快適にとれるようにしました。もう、本を顔の上に落とす心配はしなくてすみます。
テレビは部屋から追い出しました。それだけでも絶大な効果がありました。また、ゲームもよそへ移動し、ベッドの近くにスマホを置かないようにしました。これで、読書をするときに、近くに誘惑するものが何もない状態になりました。
いまや、この部屋でできることは、ごく限られたことだけです。本を読む、音楽を聞く、眠る。以上です。読書に最適な環境をつくることで、これまでよりいっそう本に集中できるようになりました。
常に本を持ち歩くことにした
以前、「1冊の本を1日で読み終える方法」という記事で、どこにいても本を取り出せるようにするとよいと書きましたが、私が本当にどこへでも本を持ち歩くようになったのは、Harvard Business ReviewでNeil Pasricha氏が書いていた、スティーブン・キングのエピソードを読んでからのことです。
...かつてスティーブン・キングが、1日に5時間くらいは本を読むといいよ、と人びとにアドバイスを送ったことがありました。私のある友人は、「そんなばかな。そんなことできる人いるか?」と呆れていました。
それから何年かたち、その友人が休暇旅行でメイン州を訪れたときのこと。友人は映画館の外で、ガールフレンドと一緒に列に並んでいました。すぐ前に並んでいたのは誰か? スティーブン・キング!
キングは列に並んでいる間、ずっと本を読んでいたそうです。映画館に入っても、スティーブン・キングは照明が落ちるまで本を読み続けていました。そして、照明が戻ると、すぐに本を引っ張り出したそうです。そしてなんと、本を読みながら映画館を出ていったそうです。
この話を聞いたとき、1日の中で使える時間がそこかしこに隠れていることに気がつきました。それから私は、どこへ行くにもKindleを持っていくようにしました。スマホを取り出してTwitterをスクロールしたり、気が滅入るようなニュースを読み漁るかわりに、Kindleを開くようにしたのです。
もちろん、スマホでも電子書籍を読むことは可能ですが、ほかのアプリや通知に注意が奪われるのは目に見えています。Kindleは決して持ち歩きやすいデバイスではありません。後ろポケットにはまず入りませんし、車の中によく忘れてしまいます。それでも、なるべくいつも手元に置くようにし、いつでも読書を始められるようにしています。
オーディオブックで聴くという方法もあります。とくに通勤時間を活用したい人には便利でしょう。でも、私自身はあまり使いません。朗読者の声に読書体験が左右されてしまうからです。
また1人のライターとして、私は物語の文法的な構造をじっくりと観察するのが好きなのです。耳で聴くだけでは、それは難しくなります。とはいえ、これはあなたの問題ではないでしょうから、もしオーディオブックが自分にとって便利なら、ぜひ活用してください。
楽しめない本は投げ出してもOK
私は読書に関してかなり執着があるタイプです。読みかけた本は最後まで読み通さなければならないと頑なに信じていました。
本を読み通せないのは、「根気がない」、あるいは「頭がよくない」からだと思っていたし、途中で読むのをやめてしまうと、「文化的に意義深いものを取り逃がした」ような気持ちになったものです。
しかし、そんなのクソ食らえです。本を楽しむのも、テレビや映画を楽しむのも、何ら変わりはないはず。ある番組が面白くなければ、見るのをやめ、ほかの番組に変えます。同じように、ある本が面白くなければ、読むのをやめ、他の本を読めばいいのです。
読書とは、喜びと価値を得られる体験のはずであり、けっして労働のようなものではありません。読書を労働だと考えるのをやめれば、気分はずっと楽になります。読書が楽しいなら、必然的にもっと読みたくなるはずです。
『Infinite Jest』(デヴィッド・フォスター・ウォレスの長編小説)を途中で投げ出したってOKです。ただ本を閉じてください。誰もあなたを裁いたりはしません。それでいいのです。本当に"読みたい"本を持って、街に出かけましょう。
並行して読むのは3冊(だけ)にした
1冊の本を2〜3日で集中的に読み通してしまう人もいます。私にはできません。飽きてしまって、チャンネルを変えたくなるんです。
私は、ニコロデオン(キッズ向けのTVチャンネル)に洗脳されたミレニアル世代なのです。いつも何冊かの本を並行で読んでいます。本を切り替えながら読むことで、新鮮な気持ちで本に向かうことができます。
とはいえ、以前の私はちょっとやりすぎていました。あまりに多くの本を同時に読み進めようとしていたのです。結果、ストーリーを追うことができなくなって、読書が面倒な雑用のようなものになっていました。
今は、同時に読むのは3冊までと決めています。フィクションを1冊、ノンフィクションを1冊、そして、コミックを1冊です。新しい本を手にとるのは、どれか1冊を読み終えるか、放棄したときだけです。
本を話題にする
私は何かについて話すほど、ますますそれにのめり込むところがあります。ですので、話のネタとして、映画やテレビよりも本を積極的にとりあげることにしました。
友人と雑談をするときも、真っ先に、今読んでいる本の話をします。そうすると、さらに読書が楽しくなるし、友人が素晴らしい本を紹介してくれたりもします。
こうして、「本を読む、本について話す、本に夢中になる、もっと本を読む、本って最高!」というサイクルが回りだすのです。
読んでいる本について誰かと話すと、ちょっとした責任感が生まれてきます。「最後まで読まないと、根気がない人と思われちゃうかな」とか、「あの本どうだった?と聞かれるかもしれないから、終わりまで読んでおかないとな」などという考えが頭に浮かんできます。
とくに、友人から勧められた本を読んでいたり、友人と同じ本を同じ時に読んでいるときなどは、プレッシャーは倍増します。ちゃんと読んでおかないと、友人とディスカッションができなくなるからです。それこそが私の最大の楽しみなのです。
読み始めたら「サイクルを完了させる」
私は家をきれいに保つために、「サイクルを完了させる」というルールを守っています。簡単にいえば、「始めたことは終わらせる」「元通りにする」「今できることを後回しにしない」ということです。このルールを読書にも適用してみたところ、驚くほど効果がありました。
本を読むときには、常に「サイクルを完了させる」ことを目指します。「サイクル」は、読書を始める前に決めたものであれば、どんなものでもかまいません。
たとえば、20分のタイマーをセットして、その間は気を散らさずに読書に集中する、でもいいでしょう。あるいは、今読んでいる章を読み終える、でもいいし、今回は何ページ読む、と決めておくこともできます。
それが何であれ、事前に決めたことはやり遂げるようにします。たいていは、読書に没頭して、最初に立てた計画よりもたくさん読むことになります。
私は読むのが速い方ではありません。ストーリーが理解できず、何度も同じところを読み返すこともあります。しかし、上で紹介した戦略を実行することで、読まずに積んであった本を、さほどの苦労を感じずに、順調に消化することができました。
これらのヒントがあなたのお役にたつことを願っています。それでは、今回はこのへんで。私は読書に戻ります...。
Image: Shutterstock/訳:伊藤 貴之
──2019年10月10日の記事を再編集のうえ、再掲しています。