ニューノーマルの、その先へ。社会全体が再起動に向かっている今、個人もこれまでの歩みを振り返り、未来に向けて自らの仕事や人生を改めて設計するタイミングではないでしょうか。
「自分だけのニュースタンダードをつくろう」特集では、新しいステージへの挑戦を始めた人の物語や、自分らしいワークプレイスのつくり方、必ず達成できる目標設定術まで、キーパーソンに徹底取材して、自分だけのライフハックを見つけるヒントをお届けします。
第1回は、「学ぶに勝る投資なし」特集で独自の学び方を紹介してくれた本山勝寛さんが登場。前編では、長期的な「人生50年計画」と、毎年年始に掲げる「スローガン」で人生を見つめながら目標を達成し続け、昨年「40歳で起業」を実現した本山さんのエピソードを紹介しました。
後編では、より具体的な目標の立て方と、必ず達成するためのポイントについて聞きました。
本山勝寛(もとやま・かつひろ)

1981年、大分県生まれ。12歳のときに母親を亡くし、中学3年より新聞配達のアルバイトを始める。高校時代、父親は慈善事業で海外へ赴き不在に。アルバイトで自活する“極貧”生活を送りながら、高校3年に上がる直前に東京大学受験を決意。独学で東京大学工学部に現役合格。さらにハーバード大学教育大学院への留学を果たし、修士課程を修了。独自の勉強法を記した『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイアモンド社)や『最強の暗記術』(大和書房)など、多くの著書を持つ。2021年11月、14年勤めた日本財団を退職し、株式会社4kizを創業、代表取締役CEOに就任。子ども向けSNSプラットフォームの開発とローンチを目指す。
「情熱と戦略」を目標に落とし込む
目標とひと口に言っても、「英語が話せるようになりたい」「痩せたい」と掲げるだけでは、実現させるのは難しいもの。本山さんがあることを実現したいと思ったときに、必ず行なうのが「SMARTの法則」に基づいた目標設定です。
この「SMART」とは、「Specific(具体性)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限)」の頭文字をとったもので、この法則に則って目標設定をすると、より実現に近づけるとされています。
たとえば、「英語が話せるようになりたい」という目標を「SMART」の法則にあてはめてみると、以下のようになります
- S:年内にTOEICで900点獲得を目指す。
- M:そのためには、今自分が何点程度の英語力なのか、知る必要がある。まずは4月にTOIECを受けよう。
- A:8月には800点になっていると、達成も現実的だ。
- R:TOEICで900点が取れれば、海外駐在の機会に近づける。
- T:「年内に」ということは、12月に結果が通知される11月の試験に向けて勉強しよう。
「英語が話せるようになりたい」というあいまいな目標よりも「年内にTOEIC900点を目指す」「次の誕生日までに、映画を字幕なしで観られるようになりたい」と具体的に落とし込んだほうが、達成に近づきやすくなります。
また、「SMART」で目標を考えたとき、本山さんが大切にしてほしいと強調するのが「 Relevant(関連性)」の部分。TOEICで900点を取ったその先に、どんなワクワクが待っているかを想像します。
目標を実現させるためには、前編でも話した「情熱」に加えて「戦略」が必要になります。自分が心から達成したいと思える目標であること、その達成のためにSMARTを当てはめた戦略を立てること。この2つが目標達成の肝となります。
目標を一日単位にまで細分化し、毎日目標を達成する
毎日2時間早起きして、問題集を10ページずつ解こうと目標を立てたのに、昨日も一昨日もできなかった…。そんな場合でも「できない自分を責めてはいけない」と本山さん。自分が悪いのではなく、目標の立て方に問題があるかもしれないからです。
問題集のノルマができなかったとため息をつき、そのままフェードアウトなんてことにならないよう、立てた目標は定期的に見直し、柔軟に軌道修正することが大切。
たとえば先ほどのTOEICの目標も、最低でも月ごと、できれば1週間、1日単位で見直していくのがベストだそうです。
本山さんは7年ごとに人生のテーマを設定していることを前編で紹介しましたが、1年ごとにその年のスローガンを決め、四半期、月ごと、1週間、1日と切り刻み、「毎日PDCAを回しています」とのこと。
PDCAとはご存じのとおり、「Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)」という業務改善のフレームワーク。
この「C」に重きを置いて振り返り、日々目標を達成していく。そしてそれを繰り返していくこと。状況に応じてプランを柔軟に修正しながら、粘り強く取り組み続けるのです。
うまくいかない理由を、決して自分の能力のせいにはしてはいけません。改善の余地は必ずあるはずです。
目標を「公言」することの2つのメリット

本山さんが目標を達成するために意識しているのが「公言すること」。それはこれまでの経験でも実感しているそうです。
私が公言するようにしている理由は2つです。まず、まわりに言うことで退路を断ち、自分を追い込むため。それによって達成したいという思いも強くなりますし、モチベーションも高まります。
もうひとつは、応援してくれる人を増やすため。目標や夢を公言することで、周囲からいろいろなサポートを受けて思いを形にしてきたことがこれまでにもたくさんあったのだとか。
特に日本人は奥ゆかしいというか、思いをあまり言いたがらない人が多いと思います。私も本当は恥ずかしがりなのですが、あえて言うようにしています。
そのほうが手を差し伸べてくれる人が現れて目標達成に近づくという面もありますが、夢や目標を気兼ねなく共有し合える社会のほうがいいと思うからです。
SNSの活用も一種の“公言”。文字や写真などで自分の思いや進捗をオープンにし、共感を得たりフィードバックをもらったりすることで、モチベーションの維持にもつながるそうです。
ときには優先順位をつけ、取捨選択するべき
本山さんは、18歳のときに「人生50年計画」を立て、以来「絶対に叶えよう」と決めたことは100%達成できているそうです。ハーバード大への留学は、一度不合格になりましたが、目標達成への道筋を見直して、夢を叶えています。
そして今、40歳。「経営者としての確立」をテーマにした40〜46歳を送るために昨年独立。起業するために優先順位を下げたものあるそうです。目標を達成させるために、必要となるのが「取捨選択」。
私の場合、優先順位を下げられないものは、40歳で起業するという目標と家族でしたので、まず前職を退職するという取捨選択をしました。
また、1年に1冊ペースで本を出版していましたが、昨年は執筆の優先順位を落とし、決まっていた出版の企画を保留にしてでも、起業の準備に全集中しました。
目標の難易度やかかる時間に応じて、複数を並行していくのか、他を後回しにして1つに集中するのかという判断も必要になってくると思います。
「40歳で起業する」という計画を実現させた本山さんの次なる目標は「会社を7年以内に上場させること」。
海外にも進出し、日本を代表する社会的企業になっていくことが当面の目標で、現在は子ども向けSNSの開発計画や資金調達、パートナーシップ作りのために、目標を立てては見直して…を繰り返す毎日だそうです。
本山さんの話を聞いていると、「人生は自分の手で組み立てられる」という勇気のような気持ちが湧いてきます。その一歩が「目標設定」と言えるのかもしれません。
すでに夢や目標がある人は、さっそく「SMART」に落とし込んでみてはどうでしょう?
「掲げるものがない」という人だって、日々頭をよぎる「旅行したいな」「自分の時間がもっと欲しい」といった希望を書き出してみると、それは自分が漠然と抱いていた夢や目標だったことに気づけるのではないでしょうか。
本山式目標達成術 5つのポイント
●目標は「情熱」を持って取り組めるものを設定。
●「SMARTの法則」にあてはめて、測定可能な数値や期限を具体的に盛り込む
●年間の計画を1カ月ごと、1週間ごと、最終的には毎日の目標にまで細分化して落とし込み、「毎日目標を達成」していく
●思った通りに進まなかったときは、自分を責めるのではなく戦略を柔軟に見直す。粘り強くPDCAを回し続けることが大事
●複数の目標があるときは、優先順位を決めて「必ず達成したい目標」に絞る