楽しかった雑談を振り返ってみたとき、「なにを話したかはよく覚えていないけれど、味わった気分はずっと覚えている」と感じることがあるかもしれません。したがって「“おもしろい話”を展開する必要は一切ない」のだと主張しているのは、『劇的にコミュニケーション力が上がる 大人の雑談力』(桐生 稔 著、リベラル社)の著者。

それよりも、「なんだか話しやすかった」「一緒にいて楽しかった」「自然に会話が盛り上がった」というような“感情とムード”をつくれる人こそが、雑談の達人だというのです。

つまり本書ではそうした考え方に基づき、感情を演出するための方法を明らかにしているわけです。とはいえ難しいことではなく、ほんの少し工夫をするだけでOKなのだとか。一例を挙げてみましょう。

Aさん:「映画よく観ますか?」

Bさん:「あまり観ないです」

Aさん:「そうですか」

Bさん:「……」

(「はじめに」より)

これでは会話が終了してしまいますが、もうひとこと足してみると…。

Aさん:「映画よく観ますか?」

Bさん:「あまり観ないです。ただホラーは好きです」

Aさん:「え、ホラーですか?」

Bさん:「そう、怖いのに思わず観ちゃうんです」

(「はじめに」より)

ワンワードを加えるだけで、会話が続く素材がテーブルにのるわけです。こうした“ちょっとしたアイデア”のなかから、きょうはビジネスに役立ちそうなものを2つピックアップしてみましょう。

気まずい沈黙を打ち破りたい

沈黙は気まずいものなので、会話が途切れるとつい慌てて他の話題を考えてしまいがち。しかし、それは避けるべきことのようです。

A 今日は防災の日ですね。

B そうですね。(沈黙)

A えーと、9月ってお月見もありますね。

B そうですね。(沈黙)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

A 最近、コーヒーにハマってるんです。

B そうなんですね。(沈黙)

A 実は、ジョギングも始めたんです。

B そうなんですね。(沈黙)

(38ページより)

ここから推測できるのは、話題がコロコロ変わると相手も反応しようがなくなるということ。そこで、「前にしていた話題に戻す」ことを心がけるべきなのです。

A 今日は防災の日ですね。

B そうですね。(沈黙)

A そうそう、防災の日といえば、最近の非常食はすごくおいしいんですよ。いろいろ備蓄してます。

B そうなんですか? 例えばどんな?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

A 最近、コーヒーにハマってるんです。

B そうなんですね。(沈黙)

ということは、自分でラテアートとか作っちゃうとか?

A ちょっと挑戦しようと思ってるんです。

(39ページより)

沈黙が訪れたときは、いままでしていた話のなかから、新しい展開ができる話題を見つけ、「そういえば」や「その話で思い出しましたけど」などとつなげると、再び話しやすい空気になっていくわけです。

また、前の話はきっぱり忘れ、最近自分の身近に起こった体験談や思ったことを「実は最近こんなことがあって」と話し始めるのもおすすめだそう。いずれにしても、まずは落ち着いて、ゆっくり低い声で話すことが大切。そうすれば、話しやすい空気がつくれるわけです。(38ページより)

テレワーク中に雑談したい

テレワーク中に雑談したいときに避けるべきは、その都度、共有したいことをつぶやくこと。例を挙げてみましょう。

オンラインチャットで

A この案件について、何か意見ある人?

B あ〜疲れたなぁ。ちょっと休憩しない?

A え……まだ話途中だけど。

B いいじゃん、堅苦しいこと言わずに。

C 私も疲れた。昨日夜更かししすぎて。

B 何かやってたの?

C うん、新作のゲームに夢中でさ。

A あれ、Dさんいる? コメントないよ。

D えっ? ちゃ、ちゃんと見てるよ。

(50ページより)

それぞれが好き勝手なことを話してしまっているわけです。こういう状態を避けるために大切なのは、「雑談タイムや雑談チャンネルを設ける」こと。

オンラインチャットで

A だいぶ話しましたね。ちょっとだけ雑談タイムにしませんか。

B 実は、最近テレワーク中の癒しが一つ増えたんだ。

C なになに? 教えて。

B ハンドドリップコーヒーをはじめたの。

A 自分でコーヒー豆をひいていれるやつ?

B そうそう、手間はかかるけどちょっとした気分転換にぴったりなんだ。

C 香りでアロマ効果もありそうだね。

D アロマといえば、私は香水にハマッてる。

(51ページより)

テレワークをするケースが増えた近年は、対面での雑談の機会が減ったため、以前とは違うコミュニケーションのとりかたに悩んでいる人が少なくないのだとか。

そこで著者がすすめているのが、SNSやウェブ上のワークスペース内で時間を区切って雑談すること。相手が見えないからこそ、「この時間は雑談だ」とことばにして共有すれば、ダラダラ話が続くこともなくなるわけです。また、話に加わりたくない人は、一歩下がって静観することも可能。(50ページより)

良好な人間関係は、良質なコミュニケーションを通じて生まれるもの。そこで役立つのが、人間関係を豊かにする潤滑油としての雑談です。だからこそ本書を参考にしながら、そのコツを身につけたいところです。

>>【最大50%還元】Kindle本「冬キャンペーン」対象本はこちら(3/3まで)

>> 「Voicy」チャンネルでは音声で「毎日書評」を配信中【フォロー大歓迎】

Source: リベラル社/Photo: 印南敦史