すべての人は成功と幸福を求めている。あなたは、自分の成功と幸福に他人が重要な役割を担っているという事実について、考えたことがあるだろうか?

私たちはたいてい他人との関わりを通じて成功を収める。幸福をどう定義しようと、それは他人とどんな関係を築くかに大きく左右される。(「はじめに」より)

心理カウンセラーである『人望が集まる人の考え方』(レス・ギブリン 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー携書)の著者は、このように述べています。そして本書を通じ、「自分が他人になにを求めているか」を冷静に考えてみようと提案してもいます。

ここで伝えようとしているのは、人間の実際の行動パターンに関する洞察であり、それを活用し、自分が求めているもの(昇給や取引、あるいは好意など)を得る方法。

昔から「知は力なり」と言われてきた。たしかにそのとおりだ。人間の本性についての正確な知識を身につけて実践すれば、あなたは求めているものをいつでもどこでも手に入れることができる。(「はじめに」より)

机上の空論を排し、長年の経験のなかで培ってきた人間関係についての技術を紹介しているのだとか。また、それは大勢の人の人生で証明されてきたものでもあるそうです。

きょうはそのなかから、Part 1 第2章「人を動かす基本的な秘訣」に焦点を当ててみたいと思います。

人間関係の4つのルール

相手が上司や部下、同僚、友人、知人であろうとも、あるいはパートナー、子ども、親だったとしても、人と関わるときは次の4つのことを肝に銘じる必要があると著者はいいます。

1 すべての人は程度の差こそあれ自分本位である

2 すべての人は自分に最も強い関心を抱いている

3 すべての人は自分が重要だと感じたがっている

4 すべての人は他人に認められたいと思っている

(36ページより)

つまり、すべての人は自分の自尊心を満たしてほしいと強く思っているということ。したがって、その願望がある程度満たされて初めて、自分のことを「忘れ」、他人に意識を向けられるようになるわけです。

また注目すべきは、著者がここで「人は自尊心が満たされないと他人に対して批判的になる」と指摘している点。

従来、自己中心的な人は自尊心が強すぎると信じられてきたのではないでしょうか? だからこそ、その人の高慢な鼻をへし折ることが最善の策だと考えられてきたという部分があったわけです。

ところが、それがうまくいったためしがないのも事実。それどころか、結果的には相手の敵意をあおってしまうことになる可能性すらあります。

そういうやり方がうまくいかない理由は単純明快である。臨床心理学の研究で、自己中心的な人は自尊心が高すぎるのではなく低すぎることがわかったのだ。

自分との関係がうまくいっているなら、他人との関係もうまくいく。自分との関係がうまくいっておらず、他人との関係もうまくいっていない人は自尊心が欠如しているので、自尊心を取り戻すことが唯一の解決策となる。(37ページより)

自分を少し好きになれれば、他人のことも少し好きになれるというシンプルな考え方。いったん自分に対する強い不満を乗り越えれば、他人に対して批判的で無くなり、“寛容の精神”を発揮できるようになるわけです。

このことに関しては、もうひとつ興味深いトピックが紹介されています。問題を抱えた大勢の人を対象にした臨床心理学の研究によると、自尊心を満たしたいという思いは、空腹を満たしたいという思いと同じくらい自然で普遍的だというのです。

なぜなら、どちらも自己保存を目的にしているから。身体が食料を必要としているように、自尊心は敬意と承認と満足感を必要としているということです。

空腹で苦しんでいる人は、食べることによって自分の最大のニーズを満たさなければなりません。他のことに意識を向けるのは、あくまでもそれから。

そして同じことは、自己中心的な人にもあてはまるわけです。健全で正常な性格である限り、自分を受け入れて認める必要があるのです。

だとすれば、そんなときに「自分のことは忘れなさい」とたしなめられたとしても無意味。なぜなら自尊心が満たされない限り、自分のことを忘れることはできないから。しかし、いったん自尊心が満たされれば、自分のことを忘れて他人のニーズに意識を向けることができるわけです。(36ページより)

気難しい人には「ほめことば」をかける

数ある人間関係の悩みのなかでも、なかなか難しいのは「気難しい人」とどう接するかということではないでしょうか?

この問題について著者は、「気難しい人に対処する効果的な方法は、たったひとつしかない」と断言しています。それは、その人が自分自身をより好きになるのを手伝うこと。傷ついた自尊心を癒す作業を手伝えば、相手はおとなしくなって突っかかってこなくなるというのです。

自尊心が深く傷ついている人は、腹を空かせた猛犬のようなものだ。どんな猛犬も餌を与えてもらえば、吠えたり咬みついたりしなくなる。

人間関係も同様で、心のこもったほめ言葉をかけて相手の自尊心を満たせば、気難しい人に対して大きな効果を発揮する(普通の人に対して効果があることは言うまでもない)。(42〜43ページより)

重要なポイントは、「心のこもった」という部分ではないでしょうか? 型にはまったことばを機械的に並べるのではなく、心をこめて相手にほめことばをかける。それが、大きな効果をもたらすということです。

そこで著者は、他人について“称賛できるささいなこと”を探してみようと記しています。毎日、少なくとも5つのほめことばを周囲の人にかける習慣を身につけるべきだとも。そうすれば、人間関係が大きく好転することを実感できるはずだというのです。(42ページより)

人間の本性を詳しく説明したうえで、具体的な応用法を紹介した一冊。それは大昔から現代まで一貫して成果を上げてきた普遍的なテクニックなのだそう。困難な人間関係を円滑にするために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

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Source: ディスカヴァー携書/Photo: 印南敦史