目的思考』(山梨広一 著、すばる舎)の著者は、マッキンゼー・アンド・カンパニー・シニアパートナー、イオン株式会社専務、LIXILグループ社長などを経て、現在はイオンを筆頭とする数社の顧問、東京大学EMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)のエグゼクティブ・ディレクターなどを務めている人物。

ここ数年はそうした経験を通じ、本書のタイトルでもある「目的思考」を強く意識するようになったのだそうです。

経済的、社会的環境のグローバルな変化の影響を受け、これまでのルールや常識が通用しなくなった昨今では、多くの新たな価値観が次々と現れています。また同様に、ビジネスに取り組む目的も大きく多様化しています。

だからこそ、目的設定の重要性と、その目的を設定する際の目的思考について考えるようになったというのです。

たしかにこれまでは、体操競技やフィギュアスケートでいう「規定演技」さえクリアできれば、それが成果につながっていたのかもしれません。

ところが、いまや規定演技よりも「自由演技」での力量が問われる時代。かつてないユニークな演技でファンを喜ばせるほうが価値が高まるという、新たな価値観が登場してきたわけです。

決められたルールやものさしを使って行う規定演技ではなく、文字どおり自分の自由な判断で演技内容を決めて行う自由演技になったとき、どのような判断でどのような到達点を目指すのかを自分で決めて、それを示す必要が生じる。

つまり、自分自身で「目的」を設定し、その目的を達成し、その結果生じる成果まで一連の責任を持つことが求められている。そうなると、目的を設定する能力そのものが極めて重要になるのではないか。そういう発想に至った。(「はじめに」より)

目的思考の概念を定義すると、「物事の成果を決める最大の要因は目的だから、それを第一に考える思考方法」ということになるようです。

しかし、日常的に意識する機会が決して多いとはいえない「目的」とは、そもそもどのようなものなのでしょうか? 第一章「目的思考とは何か」に焦点を当て、目的の意味を確認してみることにしましょう。

目的はすべての行動の起点になる

著者によれば、目的とはすべての行動の起点になるもの。単に、人によって目的を意識しているか、していないかの違いがあるだけにすぎないのだそうです。そして、そのことを解説するために身近な例を挙げています。

朝になって、あなたが目覚めてから会社に出かけるまでに、毎日のように行うルーティーンがあると思う。順序は人によって異なるだろう。今朝起きてからの自分の行動を思い出してほしい。

朝になり、目覚めるとすぐに顔を洗った。フェイスケアやメイクなどがルーティーンの人もいるだろう。朝食をとり、歯を磨くルーティーンもあり得る。それらのルーティーンを終えてから、家での次の予定を始めたり、職場などに向かう服装に着替えて家を出る。(34〜35ページより)

こうしたルーティーンのなかにおいて、たとえば歯磨きには「虫歯にならないようにするため」「口臭の原因となる汚れを取り除くため」など、明確な目的があります。いってみれば、その目的を実現するために「歯を磨く」という行動をとっているのです。

ということは逆に、もしその目的がなかったとしたら、歯磨きをする動機が生まれないことになります。目的がすべての行動の起点になるというのは、つまりそういうこと。

ただしルーティーンは、行動の目的を意識しなくとも自然に行われるものでもあります。だから、毎日のルーティーンで目的を認識することは少ないのではないでしょうか。

しかし、たとえば「虫歯になってしまった」というような変化が起きたとすると、それまでは無意識に行っていたルーティーンにすぎなかった歯磨きが、一転して目的を意識した行為に変わります。虫歯を増やさないという目的が加わったために、歯磨きを意識するようになるわけです。

このように、目的に対する意識が変わることによって、行動の中身もまた変わることになるのです。行動の起点には目的があるということであり、もちろんそれは仕事についてもいえること。

多くの人にとって、毎日の仕事の大半はルーティーンなのではないでしょうか。しかし重要なポイントは、それらルーティーンの仕事にもすべて目的があるということ。ただし現実問題として、その目的を明確に意識することなしにルーティーンが行われているわけです。日ごろは忘れているか、単に意識していないにすぎないということ。

したがって仕事でも、なにか特別なことがあれば目的が意識されるようになるはずだと著者は主張しています。(34ページより)

目的とは「自分」が決めた意思

毎日の、自分の行動の目的を決めているのは自分。そこには自分の意思が働いており、すべては自分が決めた目的のために行動しているわけです。

ビジネスの局面においても同じですが、そうした考えに対してよく引き合いに出されるのが「与えられた目的」というフレーズ。

たしかに部下が自ら設定した目的ではなく、上司から「降ってきた」目的もあるものです。が、そこには本人が受け入れたという「意思」があるのも事実。

上司からいわれた目的に、心から納得して受け入れている人もいれば、怒られたくないからと受け入れている人もいることでしょう。

しかしどんな理由であれ、最終的にはすべて自分が決めているのです。肯定的であれ否定的であれ、そこには「こうしたい」「こうしたくない」「こうなりたい」「こうなりたくない」というような自分の意思が反映されているということ。

ここまでの具体例で納得できなければ、自分にとって大事なことや特別なことを思い浮かべていただきたい。そこには必ず思い当たることがあるはずだ。

誕生日や記念日などで出かけるときに、着ていく服を選ぶ機会がある。なぜその服を選んだのか、必ず理由があると思う。

普段はそれほど服装に気を遣わないのに、特別な日だけは気にかける。それは目的があるからだ。

普段の外食と特別な日の外食では、選ぶ店も違う。その日の目的を意識して、店も服装も決めているはずだ。仕事に関しても同じことだ。(39ページより)

つまり目的思考とは、目的を意識し、認識し、重視し、よく考え、行動し、その目的にこだわり続ける思考法だということ。こうしたプロセスを経て獲得された目的思考は、結果として人の思考のみならず、意識や行動まで変えるものになるのだそうです。(37ページより)

こうした基本的な考え方を軸として、以後は目的の立て方や実行の仕方などが解説されていきます。そこから得た知見を活用し、より高度な成果を生み出したいものです。

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Source: すばる舎/Photo: 印南敦史