伝わる仕組み 毎日の会話が変わる51のルール』(藤井貴彦 著、新潮社)は、実力派アナウンサーとして知られる著者の新刊。昨年ご紹介した『伝える準備』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)のテーマが「相手に伝わることばの選び方」だったのに対し、今回は「どうすれば自分の真意が相手に伝わるのか」に焦点が当てられています。

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ことばに責任を持てば自分に変化が生まれる。発する前に精査しよう | ライフハッカー[日本版]

ことばに責任を持てば自分に変化が生まれる。発する前に精査しよう | ライフハッカー[日本版]

私は『伝える準備』という本で、言葉を発する心構えについて書きました。

この『伝わる仕組み』では、その先の実践について書いています。(「はじめに」より)

ことばを携えて外に出れば、私たちは必ず問題に直面するもの。たとえば不用意な発言で相手を傷つけてしまい、そのため自分も傷ついてしまったりすることもあるでしょう。つまり、コミュニケーションにまつわる悩みは少なくないわけです。

なぜ思い通りに言葉が届かないのか、

どうしたら届けられるのか、

その仕組みがわかれば、アクシデントを大幅に減らせます。

まさに、認め合う、理解することが大切なのです。

その一方で、自分自身を大切にすることも忘れてはいけません。

相手のことを思いやるあまり、ご自身が疲弊していないでしょうか。(「はじめに」より)

こうした考えを軸に、本書ではコミュニケーションが原因で起きる問題について、その仕組みを紐解きつつ、解決のヒントを紹介しているのです。きょうは3部「あなたの弱点に隠れている、大きな可能性 〜困った時の逆転メソッド〜」のなかから、いくつかの要点を抜き出してみたいと思います。

優先順位の高いものから順番に伝える

なにかを説明する際、著者はまず「伝えたいことの箇条書き」をするのだそうです。

伝えたいことを思いつくままに書き出し、その優先順位をつける。そしてその優先順位の「高いものから順番に」伝えていくということです。

説明が苦手な人の特徴は、聞いている人が求めていない情報まで織り込んでしまうこと。そのため、いつまでも核心にたどり着かないのです。また、大切なことをいい忘れてしまうという“まさかの失敗”も実は起こりがち。

いずれにしても、聞いている側は“美しい説明”を求めているのではなく、有益な情報を短時間に得たいと思っているもの。したがって伝えるときには、あくまで「聴衆ファースト」で応えるべきだということです。

「大切な順に説明して、その補足をする」

これを繰り返すだけで十分に説明となります。(146ページより)

また、もうひとつ別の説明の仕方もあるそう。それは、まず大切な情報だけ伝えてしまい、質問を受けるというやり方です。

たしかに自分から話をする「説明」が苦手だったとしても、質問に答える「回答」はさほど難しくはないかもしれません。

しかも質問に答えることは、「補足」と同じ効果を持つもの。そのため、説明する側も説明を聞く側もスッキリできるわけです。(145ページより)

焦ってパニックになったら「リフレイン」する

誰かと会話をしているときや、人前で話している最中に、予想外の質問をされてパニックになるというようなことがあるのではないでしょうか。いうまでもなくそれは、「想定外への不安」からくるもの。

あるいは、いつもなら答えられるのに、しゃべっている途中で不意を打たれて焦ってしまうというケースもあることでしょう。

そんなときにはまず、冷静になる時間が必要。そして、冷静になる時間を捻出するためには「リフレイン」が効果的だと著者はいいます。

まず、相手の衝撃的な発言をリフレイン、つまりそのまま繰り返して口に出します。ここで、冷静になる時間を捻出します。

「今のご質問は、経緯がどうなっているかということでいいですね?」

と、確認するようにリフレインできれば、相手が「そうです」と答える時間も含め、時間を捻出できます。またこのリフレインで会話が途切れることは避けられますし、会話のリズムも失われません。この間に冷静さを取り戻すのです。(150〜151ページより)

一方、このように途中でカットインしてくる人は、独特のリズムを持っている人か、あえて議論を仕掛けようとする傾向のある人だそう。

そういう人ほど、受け答え次第では調子に乗ってしまう可能性があるものでもあります。そこでリフレインしながら時間をつくり、冷静に対応するべきだということです。

私たちは、とにかくスムーズな会話をするよう自分たちに課すため、アクシデントに対応する準備はしていないものです。しかし、ただリフレインを使って落ち着いて対応すれば、状況は変えられるわけです。(150ページより)

カチンときたら、過剰反応せずに感謝する

意外な気もしますが、若いころの著者はすぐ感情的になっていたのだそうです。自分の考えを否定されたときや、懸命に課題に取り組んでいるのに評価されないときなどに、感情を出していたというのです。

いまになってそれを分析した結果、当時は「自己評価が高すぎた」ということに気づいたそう。実力よりもプライドが優ってしまっていたということで、誰にもありそうな話ではあります。しかし、そんな経験があるからこそ、そののち自分を戒めるためのルールを編み出したのだといいます。

カチンとくる

感謝する

と決めてしまうのです。(163ページより)

これは過剰反応を防止するための著者なりのルール

ポイントは、カチンときた時点でかなりの「図星」だということ。急所を突かれそうになったからこそ過剰反応してしまうわけです。

したがって、その過剰反応を「感謝」という即時行動で包み込んでしまうということ。たしかに図星なことを指摘してくれている以上、それは感謝すべきなのでしょう。(162ページより)

本書を参考にすれば、いままでよりも楽な気持ちで会話ができるようになるかもしれないと著者はいいます。「伝える」ことを生業としてきた人物によるメソッドであるだけに、大いに参考になりそうです。

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Source: 新潮社/Photo: 印南敦史