仕事の場はもちろんのこと、ちょっとした雑談であったとしても、シチュエーションに応じた適切なことばを使うことはとても重要。このことについては、『感じのいい言葉で話せる 大人の言いかえサクサクノート』(吉田裕子 著、リベラル社)の著者も以下のように述べています。

「言葉の気配り」に気をつければ、印象はグッとよくなります。

話しやすい人だと思われれば、いろいろなチャンスにめぐりあう機会も増えるでしょう。教養のある人だという印象をうまく与えられれば、さらに信頼される人になれます。

もちろん、正しい日本語が使えないせいで軽く扱われたり、何気ない一言で相手を傷つけて長年の関係を壊してしまったり、といったトラブルも避けられるはずです。(「はじめに」より)

すなわち、場面に応じた適切なことばを使うことができれば、相手とのよりよい関係性を築いていけるということ。些細なことだと思われるかもしれませんが、それは私たちが生きていくうえで大きな意味を持つことでもあります。

そこで本書では、「印象がよくなる84のいいかえテーマ」を設定し、そのまま使える約170ものいいかえ例を紹介しているのです。

きょうは1章「きちんと伝わる『正しい日本語』への言いかえ」のなかから、いくつかをピックアップしてみたいと思います。

「させていただきます」の連続を避ける

ご報告させていただきます。

ご報告いたします。

(16ページより)

「〜させていただきました。そして〜もさせていただきました。そこで、〜させていただけないでしょうか」

たとえばこのように、メールの文章が「させていただく」の連続になってしまうようなケースは決して珍しくありません。しかし、対顧客のみならず、社内での上司への報告でもよく見かけるそれらは、間違いなく悪い例。

そもそも「させていただきます」は、敬語をはずすと「させてもらう」となります。つまり、相手から許可をもらったうえで自分が行いたいことがある場合にのみ用いるもの。

単に自分の行動などをていねいに伝える場合は、謙譲語をつけて「〜いたします」で十分なのです。

とくに緊急の報告など、経緯の説明では、「〜させていただきました」の連続使用はわずらわしい印象を与えがちです。

本来であれば手短に伝えることを心がけるべきなので、「私は〜をしました」「お客様(相手)は〜されました」でまったく問題ないわけです。

ていねいにすることで、かえって要点や結論が伝わりにくくなるのでは、本末転倒というもの。(16ページより)

「ら抜き」や「い抜き」は幼い印象になる

あの仕事は進んでますか?

あの仕事は進んでいますか?

(28ページより)

「い」が抜けた言い方は、話しことばでは当たり前のように使われているかもしれません。

しかし、あらたまった場面や文章では使わないのが賢明。「進んでますか?」「足りてますか?」ではなく、「進んでいますか?」「足りていますか?」とするのが正しい表現だということです。

同様に、「ら抜きことば」も正しい表現ではないので避けたいところ。

「られない」の「ら」を抜いた「見れない」「起きれない」「来れない」などがそうであるように、よく見られるのは動詞を打ち消しの表現にする例です。

また、可能の表現においても、「られる」をつけるべきところに「れる」をつけてしまう「見れる」「起きれる」「来れる」などのミスにも注意したいものです。

「い」や「ら」を抜く文法ミスは、幼い印象を与えてしまいがち。そのため、「正しい言葉を使えない人」だと思われてしまう可能性もあるのです。

「みんな使っているんだからいいだろう」と思わず、「違和感を持つ人もいる」ということを忘れないようにする必要があるということです。(28ページより)

いらない「さ」や「れ」をつけ加えない

読まさせていただきます。

読ませていただきます。

(30ページより)

敬語の謙譲語のように使われる「〜せていただく」という表現に余分な「さ」が入り、「読まさせていただきます」となってしまうのが「さ入れことば」。

他にも「行かさせていただきます」や「帰らさせていただきます」は間違った使い方で、それぞれ「行かせていただきます」や「帰らせていただきます」でいいのです。

「〜(さ)せていただく」の直前にア段の音がきているときは「さ」は入れなくてもよいのです。例えば「届けさせていただきます」のようなア段ではないときは問題ありません。(31ページより)

同様に、「れ」が余分に入った「れ足すことば」もよくある誤った表現。

「行ける」「読める」とするだけでいいのに、さらに可能を表す助動詞の「れる(れらる)」をつけてしまい、「行けれる」「読めれる」となってしまうのが「れ足すことば」。

当然ながら誤った表現であり、「ら抜き」や「い抜き」と同様に幼いイメージを与えてしまうことになる可能性があります。

著者もこのことについて、「こうした誤った言い方をしていると、『ことばを知らない人』という印象を持たれてしまう」と指摘しています。

それどころか、相手から軽く扱われる原因にもなりかねないので、うっかり使ってしまわないように気をつけるべきなのです。

ことばの疑問や悩みに簡潔に答えてくれるだけに、ビジネスシーンで大いに役立ってくれるはず。邪魔にならないサイズなので、デスクサイドに置いておいてはいかがでしょうか?

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Source: リベラル社/Photo: 印南敦史