現代社会は、ストレスを抱えている人たちであふれ返っています。なかでも、人間関係で悩んでいる人は非常に多い。精神科医として、さまざまな事例の相談を受けることで、それを実感してきました。(「はじめに」より)

これは、『もし世の中から面倒な人がひとりもいなくなったとしたら 面倒な人・苦手な人のトリセツ』(メンタルドクターSidow 著、アスコム)の著者のことば。

しかし、人間関係のもつれやトラブルをプラス思考でとらえることは非常に困難です。かといってマイナス思考で対処しても、解決に至る可能性は低いはず。だからこそ、本書を執筆することを決意したというのです。

内容は、病院で実際に患者さんから相談されたときに答えていることが中心。「こういう人に出会ったら、どう対処すればいいか」「このようなシチュエーションでとるべき理想的な行動とは?」などについて、平易に解説しているわけです。

特筆すべきは、「平和的な解決」を目指している点。面倒な人や苦手な人とやり合うのではなく、折り合いをつけることを第一に考えているのです。もちろん、自分自身の不満やストレスが解消されることも念頭に置きつつ。

そんな本書のなかから、第2章「面倒な人問題を解決に導く7つのステップ」を見てみましょう。

ステップ1:面倒な人を受け入れる

「面倒ではあるけれど、怒るレベルではない」「うっとうしいが、害があるわけではない」という程度で、「世の中にはこういう人もいるよね」と思えるのであれば、相手のことを理解し、受け入れるようにすることも大切。

「そういう人なので仕方がない」と割りきることができると、心に余裕が生まれますし、同じことをされたり言われたりしても、気に留めずにやり過ごせるようになります。(49ページより)

見方を変えれば相手の行為を容認できるようになるかもしれませんし、やがて慣れてくるものでもあるはず。

その結果、面倒な人を受け入れてもストレスを感じずに済むようになったら、自分をほめてあげることも大切だそう。(46ページより)

ステップ2:面倒な人以外のことに意識を向ける

とはいえ、面倒な人を受け入れられない場合もあるでしょう。

イライラするのは別に構わない。

大事なのはそれにとらわれずに行動することであり、そういったマイナスの感情を抱いている状態が長く続かないように自分を仕向けることです。(51ページより)

考えて解決するのではなく、面倒な人以外のことに意識を向け、自分がなにかしらの行動をとることによってイライラを鎮めることを試みるべきだということ。

そのような理由から著者は、自分が幸せに感じられることや、好きな趣味などに没頭することをすすめています。(50ページより)

ステップ3:面倒な人を観察・分析する

相手のことを知る努力は大切。面倒な行為を行うことに対して納得できる理由が見出せれば、こちらが受けるダメージは軽減できるわけです。したがって大切なのは、相手をよく観察・分析し、情報を収集すること。(52ページより)

ステップ4:面倒な人に行為の理由を尋ねる

受け入れられず、我慢もできず、他のことで気を紛らわせることも難しく、面倒な行為を行う理由がわからない場合は、本人と直接コミュニケーションをとってみるという手も。問題の原因を知り、取り除くためにはそれも不可欠だということです。

ただし、いきなり「不快だからやめてほしい」というように、気持ちをダイレクトに伝えるのは避けたいところ。相手には特別な事情や理由があって、その行為に及んでいるかもしれないからです。

だからまずは、なぜそういうことをするのか(言うのか)、理由を尋ねてみてください。喧嘩腰ではなく、冷静かつ穏和な姿勢で臨むことが大事。(56ページより)

返ってきた理由に納得できれば、素直に受け入れることができるでしょう。相手が無自覚だった場合は、行為の理由を問われたことによって初めてその事実に気づき、態度を改めてくれるかもしれません。(55ページより)

ステップ5:面倒な人に自分の気持ちを伝える

疑問を投げかけてもこちらの意図が伝わらない場合は、ストレートに本音をぶつけることもひとつの手段

どんなに鈍感な人でも、常識的な感覚を持ち合わせていたら、「それは悪かった」と思ってくれるはずだから。しばらく関係がギクシャクしてしまう可能性はあるものの、相手が人間的に気の合うタイプであれば、すぐに良好な関係を築けるようになる(取り戻せる)と著者はいいます。(57ページより)

ステップ6:面倒な人にその行為をやめてもらうように頼む

それでも無理な場合は、「嫌だからやめてほしい」とはっきりいうしかないかもしれません。やんわりとした口調で考え方を改めてくれないのなら、厳しい口調で指摘するべきだということです。

たいていの人は、相手の気分を害していたことに無自覚ですので、「まずかったな」「言いすぎだったかも」と思ってくれるはず。(61ページより)

そうすれば、人によっては心を入れ替えてくれるかもしれないということです。それでもうまくいかない場合は、次のステップへ。(59ページより)

ステップ7:面倒な人と物理的・心理的な距離をおく

こちらがどんな策を講じてもまったく響かない場合は、あきらめるという選択肢も。

ただし、いきなり絶縁ではなく、徐々にフェイドアウトしていくのが理想的。「気づけばその人と関わる時間が減っていた、あるいはゼロになっていた」という状況を目指すべきだということです。(62ページより)

面倒な人だからといって、簡単に関係を絶つわけにはいかないもの。良好な関係をキープできたり、こじれた関係を修復できるならそれに越したことはないわけです。

しかし、本書を読めばその可能性を高めることができるだろうと著者は記しています。人間関係のストレスを減らすため、参考にして見てはいかがでしょうか?

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Source: アスコム/Photo: 印南敦史