日々の生活のなかで欠かせない存在となったApple Watch。でも、仕事や毎日のルーティーンに関わる機能は使いこなしていても、日頃は必要性をあまり感じない機能については、設定画面を開いたことすらないという方も多いのではないでしょうか?

「心電図アプリケーション」も、そんな「出番の少ない」アプリのひとつかもしれません。

大阪近鉄バファローズに所属していた元プロ野球選手で、現在は株式会社スポーツビスでアスリートのマネジメントなどを手がける平江厳さんは、昨年春に不整脈と診断され手術を受けました。

その際に、自身の異変に気づき、診断に繋がったきっかけとなったのが、Apple Watchの「心電図アプリケーション」と「不規則な心拍の通知機能」だったそうです。

手術を経て現在は健康を取り戻した平江さんと、不整脈専門医でApple Watchの記録を活用した診療にも取り組む木村雄弘医師に、Apple Watchの「心電図アプリケーション」をヘルスケアに活用するメリットについてうかがいました。

設定をオンにした途端、不規則な心拍リズムの通知が

平江さんがApple Watchを使い始めたのは5年ほど前から。「ずっとファッション感覚でつけていたので、ヘルスケア関連の機能は使ったことがなかった」といいます。

「2021年2月に勤務先の健康診断で不整脈を指摘されました。ひとまず様子を見ていればよいとのことだったのですが、不安だったのでiPhoneのヘルスケアアプリケーションで役立ちそうな機能がないかを探し、そこで初めてApple Watchの『不規則な心拍の通知機能』の設定と「心電図アプリケーション」を見つけました」(平江さん)

『不規則な心拍の通知機能』の設定を有効にすると、その日からすぐに「不規則な心拍リズム」の通知が届くようになったそうです。そして心電図をとると心房細動に分類され、しばらくは様子をうかがっていたものの、通知が頻繁に届く状況が変わらないため病院を受診。

すると「心不全の状態なので手術が必要」といわれ、初めて深刻な状況にあることがわかったそうです。

念のためセカンドオピニオンを受けたものの、同じく手術が必要との見解だったことから手術を受けることに。

手術後も、状態が安定するまでの期間に心房細動の心電図結果や、高心拍数の通知が出ることがあったそうですが、「気になる記録や通知が来たらすぐに主治医に相談できるので、何も手がかりがない状態で不安な気持ちで過ごすよりも安心感は大きかった」といいます。

生活習慣の見直しにワークアウトアプリケーションを活用

「それまではずっと健康体だったので、自分の健康におごりもあった」という平江さん。手術後には生活習慣の見直しを行い、20kgの減量に成功したそうです。

「Apple Watchのワークアウトアプリケーションを使って、ウォーキングとジョギング、スイミングを記録しています。最近は睡眠記録も使い始めたのですが、まだ使いこなせていないものがたくさんあると感じているので、これからも積極的にいろいろな機能を使っていきたいと思っています」(平江さん)

早期発見のきっかけとして活用できる

慶應義塾大学医学部内科学教室循環器内科の専任講師で、東京・赤坂の小川聡クリニックでApple Watchで記録した脈拍数や心電図などを活用した「心臓ヘルスケア外来」を担当する木村雄弘医師は、治療者の側から見たApple Watchについてこう話します。

「Apple Watchのデータがそのまま病院の検査の代用になるわけではなく、あくまでも補助的なものではありますが、参考情報としては非常に有効だと考えています。心電図の波形にはさまざまな情報が詰まっているので、受診時に家庭で記録された情報があると、その患者さんがどういったことでお困りなのか、どんな検査が必要なのかといったことを知る手がかりになります」(木村医師)

実際に、初診のときに心電図アプリケーションの記録を持参する患者さんや、高心拍数、不規則な心拍の通知などを受け取ったことをきっかけに受診する患者さんは多いそうです。

さらに木村医師は、「常に身につけている」というApple Watchの特徴も大きな強みになっているといいます。

「心房細動という不整脈は、無症状なこともあり、合併症である脳梗塞を起こしてから診断されるケースも少なくありません。後遺症を残すような脳梗塞を起こしてからでは遅いのです。自覚症状のないときでもApple Watchを腕に巻いていれば、脈拍を取り、症状がなくても不整脈の可能性を知らせてくれることは、早期発見につなげるうえで大いに役立つと思っています」(木村医師)

平江さんも自身の経験から、「自分は健康体だと思っていても『不規則な心拍通知機能』の設定はしておいたほうがいい」とうなずきます。

「僕は健康診断を機に通知を有効にして、思っていた以上に深刻な状態だと気づくきっかけになりましたが、本当はその前の段階で気づいて早期診断に繋げるのが理想かなと思います。自分の健康を過信せず、こういったアプリケーションを上手く日常に取り入れて活用したいものですね」(平江さん)

Source: Apple Japan