ライフハッカー[日本版]とBOOK LAB TOKYOがコラボするトークイベントBOOK LAB TALK。第12回目のゲストは、『The Art of Marketing マーケティングの技法 パーセプションフロー®・モデル全解説』(宣伝会議)の著者、音部大輔さんです。

「パーセプションフロー®・モデル」とは、音部さんが考案したマーケティング手法

トークセッションは、音部さんが担当しグローバルで1000億円の市場を創造したファブリーズなどの実例の紹介にはじまり、マーケティングによる価値創造や事業推進などビジネスにまで話題が広がりました。

延べ5000億円? 膨大な費用が投下されたマーケティングの技法

新卒で入社したP&Gジャパンのブランドマネジャー、マーケティングディレクターとして、アリエール、ファブリーズなどの市場創造やシェアの回復を実現させてきた音部さん。

その後、米国本社のGMO(グローバル・マーケティング最高責任者)直下のセントラル・チームで働いた経験が、日本企業でCMOとしてブランドマネジメント制を導入する際に大いに役立ったと話します。帯で推薦しているジム・ステンゲル氏は当時のGMOです。

これまでのキャリアのなかで、個人や組織の成長について考える機会に恵まれました。成長の定義は、すなわち昨日できなかったことが明日できるということ。経験を知識に変えて成長する。それを促すのがナレッジマネジメントです。

ナレッジは自分で体験しなくても得ることができる。マーケティング担当者が5年かけて得るべき知識を、2年で提供できる仕組みをもつ組織は、成長も早くなります。そのためにはマーケティングの言語体系を整えることが必要だと考え、『The Art of Marketingーマーケティングの技法』などの書籍を執筆してきました。(音部さん)

トークセッションにて組織の成長について語る音部さん
トークセッションにて組織の成長について語る音部さん
Screenshot: ライフハッカー[日本版]編集部 via Zoom

アメリカから帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などでブランド構築に携わり、2018年に独立した音部さん。

パーセプションフロー®・モデルに代表される音部さんのスキームは、これまで25年以上、50以上のブランドで適用されてきたそう。マーケティング費用の総額を足し算すれば、延べ5000億円ものスキーム開発費をかけて鍛えられ、検証されてきたまさに「強度テスト最強」の技法なのです。

パーセプションフロー®・モデルの効用とは

『The Art of Marketingーマーケティングの技法』はマーケティング、とくにブランドマネジメントで連携・協働する人をターゲットにして書かれたものですが、クリエイティブ職から営業、財務に至るまでを含むすべてのビジネスパーソンにとって有益な一冊

聞き手をつとめた遠藤編集長も本書を読み、マーケティングについての視点が大きく変わったと話します。

「マーケティングは宣伝活動ではなく、市場の創造、価値の創造だということ。それはつまり、“ビジネスそのものである”とも言えますね」(遠藤)

音部さんが説く「パーセプションフロー®・モデル」とは、消費者の認識(パーセプション)の変化を中心としたマーケティング活動の全体設計図

マーケティングの4P、すなわち製品(Product)、価格(Price)、流通・チャネル(Place)、販売促進(Promotion)などの全活動を図にして表すことで、それぞれの活動が的確に配置・連携され、全体最適を実現できるようになっています。

大きな特徴は、製品や流通経路、販売の視点から「どのように売るか」という旧来型のアプローチではなく、消費者が「どのように欲しくなり、満足するか」を考え、消費者の受け止め方や商品理解の変化を可視化したものであるということ。

パーセプションフロー®・モデルがあればすべてを「消費者中心」にできる。会社の都合でもなく、製品主体でもなく、消費者ドリブンで可視化でき、実施できるということが重要だと音部さんは話します。

カスタマージャーニー・マップとどう違う?

パーセプションフロー・モデル(左)とカスタマージャーニー・マップ(右)の違いの図
パーセプションフロー・モデル(左)とカスタマージャーニー・マップ(右)の違いの図
Screenshot: ライフハッカー[日本版]編集部 via Zoom

パーセプションフロー®・モデルとカスタマージャーニー・マップを比較すると、消費者ドリブンという前者の特徴がさらに明確になってきます。

カスタマージャーニー・マップとは、顧客が商品・サービスとの関わりのなかで辿る一連のプロセスを視覚化し、アイデアや戦略を生むための土台とするものです。消費者の行動を追い、表に出ている行動をトラックするのがカスタマージャーニーだと言えます。

一方パーセプションフロー®・モデルは、行動だけでなく認識・知覚が記述の中心。

何が違うかというと、時制が全然違うんです。カスタマージャーニー・マップは過去から現在の消費者行動を把握し、そこにどう沿っていくかというマーケティング活動が中心です。それに対して、パーセプションフロー®・モデルでは「こういう市場を創造したいので、これからこういう行動をしてもらいたい」という未来の消費者行動を描きます。(音部さん)

「消費者の未来のパーセプション、未来の設計図を先につくってしまう、ということですね」(遠藤)

そのとおり。パーセプションフロー®・モデルが建物の設計図なら、カスタマージャーニー・マップは既にある建物の見取り図、という感じです。(音部さん)

パーセプションフロー®・モデルを活用した考察は、ブランドの価値をとことん考察できるのがメリットであり、市場創造、ブランドの差別化に適したスキームであると音部さんは語ります。

「いい商品」の定義を変えれば1位が獲れる

マーケティングとは、市場創造 属性順位転換である
マーケティングとは、市場創造 属性順位転換である

セッションの最後、「マーケティングとは?」という遠藤の問いに対し、音部さんがフリップに書いたコメントは「市場創造 属性順位転換」

市場を具体的に創造するためには、「いい商品」の定義を変えること。(音部さん)

『The Art of Marketingーマーケティングの技法』には、若き日の音部さんが初めてパーセプションフロー®・モデルの考えに基づいて戦略を立て、洗濯洗剤アリエールで「いい洗剤」の定義を変え、グローバルで1000億円の市場を創造したストーリーがスリリングなストーリーとして記されています。

これまでの知見を多くの人に共有し、優れたマーケターを育てたい。1000人の優秀なマーケターが誕生すれば、日本から100兆円の市場を創造することも夢ではないと、ライフミッションを語ってくれた音部さん。

質疑応答では参加者から寄せられたマーケターならではの悩みをさらりと解決に導くなど、超一流の視点を垣間見たセッションでした。

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